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「ええと、予想外の襲撃もあったけど、皇王との会談でルシン皇国とはそれなりに友好的な関係を築けたし、早く遺跡の調査をして早々に立ち去ろうか」

「賛成」

「それが一番妥当で、平和ですね」


 どうやら俺の意見に不満は無いようだ。そんな訳で、早々に遺跡に行ってどうなっているのかを調べるに限る。調べ終わったらもうそのまま転移で次のセイグケート王国に行ってしまった方が良いだろう。

 もっとも、隣国なのでいなくなったと知ったらすぐにでも追いかけてくる可能性もあるのが怖い所なんだが、こちらとしてはもう関わり合いになりたくないのが本音だ。


「まあ、もしも追いかけてくるようなら、その相手の反応を見て楽しむ為だけの悪趣味な格好を止めるのなら、相手をしないでもないとシッカリ言っておこう」


 別に、ヤクザも裸足で逃げ出す凶悪な強面だけなら問題ないのだ。問題なのはその凶悪な、ゴリマッチョの外見に全く似合ってない少女趣味の服装に、野太いだみ声の乙女口調。

 ・・・・・・アレは本当に精神崩壊を引き起こす凶悪な兵器だ。


「それが良いでしょうね。私が言っても効果はなかったけど、流石にアベルが本気で忠告して無視するほどバカじゃないし」

「この国の為にも、むしろ早々に悪ふざけは止めるように忠告するべきなのでは?」

「でも、忠告するためにもう一度あの姿のあの方と会わなければいけないのですよね?」


 ティリアの発言で会話が泊まる。

 そう、問題はそこだ。

 俺が本気で二度とそのふざけた格好をしないように忠告すれば、確かに全てが収まるだろう。しかし、その為には俺はもう一度あの生き物と対面しなければいけない。

 あの、視界に入るだけで精神崩壊を起こしてしまい様な危険物ともう一度会わなければならないのだ。


「そこはほら、あの悍ましい姿を見ない様に魔法でモザイクをかけて置くとか」

「でも、あの凶悪な声はどうするの?」

「ソレも魔法でどうにかなるでしょ」


 うん。確かにどうにか出来る。魔法万歳。どうやら俺の精神の平和は保たれてくれそうだ。


「そうすると、出来る限り早く、もう一度会うようにした方が良いのかな?」

「そうね。今もアレの犠牲になっている人たちが居るはずだし・・・・・・」

「何かスゴイ大げさになってる・・・・・・とは言えないよね。今までに本当にオカシクなってしまった人たちとかも居るだろうし」


 本人は単なる悪ふざけのつもりかもしれないが、アレはそんな生易しいレベルの問題ではない。

 それこそ、巨大なGの魔物の大軍に襲い掛かられるのと同等の悍ましさがある。知ってしまった以上、止められるのなら何としても止めなければならない悪夢だ。


「それと彼には、一度自分のしている事がどういうモノなのか本気で良く知ってもらう必要がありそうだな」


 以前この身で味わった絶望、10メートルを超える巨大なGが大軍で迫って来るのにも匹敵する視覚的暴力。そんなモノを単なる悪ふざけで続けているなんて、許される事じゃない。

 場合によっては、相応の責任も取ってもらわないといけないだろう。


「まあそれも、遺跡の調査が終わってからだけどな。調査前にもう一度あったりしたら、遺跡に連れて行けって煩そうだし」

「それは確かに」


 今回の遺跡は、下手をすると数千機以上の装機竜人が眠っている可能性もあるので、研究バカなんかを連れて行くとそれだけで大騒ぎになりかねないのだ。 


「あの、数千機の装機竜人が眠っているかも知れないのと、それを秘密にしておくつもりなのも判りましたけど、出来れば私たちも遺跡を見てみたいんですけど」

「うん。秘密にしないといけないのは判るけど、それなら私たちもちゃんと実際に見てみたいよね」


 シオン、ティリア、その好奇心はいずれ自分を殺しかねないと、彼女たちを見詰めるユリィたちの視線が物語ってるが。


「まあいいか、確かに肩慣らしにはちょうどいいだろうし、とりあえず、俺が何時も通り一人で確認してきて、問題なさそうならみんなで行こう」


 これから色々と想像を絶する危険物を目の当たりにする事になるのはもう確定なのだから、少しずつ慣れていった方が良いだろう。



「そんな訳で来てみた訳だけど、結果がこれか」


 遺跡の中には予想通りに数多くの装機竜人が眠っていた。

 その数は予想を超えて有に数万に及んでいるだろう。グングニールもその中にあるが、他にも見た事もない量産機がいくつも並んでいる。

 そして、そんな中で異彩を放っているのがワンオフの機体。間違いなく専用機として造られた機体の数々。その中にはアマテラスの様な10万年前の超絶チート転生者の機体もあるだろう。


「とりあえず、これなら見せても問題ないな」


 そう判断して早速宿泊先のホテルに転移で戻る。


「ただいま。見て来たけど特に問題ないからこれから一緒に行こうか」


 因みに、俺が一人で遺跡の事前調査に行く時は、みんな揃って待っているのが決まりになっているので、転移先のホテルの一室にはメンバー全員が揃っている。


「お帰りなさいアベル様。いきなり転移してこられたので少し驚きました」

「お帰りアベル。どうやら予想通り装機竜人が眠っているだけで、危険物はなかったみたいね」


 いきなりでティリアを驚かせてしまったみたいだ。もっとも、他のみんなは誰も気にも留めてないし、転移魔法はいきなり現れるのが当然なので、そこは慣れてもらうしかない。まあ、普通なら王族のもとに直接転移するような奴はいないので、慣れてなくて当然だ。


