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「ジっ・・・ジエンドクラスの魔物、その食材がこんなに・・・・・・」


 信じられないと震える声を何とか絞り出すメリア。

 気持ちは判る。て言うか、間違いなくここに居る全員が同じ気持ちだろう。

 この遺跡を訪れて、ここに眠るモノの正体を知って冷静でいられるモノなんて存在しない。ここはそれ程までに衝撃的な場所だ。

 今までの遺跡での衝撃の数々すら消し飛ぶほどに、この遺跡のインパクトは絶大だ。


「・・・・・・こっ、これって、一体どれくらいの価値があるんですか・・・?」

「さあ? 流石に想像も付かないな・・・」


 アレッサが青くなって震えながら答えて来るけど、本気で流石にそれには答えようがない。


「ほんの一部でも、アスタートで見付けたグングニールの販売価格の比ではない価値になるのは当然だけど、どのくらいになるかは私でも想像も付かないわ・・・」


 これは流石にミランダでも鑑定不能らしい。


「ただ、最低でもキロ一千万リーベ以上の値が付くのは確実ね」

「一千万ですか・・・・・・」


 キロ一千万と言う事は、一トンで百億リーベ。しかもその値段化最低でも、しかも、ここには何千億トンと保管されている。


「お話には聞いていましたが、ここまでとは思いもしませんでした。何かもう、気が遠くなってきました」

「イヤ、ティリアちゃん。今回のは流石に特別だから、何時もはここまでとんでもない事にならないからね。大丈夫だよ・・・たぶん」


 状況についてこれなくなって来たのか、少し体をふらつかせるティリアを、アリアが何とか励ましているが、最後の方で自信なさげになってしまっている。


「まあ、俺たちも持って帰るのはこの中のほんの一部だし、そんなに気にする事はないよ」

「そうなんですか?」

「えっ? ほんの一部ってどうして?」


 俺の意図が判らないのか驚きの声が上がる。だけど、ここにある全部を持っていくなんて出来ないって。


「あのな。この遺跡は発掘されて以来。俺たち以外にも何人も足を運んだ者がいるんだぞ。それなのに、持ち去られているのは全体の一パーセントにも満たない量だろ?」

「そう言えばそうですね。もっと持ち出されていても良いと思うんですが・・・」

「まあ、それでも1人あたり一億トン以上は持ち出している事になるんだけどな」

「あれ? そう考えると十分過ぎる量ですね」

「確かに、一億トン以上あれば十分ですよね。それに、それ以上持ち出してもどうしようもない気が・・・」


 どうやら気が付いてくれたようだ。

 まあ、俺の場合は色々と柵の所為で結構多く持ち出さないといけないのは判っているんだが・・・。


「それとレイル。今回の件については、マリージアの取り分はお前も発見者として相当量を確保するだけにしておけ」

「判っている。この遺跡について正確な情報を公開するのは危険すぎる。俺も発見者の一人としてある程度の量を手に入れる形にしておかないと、下手したら国が亡びる」

「ユリィたちも、ティリアもそんな感じで」

「判ってるわ。でも、今回の件でまた父上が来そうね」

「それは確実に撃ちもだと思う」

「むしろ、その程度で済むのか不安な気が・・・」

「えっと、間違いなく鬼人とか他のみんなも動くと思う」

「仲間が増えるのは確定と」

「あの・・・。みなさんどうしてそんなに平然としていられるのです? この遺跡で手に入れた一部を私の取り分として、ある程度を母国に融通する。その時に私のもとに支払われるであろう金額を考えるだけで、震えが止まらないくらい怖いのですけど・・・・・・」


 反応はそれぞれだけど、やっぱりティリアにはまた刺激が強すぎるみたいだ。

 まあ、仮に一トンをベルゼリアへティリアから渡したとして、対価は最低でも百億リーベ以上。ベルゼリアとしてはどれだけ費用をかけても、出久る限りの量を確保したいだろうから、実際の所一トン程度じゃすまないだろう。まあ、それでもレイルやユリィたちの取り分としては精々一人頭百トンまでが限界なので、その中から出来るだけとなるけど、それでも、一兆リーベを超える対価をティリアに支払うのは確定。

 それは、レイルもユリィたちも同じだ。まあ、レイル辺りは確実に自分の手元にそれなりの量を残しておくだろうけど。


「その辺りは気にしたら負けね。自分の貯蓄額を一々気にしていたらこのパーティー。正確にはアベルと一緒には居られないわよ」

「それはつまり、みなさんも同じ経験を積んでいらしたと?」


 ミランダに諭されて発したティリアの問いに、どうしてレイルまで含む全員で、真剣な表情をして頷くかな?


「そうですか、では、私も頑張ってアベル様と共にいられるように精進します」


 決意も新たなティリアの宣言に、温かい拍手が送られているのも解せない。


「とりあえず、持って行く分を出してしまおうか、どの道この後は、レジェンドクラスの総襲撃を受けるのは間違いないんだし、色々と忙しくなるぞ」


 レジェンドクラスの魔物の時は、既に顔見知りであったミミールが代表して来る形だったけれども、今回は間違いなく四人そろって襲撃してくるだろう。

 俺を含めた五人のレジェンドクラスが終結するなんて本当はありえない事態なんだけど、あの人たちは間違いなく来る・・・。


「ああ確かに・・・、悪いけど相手はアベルに任せるわ。私たちには荷が重すぎだから・・・」

「「確かに、無理ですね」」


 ミランダが逃げ出すとみんなして尻馬に乗っかってしまうのはどうなのかな?


