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「そんな訳で、本当に今更だけど俺もみんなを愛している」


 自分の気持ちを隠さず正直に伝えると、彼女たちは固まってしまって瞬きもしない。

 何の反応もないのも凄く不安なんだけど・・・。


「ふふふ、あはははは、結局、アリアの言う通りになったな」

「はい。アベルさんですから。こうなるのは判ってましたよね」


 はい? どうにも良く判らないんだけど・・・。


「散々迷って、ようやく勇気を振り絞って告白して、結局は今までと何も変わらないって言うのも、すこし釈然としないけどね」


 それについては申し訳ないとも思うけれども、ミランタさん、キミ、明らかに揶揄ってるよね?

 まあ、そう言われるのも仕方ないと思うけど、結局、俺たちの関係は今までと何も変わらない。それが俺の出した告白への答えとも言えるのだから、優柔不断や、ヘタレの称号を頂いても文句は言えないだろう。


「付き合うと言っても何をしたらいいのか判らないしね。それに、これまでもデートをしたりしているし、その意味でもやっぱり特に何も変わらなくいんじゃないかと思うんだけど」

「それは確かにそうかもですね」


 俺の言い訳に同意てくれてありがとう。

 ついでに言うと、この後のが最大の理由で、その意味でもヘタレと言われても文句は言えない。


「それに、キスくらいまでならともかく、それ以上は流石にまだちょっと・・・」


 これってセクハラになったりしないよな?

 俺が何を言っているのか理解すると全員の顔が真っ赤になる。俺も赤いよ。もう全身真っ赤かで熱いよ。


「その辺りはそうね。特にユリィたち三人とか、私とかも色々と面倒な事になりかねないから、すこし慎重にした方が良いと思うし・・・」


 ここまで動揺しているミランダも珍しい。と言うか、はじめてかも知れない。

 とりあえず、もう夫婦も同じなんだからって、やる事をやっちゃったりすると、三人に子供が出来ちゃったりしかねない。そうすると、まあ、非常に面倒な事になるのは確定と・・・。

 いやまあ、後回しにしてもその内必ず訪れる問題なんだけどね。

 少なくても、今の段階で直面するのは不味い。少なくても、彼女たちの国の王が、ユリィたち三人の兄に変わるまでは避けるべきだろう。

 そうしないと、本気でお家騒動を画策しようなんて考えるバカが出てきかねない。

 ・・・・・・まあ、あの王たちはそれも想定済みで、国内の不穏分子を一掃するのに使おうとか画策してそうだけどな。


「あの、でもキスは良いんですよね」

「うん。勿論」

 

 何かメリアが更に顔を赤くして聞いてくる。


「それじゃあ。恋人同士になった証拠に私たちとキスしてください」

「・・・っっ!!」

 

 驚き過ぎて声も出ないんですけど・・・。

 どうやら冗談で言っているんじゃないみたいだな。真剣なのは判るんだけども・・・。


「良いわね。初めてのキスとしては最高じゃないの?」

「そうですね。何も変わらないにしても、今日から付き合い始めた事をしっかり確認するべきです」

「そうですね。私たちの初めてのキスは、みんな一緒でが良いかも知れません」

「かなり照れ臭い気もするけど、良いかも知れないね」

「今日が特別に日の証拠です」

「私たちが付き合い始めたって証、確かに良いかも知れないね」

「まあ、みんなで一緒に付き合うんだからそれもありかな」

「照れ臭いですけど、みなさんと一緒にアベル様と交際する証ですね」


 全員が乗り気で、完全に逃げ道がなくなっている。

 これはもう、どうにもならないな・・・・・・。

 そんな訳で、俺は生まれて初めてのキスを、愛し合う人たちと交し合った。



「それでアベル様、これからどうなさるのですか?」


 メリアたちの告白に始まった一件も終わり。正式に俺たちの仲間になったティリアがこれからの行動について聞いて来る。


「やはり、私の先祖が残したと言う遺跡に行かれるのですか?」

「いや、そこには当分行く気はないよ」

「えっ? どうしてですか? そこには確実に、私たちベルゼリア王家の祖たるアスカ・シングウジが残した遺産が眠っているハズです」

「だからだよ。そこには俺たちがアスタートで発掘した遺跡と同等、或いはそれ以上の太古の遺産が眠っているだろう。ハッキリ言って、今この状況でそれらの眠りを覚ますのは危険すぎる」

「それは・・・」


 その危険性を理解したのだろう。言葉に詰まってどうしたらいいのか悩んでいるようだ。


「別にこのままにしておくつもりも無いよ。いずれそれらの力が必要になる時も来るだろう。だからその時に、必要になったら行けばいい」


 実際には、俺が一番、真っ先に行きたいんだけどね・・・。

 正直、一人でコッソリ行ってしまおうかとも思わなくもない。

 だってそこには、カグヤやこの世界についての情報も収められているかも知れないんだ。

 これは、単なる俺のカンだけども、アスカ・シングウジはカグヤにまで辿り着いたのではないだろうか?

