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「なんとも、これは壮観としか言いようがないな」


 王は自分の宮殿の真下に位置する遺跡、そこに収められた装機竜人の列に感嘆の声をあげる。

 気持ちは良く判る。俺自身、この光景は圧巻の一言だと思った。

女性的なフォルムで天使の様な翼を持つニーベリング。漆黒で禍々しさを感じさせるグラム。それらが列をなして並んでいる様子は見る者を圧倒する。


「うむ。実に見事だ。我が先祖はこのような光景を幾度となく目の当たりにしたのか」


 うん? 何か今の発言に引っかかるんだけど・・・。


「さて、それでは本題に入るとしようか、アベル殿」

「そうですね。ワザワザ王自ら此処に足を運んだのは、極秘の話があったからですね?」


 流石にそれくらいは判る。いくらなんでも、一国の王が興味本位だけでこんなところにまで来たりはしないだろう。


「うむ。その通りなのだが、その前にアベル殿、言葉遣いを改める必要はないぞ。其方の方が我よりもはるかに高い地位に居るのだ。そのように改まれては我の方が不遜になってしまう」

「それは、しかし・・・」

「Sクラスまでなら、相手に敬意を示す為に言葉を改めるのも確かに良いが、レジェンドクラスとなれば最早一国の王とて完全に格下。普段通りにしてくれなければ我の方が困ってしまうわ」

「ああ、それは確かに、そうかも知れませんね」


 何やら、俺以外の全員が納得しているので、ココはもう口調を改めるのは止めた方が良いだろう。て言うかこれから先、誰に対しても何時も通りの自分でも乱暴と思う喋り方で話すのか?

 それはそれで、若干気が引けるんだけど・・・。


「判った。ではそうさせてもらおう。それで、話というのは?」

「うむ。我が祖先。この遺跡を発掘した者よりアベル殿に伝言がある」

「はっ?」


 今この遺跡を発掘した本人からの伝言と言った?

 しかもそれが王の祖先だと?


「我がベルゼリアは五万年前にこの地に誕生したとされているが、実際には六万年前、この遺跡を発掘した冒険者。アスカ・シングウジが造り上げた国が母体となっておる」


 それは初耳だ。しかもどうやら、話の流れから言ってこの国の王族はそのアスカ・シングウジの、転生者の血を引いているようだし。


「シングウジの名は時の流れとともに消えたが、我らベルゼリア王家には確かに彼の血が流れておる。そして偉大なる建国王は、我ら祖先に遺言を残した。即ち、再びこの王都の地下に眠る遺跡に至る者が現れたのなら、自分の伝言を伝えよと」

「伝言?」

「うむ。『長い時を経て現れた同郷の者。キミたちに俺が辿り着いた真実と力を渡そう。それを持って何を成すかはキミたちの自由だ』これが伝言として王家に伝えられている言葉。正直、いったい何なのかも全く判らぬが」


 それはそうだろう。日本語の伝言じゃあ、転生者以外には全く理解不能だ。


「そして、これを渡すようにと」


 差し出されたのはメモリー。

 ふむ。この中に知識と力が入っているとは思えないから、多分それがある場所が記されているんだろう。

 それにしても転生者の子孫か、このネーゼリアには数え切れない程の地球からの転生者が居るのだから、過去の転生者の子孫が居てもおかしくないのは判っていたけれども、まさか自分の国の王族がそうだとは思わなかった。これは、今まで気が付かなかっただけで、実はもう結構転生者の子孫と会って居たりするのかも知れない。その中に、同じ様に後の転生者へのメッセージを託されている子孫も居るかも知れない

 まあ、もし仮にいたとしても、今更探し回るのも不可能だし、その辺りは気にしない方が良いだろう。


「それにしても、良く残っていましたね」

「いや、流石に六万年も前の事、失伝して等しかったのだが、今回の件で王家の古文書を読み返して見付ける事が出来た。それに、こちらの方はこの遺跡が再び解放された時に自動的に今の王のもとに送られる仕組みになっていたようでな」


 まあ、六万年も前の遺言がそのまま伝えられ続けるのも無理があるだろう。

 それに、王も今回の件で調べて遺言の事を知っていなかったら、いきなり現れたメモリーに大混乱していただろう。いや、遺言の事を知っていても、いきなり目の前に物体が現れたら驚くか・・・。

 どうやら建国王。転生者のアスカは随分と良い性格をしていたらしい。


「ともあれ、それはアベル殿の物だ。どの道、我らでは仲に何が記されているのかも理解出来ぬしな」


 当然だけども、事前に中身を確認したみたいだ。だけど何が示されているのか判らな渇ったという事は、このメモリーの中身も日本語なのだろう。

 それにしても、どうやらこの遺跡は六万年もの間、誰も訪れなかったらしい。まあ、流石に王都の地下何て場所にあるんじゃあ、おいそれとは辿り着けないのも確かだけども・・・。


