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アリア視点。三回目です。

「初めましてアベル様。ベルゼリア王国第三王女。ティリア・ユーリィ・フレア・ベルゼリアです」


 嬉しそうに微笑みながらシッカリと挨拶をしてくる姫君に何も言えなくなる。


「こちらこそよろしく。アベル・ユーリア・レイベストだ」

「はい。よろしくお願いしますね」


 その輝く瞳を見ただけで、彼女の想いがすぐに判る。多分、今、ここでティリア姫の想いを理解してないのはアベルだけだと思う。

 

 本当に、どうしてこんなに鈍感なのだろう?

 

 戦いに際しては誰よりも素早く状況を把握して、的確な判断を下すし、国が関わるような厄介事に巻き込まれても平然と切り抜けられるくらい鋭いのに、事、異性からの好意に対しては信じられないくらいに鈍感なのはどうしてだろう?

 その所為でこれまでに私たちも散々苦労して来た・・・。

 反面、助かった部分もあるのも事実だけども・・・。

 アベルくんは私たちの想いに全然気づいてくれない。だけども、同時に他の女の人たちが向ける熱い視線にも全く気付かない。でも、それが今回ばかりは助かったのも事実。

 もしも、アベルくんが自分に向けられる好意にすぐに気付いたりしていたら、どうなっていたか考えるだけで怖くなる。

 私たちの恋のライバルはそれこそ、百人や二百人では済まなくなっていたのは確実。

 今でも、私たちのパーティーに居る女の子は基本的にアベルに好意を持っているから、アベルが鈍感過ぎて恋の駆け引きなんて事にまで全然いかなくても大変なのに・・・。

 ・・・何か、言ってることが自分でも滅茶苦茶な気がしてくる。

 アベルくんが鈍感過ぎて大変だけども、もしも、私たちの想いに気付いてくれるくらい、人並みに異性の想いに気付けていたら、それこそどうしようもないくらい大変だったと・・・。

 うん・・・。要するにいつになったらアベルくんが私たちの想いに気付いてくれるか不安で仕方ないけど、今のままが一番いいってことだよね。


 そんな風に私が一人で百面相をしている間にも、アベルくんとティリア姫の話は進んでいます。

 それにしても、二人が向かい合って座っているのはとても絵になっていて、まるで一つの芸術品みたいだと思わず溜息が出そう。

 だけど、アベルくんには悪いけど、誰がどう見ても二人の美少女が歓談している様にしか見えない。

 本当にアベルくんはどんどん綺麗で可愛らしくなっていく。

 私も自分で言うのもなんだけども、人並み以上に整った容姿をしている自信はある。・・・ただし、年相応には見えなくて未だに可愛らしい女の子にしか見えなくて、残念だけど綺麗と言われる事はない。

 だけど、アベルくんは歳相応にに可愛らしいだけじゃなくて、本当に息を飲むくらいに綺麗。そして、ティリア姫もそんなアベルくんと変わらないくらいに、可愛くて綺麗。

 二人の伸長はほとんど同じ。アベルくんは同年代の男の子と比べるとかなり背が小さい。と言うか、同じ年のティリア姫と遺書に居て気付いたけど、女の子の平均身長なんだと思う。 

 多分、その事はアベルくん自身も気付ていて、気にしていると思う。女の子にしか見えない自分の容姿を随分と気にしているから・・・。

 それはともかく、ティリア姫はプラチナに輝く緩やかなウエーブを描く、腰にまでと説く長い髪と、深い蒼の瞳をした花のように可憐な女の子。だけども、ふんだんにフリルのついたドレスの上からでも判るくらいに発育が良くて、特に胸は私の倍近くあるかもしれない・・・。

 それなのにウエストは凄く引き締まっていて、正直、同じ女の子として羨ましい。

 体重の方は、多分これはアベルくんの方が起こりそうだけども、そのアベルくんと同じくらいだと思う。

 ・・・つまり、アベルくんは同じ歳の女の事大体一緒の身長と体重だと言う事。

 うん。そこは触れないで置いた方が絶対に良いね。


「それで、ティリアはこれからどうしたいのかな?」

「勿論、アベル様のお側に居させていただきたいと思います」

「それは、俺たちと一緒に世界中を旅して周って、最前線で魔物と戦い続ける覚悟があると言う事かな?」

「当然です。王家に性を受けた以上、私もまた戦場に身を置く覚悟はできています」


 アベルくんとティリア姫は、互いに想いを確認し合っているけれども、アベルくんが鈍感過ぎるから、実は本当に意味では互いの想いが通じ合っていない。

 ティリア姫は間違いなくアベルと生涯を共にする事を既に心に決めている。それなのにアベルくんは新しく仲間になるくらいにしか考えていない。

 何か、ティリア姫が可哀想になってくる。

 アベルくんはもう、鈍感とかそんな次元じゃない気がする。

 そして、私たちにとっても人事じゃない。これは、本当にこれまでの関係に戻れなくなるのを覚悟で、私たちが自分から告白しないと、これから先もずっと関係に何の変化もないかも知れない。