 その上で、知り得た情報と、必要な力を残しているのではないだろうか?

 漠然とそんな気がするのだ。

 だからこそ、今すぐにも行きたいのだけれども、同時に行きたくもない。

 ここで、かつての転生者が残した答えで全てを知ってしまうのではつまらない。それではせっかくの異世界転生を楽しめない。

 自分の手で、かつて、アスカ・シングウジが辿り着いたように、自分で世界を周って答を見付け出していかなければ意味がない。

 だから、本当に必要とするだけの事態になるか、俺自身が堪えに辿り着くまではいくつもりは無い。


「そうですね。何時でも行く事は出来るのですから、焦る必要はありませんね」


 ティリアの方も納得してくれたようだ。

 それにしてもアスカ・シングウジ。シングウジ・アスカか、日本人の名だ。自分は転生者だと他の転生者に伝えるためにあえて前世の名を名乗っていたのか、それとも、彼は転生では無く転移して来たのか?

 まあ、その答えも多分、彼の残した遺跡に眠っているだろう。


「ですが、それでは次は何処に向かわれるのですか?」

「予定通りマリージアに行くつもりだよ」


 マリージアの遺跡は、確か六万五千年前に発掘されている。その時は陸地にあったそうだけども、今では地殻変動で海中に沈んでいるとの事。

 どうも、地殻変動に巻き込まれる遺跡が王位気がするが、十万年もあれば当然なにか?

 まあ、それ程大規模な地殻変動に巻き込まれても、ビクともしない遺跡の強度とかの方が異常なのだけど。


「隣国マリージアですか、恥ずかしながら、私は今迄国から出た事がないので、これが初めての訪問になります」


 彼女が自分の魔力を完全に制御できる様になったのは最近らしいから、それも仕方がないだろう。とは言え、既に五百年は生きるのが確定。しかもそう遠くなく、Sクラスになるのも確定なので、これから先、暇を持て余すほどの長い人生を世界嬢を旅して過ごす事になるけど、と言うか、俺の仲間になった時点で、世界中を動き回るのは確定だ。

 まあ、目が回るほど忙しくなるから、覚悟しておいてくれ。


「良い国だぞ。時期的にもう海で泳げないのは残念だが」

「海ですか、良いですね。そう言えば、アベル様たちは以前、マリージアで休暇のバカンスを楽しまれたのですよね」

「そうそう、レイル王子に王家専用のプライベート・ビーチと別荘を借りてね。何だったらまた来年も行っても良いわね」


 それはミランダが気に入ったから行きたいだけでは?

 まあ、確かに良い案だ。

 他の王族と出くわすとか、面倒が起きる可能性もあったりするが、その辺りはレイルが抑えるだろうし、既にもうイッパイイッパイなくらいに色々あったから、既にもう一度どこかで休養を取りたいところだけど、来年も夏になったらレイルに頼んで、マリージアでバカンスも良いかも知れない。


「まあ、海で泳げないと言っても、どの道これから行く遺跡は海の底だから、海には入るんだけどな」

「あの、それよりもその遺跡がどんな施設だったのか、何か情報はないのですか?」


 俺のボケをスルーしてアレッサが聞いてくる。

 まあ、確かにそちらの方が大事だ。


「あるよ。海岸線に建てられていたけど、防衛都市の様な場所ではなくて、海洋観察の為の施設だったらしい」

「それなら、特に危険はなさそうですね」

「多分・・・・・・ね」


 そこは確定では無い所が、十万年前の遺跡の怖いところだ。

 前に行った遺跡でも、ただの観測所かと思ったら、龍脈の力を制御する施設だったし、龍脈の力の結晶で

もある、龍玉なんて超絶危険物まであった。


「海底に沈んだ古代の遺跡の調査ですか、ロマンがありますね」

「とは言っても、既に発掘された遺跡だからね。大したものは残っていないと思うけど」


 そこも確実とは言い切れないのが辛い。発掘した転生者が、そこにあった危険物を根こそぎ持ち去っているとは限らないし、後で戻している可能性もあったりする。

 一度発掘セれた遺跡の再調査なんてほとんどされないし、十万年前の遺跡は転生者しか入れない様になっているから、危険物を隠すのにちょうどいいのだから仕方がないんだけど・・・。

 とりあえず、次に行く遺跡が前の観測所の様に、危険な施設児ない事を祈るだけだ。



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