「ああ、想像よりも保管されている装機竜人の数が多かったし、以前見付けたアマテラスの様な専用機もいくつかあったけど、問題ないだろう?」

「それの程度なら問題ないね。それじゃあシオンたちも、これからの肩慣らしに遺跡探索に行こうか?」


 ユリィが随分と楽しそうだ。まあ、危険は無くてもその圧倒的な光景に言葉を失うのは間違いないから、友人たちがどんな反応をするか楽しみなんだろう。


「それでどうやって行く? このまま転移で遺跡の中に直接行く事も出来るけど?」


 それじゃあ味気ないだろう。何時もの様にこのまま遺跡にみんなで向かって、正面から中に入るのが一番だと思うが。


「それが良いと思います。私たちまで遺跡に入るのをダガートさんに知られると、色々と大変な事になってしまいそうですから」


 シャリアがストップをかける。

 確かにその通りだ。俺が遺跡に入る時は、待ち構えていたダガートを結界で封印して、着いて来れない様にしてから遺跡に入ったけど、そろそろ封印から脱出している頃だろう。わざわざ待ち構えている障害のもとに自ら飛び込む事もない。


「それはまさしく真理。それじゃあ転移で直接行こうか」


 そう言うと、返事も待たずにみんなを遺跡の中に転移する。


「転移するにしても、みんなの返事を待って、縦鼻が出来たのを確認してからで良いでしょうに」

「アベル様は意外と、イタズラ好きなんですね」


 ソファーに座ったままだったので、ものの見事に全員床にストンとお尻を落としている。

 狙ってやったのは勿論だが、こうまで見事にはまると気持ちいいものだ。


「俺もティリアと同じ歳で、まだ子供だからな。偶にはこんなイタズラをしたくなる」


 別に誰でも構わず、場所を選ばずにこんな事をするつもりは無いが、あまりにも隙だらけの様子だったので思わず出来心が湧いてしまった。


「それも言い訳としてはどうかと思うけど」

「余りにもみんな隙だらけだったからて言うのもあるな」

「「うっ・・・」」


 そうしらっと続けるとみんな言葉を詰まらせる。どうやら、みんな気を抜いてだらけていた自覚はあるようだ。


「まあとりあえず、早速行こうか、この扉の向こうが、この遺跡のメインとなる格納庫だよ」


 そう言って目の前の扉を開く。

 その先にあるのはこの遺跡の工場部で生産された装機竜人を保管するための格納庫。そこには数万に及ぶ装機竜人が整然と並べられている。その光景は、まさしく圧巻の一言だ。


「凄い。これが10万年前の遺跡に眠る力・・・」

「これと似たような遺跡が世界中にあるなんて」

「これ程の数の装機竜人、見た事もない・・・・・・」

「これが、10万年前の力なのですね」

「それもその一部でしかない。それ程の力を持ってしなければ、対抗できなかったと言う10万年前以前の戦いとは一体、どんなモノだったんだ・・・・・」

「そして、こうして力が残されているのは、いずれ来るかもしれない脅威に対する保険の為」

「世界中にこんな想像を絶する力を残してまで、備える脅威ってどんなモノなんだ・・・」

「想像も付かないです。だけど、万が一にも私たちがその脅威と立ち向かわなければならなくなったとして」

「対抗できる自信がない。これらの力を上手く使って、立ち向かえるか判らない」


 シオンたちは、目の前の光景にそれぞれ思案しているようだ。

 何故、10万年前の人々はこれ程の、今となっては世界を亡ぼすほどの危険やぎる力の数々を残したのか?

 それはいずれそれだけの力が必要になる事態が来ると予想したからだ。

 カグヤの封印が何時かは切れると予想したのか? 或いはいつまでもカグヤによって異世界からの侵攻を押し止めてはいられないと確信していたのか?

 全ての答えはカグヤにあるだろうが、どちらにしろ魔物の脅威が何時までもカグヤの封印によって抑えられ続ける保証がないからこそ、その時に対抗し得るように当時の、かつて想像を絶する魔物の侵攻に対抗してきた絶対な力をこうして残したのだ。


「それについては俺も不安だよ。レジェンドクラスの魔物は何とか対抗出来たけど、ジエンドクラスの魔物を相手に対抗出来るハズがない。ヒュペリオンの様な、10万年前からの遺産を使えばどうにかなるけれども、それでも万全とは言えないんだから」


 本当の意味でジエンドクラスの魔物の脅威に対抗するためには、どうしてもジエンドクラスの超越者が必要になる。ヒュペリオンがいくらジエンドクラスの魔物に対抗しうる兵器であっても、一匹や二匹ならともかく、数十と溢れ出てきた場合にはどうする事も出来ない。

 俺も早々万が一の事が起こるとは思わないが、カグヤによる封印が成されてちょうど10万年と言うタイミングと、これまでに2回遭遇した魔域の活性化の最後に起きた以上がどうしても気になる。

 だから、みんなにも危機意識を持ってもらう為に早々にヒュペリオンの事とかも伝える事にした。別に隠しておくのが面倒になったからではないのであしからず。



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