「ああそれと、もしもこの遺跡に辿り着けるものが現れたのなら、確実に繋がりを持つと良いとも言い伝えられておってな。出来れば、我が娘をアベル殿のもとに嫁がせたいのだが」

「えっと、それは・・・・・・」


 ココにきての爆弾発言に周りが困惑している。

 いや、俺はある程度予測していたから驚かないけどね。まあ、同じ転生者、しかもこの遺跡に辿り着くとなればかなりの国際的な地位も確立しているのは確実となれば、抑えておけと助言するのは間違いないし。

 そんな助言がなくても、王としてはきっかけさえあれば俺との間に繋がりを持ちたいと思っていたのは間違いないだろう。まさに渡りに船という事だけども、王としても、ココでハイとすぐに返事が来るとは思ってないだろう。要するに、ココでは王女を娶るつもりは無いかな? と提案するのが目的。


「娘と言うと」

「うむ。第三王女のティリアだな。アベル殿と同じ歳だ」


 何ともまあ、都合の良い事に俺と同じ年の姫様が居たらしい。

 自分の国の王族についてくらいきちんと把握しておけよと突っ込まれそうだが、表舞台に立つことが多い王や王妃、王太子などと違って、王族としての公務をこなすのも稀な第三王女では把握しずらい。

 俺がこの国を出る気満々で、国内の事にあまり気を使っていなかったのも事実だけど・・・。


「俺はまだ結婚する気はありませんよ。それに、本人の、ティリア王女の意思を確認しないで話を進めてしまっていいのかな?」

「ティリアの意思ならばもう確認済みだ。同じ年のアベル殿が世界中で活躍しているのを知って、無関心でいられるハズがあるまい」

「そうですか、まあ、一度会うくらいは問題ないけど」

「おお、そうかそうか、それは重畳。では、早速この遺跡を再び封印して、地上に戻ろうではないか」


 俺がお見合いをするのにアッサリOKしたのに、何か後がざわついているけど、まあ、問題ないだろう。

 心菜あった機体は、既に全機種、百機以上を確保してあるので、研究素材として各国や、装機竜人の研究・開発狂いのSクラスに渡すには十分だ。

 特に研究者気質のSランクは、欲しいと思ったら手段を択ばずに来るから、彼らに渡す分の確保は実は本気で重要だったりする。いやまあ、どうやっても一機しかない場合はどうしようもないんだけどね・・・。


「簡単にOKしちゃったけど良いの?」

「問題ないさ。あって話をするだけだし、さっきも言った通り俺はまだ結婚する気はないし」


 それ以前に、俺はまだ結婚できる歳に、十五歳になっていないのでそもそも出来ないのだけども、まあ、今から互いに想いを深め合って、十五歳になったらという話だろう。


「まあ、王家としては俺との関係を深めたいのは当然だろうし。出来れば王族の中からSランクが輩出されてくれればって思惑もあるだろう」

「でしょうね」

「でも、ここで受けてしまうと、各国から姫君を送りつけられかねませんよ?」


 懸念しているのは判ったけど、その表現はどうなんだろう?

 いや、押し付けられかねないでもどうかとは思うけど、物じゃないんだから送り付けられるはないと思う。


「まあ、それも会ってみた結果次第だな。本人のヤル気とか、才能の問題もあるから」

「アベルさんの中では、既に婚約者候補と会うのではなくて、弟子候補と会う事になっているんですね」


 何かアレッサにもの凄く呆れられてしまったけれども、実際にそうだろう。

 王家が何としても欲しいのは俺との繋がりよりも、王家の血筋から輩出されるSランク。国の守りの要として、何よりも王家の統治を盤石にするするために是が非でも欲しいだろう。

 そう説明すると、何故かエイルにまで呆れられてしまった。

 どうしたというのだ。何かおかしな事を言ったか?


「はあ・・・。アベルさんですものね」

「判ってるつもりだったけど、これは酷い・・・・・・」

「何をどうしたら、ココまで無自覚に慣れるのでしょう・・・?」

「本当に、動揺もなく先が思いやられるわ・・・」

「これはもう、鈍感とかそう言うレベルじゃない気がして来たわ・・・・・・」


 何かとてつもなく疲れた様子を見せるのはどうしたんだ?

 いや、流石にココでどうしたんだと尋ねたりしたら、本気でシャレにならない顰蹙を買うのくらいは判るから聞かないけど・・・。

 それにしても、実感憐れむような視線を向けられている気がするのが気になる。


「どうしたのだ? 早く地上に戻ろうではないか」

「はあ・・・。本当に仕方ありませんね。行きましょう」


 王に急かされて地上へと向かう彼女たちにどう反応したらいいのか判らないのだけど・・・。

 これは、俺の責任?

 俺が悪いのだろうか・・・?



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