 これからの事を本気で真剣に考えないといけない。心の中で決意を固めると、周りのみんなを見渡してみる。やっぱりと言うかみんなも同じ思いみたいで、それぞれ無言で確認し合って頷き合う。


「私は今迄、その務めを果たせずにいました。ですから、アベル様のもとでこれから先、今まで果たせなかった責務の分も精一杯務めるつもりです」


 ここで言う責務には、国を護るために魔物の侵攻を退けるだけじゃなくて、間違いなく、国のために有益な人物とかと親密な関係を築く事も含まれていると思う。

 それと、彼女がこれまで王族としての務めを果たせずにいたのは、第三王女の立場に居ながらあまり知られていなかったのは、生まれつきの障害の所為。

 高魔力障害。

 王族や貴族など、強さを求められる血筋にたまに生まれるるらしくて、生まれつき高い魔力を持っている反面、制御できるはずもない赤ん坊のころから、強すぎる魔力を持っているため、魔力暴走の危険性を孕む人たちの事。

 幼い頃は魔力封じの魔道具を身に付けておかなければ命に係わる危険な障害。

 だけども、成長して少しづつ魔力の制御を身に付けて行けば問題なく。魔封じの魔動がなくても普通に生活できるし、普通の人よりも優れた魔法の使い手に成り得る。

 彼女は特に高い魔力を潜在的に持って生まれてきたため、完全に制御できる様になるのに随分と時間がかかってしまったとの事。だけども、今はもう完全に制御できる様になっているし、確かに、こうしてみても信じられないくらいの魔力を彼女から感じる。

 間違いなくBランク以上。ひょっとしたら今の私たちと同じくらいの魔力量。

 年齢からしても本当にありえない魔力量を既に持っている。これで、アベルくんの物で本格的に修行をしたらいったいどうなるか?

 多分、すぐにでもSクラスになるのは確実。ひょっとしたら、アベルくんと同じレジェンドクラスにまで成り得てしまうんじゃないかと思えてしまう。


「覚悟があるのなら、俺としては問題ないけど、みんなはどうかな?」


 どうやら、アベルくんはティリア姫を仲間にするのを決めたようです。その上で私たちに、彼女を仲間にするのに異論がないか聞いて来ますけど、絶対に判ってません。

 アベルくんはティリア姫を仲間にしただけと思っているでしょうけど、周りはティリア姫を娶ったと判断するのだけど・・・。

 実際問題として、一緒に居ることを認めた時点で既に既成事実が完成しているのにも理解していないね。


「問題ないんじゃない。キミが認めた時点でもう遅いし」


 ミランダさんですらもう本当に呆れ顔です。


「はい。これから一緒に頑張りましょうね。ティリア姫」


 一国の姫様が仲間になると言っても、ユリィさんたちが居るのですでに今更です。特に緊張とかはしないけれども、新人のハズの彼女がアベルくんとの関係で、一番リードしているのは内心少し複雑です。

 いえ、正確には既に、ユリィさんやケイさんも、アベルとの事実上の婚姻関係にある事になってますから、ティリア姫だけが一歩抜け出している訳じゃないんだけど・・・。


「こちらこそよろしくお願いします。みなさん。それと、私の事はティリアと呼び捨てていただいて結構ですよ」

「よろしくね。ティリア」


 早速、ユリィさんたちがティリア姫となにか話し合いを始めます。

 何を話しているのか大体予想はつくけど、ここは触れない方が賢明だと思うのでスルー。


「新しくお姫様が仲間になったのより、これから私たちがどうするか真剣に考えないといけないのが問題ね」

「確かにね」


 リリアちゃんの言葉にみんなで同意します。

 因みに、アベルくんはティリア姫が仲間になるのが決まって、みんなで親睦を深めているとでも思ったのか、一人だけ我関せずとばかりにお茶を飲んでます。

 既に関係ないみたいな雰囲気でいるけど、全てアベルくんに係わる事だって判ってないね・・・。


「何かもう。今までこれまでの関係が崩れるのが嫌で躊躇ってたのがバカらしくなってきたよ。あの超絶鈍感のアベルくんが告白して来たからくらいで態度を変えるくらいなら、逆に苦労しないよね」

「ああ・・・、確かに」

「言われてみればその通り・・・」

「今までさんざん悩んできたのはなんだったのかな・・・」

「本気でバカらしくなってきますね・・・」

「そもそも、あの鈍感王が私たちの想いに気付いてくれるなんてありえないんだから、どうしたって私たちから告白するしかないんだしね・・・」


 私の言葉にみんな同意して後、揃って深く溜息を付きます。ノインちゃんはそんな私たちを少し不思議そうに見つめているけど、実は、そんな彼女も少しづつアベルくんにひかれ始めていたりするんだけど、この様子だとまだ本人は気付いてないみたい。


「うん。もう悩んでも仕方ないしね。ちゃんとアベルくんに私たちの想いを伝えよう」

「そうね。そうしましょう」


 そんな訳で、随分と時間がかかったけれども、ティリア姫の加入を機に、私たちも動き出すのを決めたよ。アベルくん。



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