「ユリィはこの前も会わなかったけど、同じエルフとして会っておかないで良いのか?」

「ご心配なく、と言うか、趣味や何よりも優先する事がある時のあの方に、迂闊に時間を取らせてしまう様な事をしてしまうのは禁忌とされていますので、今回も目的を果たされた楽座にお帰り頂かないと」


 どうなるか判らないと?

 まあ、確かに食材とレシピを手に入れたなら、そのまま帰っていくだろうとほとんど確信してるけど・・・。


「まあいいか、多分、すぐにでも来るんだろうな」


 多分、歴史に残るであろうレジェンドクラスの超越者が一堂に会す邂逅。その理由が食材を手に入れるためだけ、果たしてそれで良いのだろうかと思わなくもないが、どうしようもないのも事実なので、とりあえず俺はこの後に訪れるその時の為に、気を引きしてて置く事にする。



「驚いたよアベル。まさかこんな大発見をするなんて。キミには期待していたけど、想像以上だよ」


 満面の笑みを浮かべて、喜色一杯にはしゃぐミミール。他の三人も表には出していないけど、間違いなくミミールと同じ気持ちなんだろう。

 と言うか、お願いだからまずは残りの三人の紹介から始めてください。

 いや、三人が残りのレジェンドクラスであるのは判っているし、顔も名前も当然知っているよ?

 知ってはいるけど、まずはここはミミールから紹介があってしかねべきでしょ。あるべきだよね?


「ミミール。気持ちは判るがまずは、彼に私たちの紹介を、そうしないと話が進まない」


 落ち着いた声で興奮するミミールを諫めるのは、天人のレジェンドクラスであり、最年長のレイストリア・グレストリレイル。御年四千歳。


「ゴメンねレイ。まさかの出来事だから興奮してしちゃって」

「気持ちは判るがな」

「確かに、でも、だからこそここは落ち着いて、急がないと」


 興奮状態からようやく落ち着いたミミールに苦笑しつつ応じるのは、獣人のレジェンドクラスであるレオシルス・アニマスピリアルと、鬼人のレジェンドクラスであるシラヌイ・レイ。

 

「それじゃあ改めて、紹介するまでもなく知っているだろうけど、こちらが、私と同じレジェンドクラスのレイストリア、レオシリス、レイ」


 まずは俺に三人を簡単に紹介し。


「そしてこの子が、期待の新人アベル」


 今度は三人に俺を紹介する。それで良いのかと言うくらい手抜きの紹介だけど、そこはまあ良い。


「初めましてだなアベル君。この前の一件でも世話になっているが」

「こうして会うのは初めてだからな。まあ、これから先、長い付き合いになるだろうがよろしく」

「それはさて置き、こうしてここに私たちが一堂に会した理由は判っていますよね」

「こちらこそどうぞこれからよろしくお願いします。そして、勿論わかっています」


 挨拶もそこそこに本題に入る三人とミミールに、四つのアイテムボックスとメモリーカードを差し出す。


「この中に、ジエンドクラス食材がそれぞれ百トンずつ入っています。そしてこちらは、食財を発見した遺跡で研究されていた、それらを最高に美味しく食べるためのレシピです」

「これは話が早い」

「やっぱりもう用意していてくれていたんだね」

「百トンか、十分な量だな」

「太古のレシピ二もまた興味深い」


 どうやら量については満足してくれたようだ。それぞれ手にして、早速対価についての話になろうと言う所で押し止める。


「そちらの対価は必要ありません。私からの贈り物として受け取ってください」


 勿論何の見返りもなくではない。そのくらいの事は四人とも判っているハズだ。


「成程な。使いきれない金を手にするよりも、はるかに賢明な判断だ。流石は最年少でレジェンドクラスにまで至った才覚だけの事はある」

「そう言う事なら受け取っておくね。キミもシッカリ現状を見ているようだし」

「ふむ。歳の割にシッカリしているな。気に入った」

「それなら、これからの友好の証として確かに受け取りましょう」


 どうやら、四人は俺の後ろ盾になってくれるようだ。

 正直、これから更に面倒が増えるのが確定の状況なので、彼らのバックアップはこれ以上ないくらいありがたい。


「その代わりと言ってはなんだが」

「判っていますよ。でも、見付けられるかは判りませんよ」

「それでも構わん」

「既にもうこれ以上ないくらいのラッキーだもの」

「でも、万が一の可能性に賭けてみる価値はある」


 まあ、この対価を要求されるのも当然、想定の内だ。

 そして、確かに探してみる価値はある。

 海の魔物を最高の美味しく食べるための研究施設があったのだ。それなら、他の魔物の、陸や空の魔物の料理法、調理法を研究するための施設があってもおかしくない。そして、そこに同じ様にジエンドクラスの魔物の食材が保管されている可能性も・・・。

 これはもう探すしかない。

 何かもう目的が完全に変わってしまっている気がするが、カグヤがどうした、この世界に転生してきた方の転生者たちの痕跡がどうしたよりも、まずはこちらを徹底的に探してみるべきだ。

 最高の美味を求めて、この世界に転生したからには、まずはそれを追い求めない訳にはいかない。


「当然、捜しますよ。捜し出してみせます」

「「頑張っれ」」


 こうして、俺の旅の目的はひとまず大きく変わる事になった。


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