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 遺伝子研究をしている研究施設はひとつ残らず、全て跡形も無く消し去り。研究者や顧客なども一人残らず取り押さえた。

 結局、あの後すぐに他の全ての研究所の制圧に向かい。一日がかりで全てを終わらせた。

 結果としては、想定していたよりも更に最悪な事態に陥っていた。


 ・・・・・・むしろ想定しておくべきだったのかも知れない。

 遺伝子研究の研究対象として、ユリィたち他種族の遺伝子情報もこの上なく魅力的なのだと・・・。


 だけど、彼らは自分たちが何をしているのか理解しているのだろうか?

 ユリィたちは他種族の、エルフやドワーフ、獣人などの王族だ。その遺伝子を勝手に採取し、研究材料にした挙句に、クローンを造り上げる。

 そんな事が許されるとでも本気で思っていたのだろうか?

 冗談抜きでシャレにならない。国際問題どころか、種族間戦争にまで発展して、ヒューマンが全滅する事態にまで発展してもおかしくない暴挙だ。

 その最悪の未来を回避するために、俺はレジェンドクラスの魔物との連戦の折、肉を手に入れに来たので得た各国の王とのパイプをフルに使って、戦争回避のために謝罪と説得に奔走しなければならなかった。

 因みに、その時の詳細については断固として省かせてもらう。既にこれ以上ないほどにつかれているのだ。その上あんなどうしようもない顛末を詳細に思い出して語るなんて、本気で地獄の拷問でしかない。

 

「お疲れ様ですアベルさん・・・」


 事態の深刻さとそれに伴う苦労の連続を知ったアレッサが労ってくれるが、若干その顔を青いのは仕方がないだろう。

 と言うか、今回の経緯を知って平然としていられるようなら、それはもう大物ではなくて唯のバカ確定だ。


「本当に疲れたけど、唯一の救いは、今回、余りにも事態が深刻化したためにこれから先、遺伝子研究そのものが完全に禁忌とされるのがほぼ確定した事ね」

「まあ、それでも研究使用するのは現れるだろうけど、完全に違法認定されれば潰すのも簡単になるし」


 遺伝子研究、ひいてはそこから発生するクローン技術の研究や、人造人間、戦闘バイオロイドなどの開発などはこれまで成果がほぼ無いので大々的に研究されていないだけで、各国ともに特に問題視してはいなかった。

 その認識が根本的に間違っていたと知らしめられたので、これから先、ヒューマンのどの国も研究自体を認めなくなるだろう。

 まあ、それでももう二度と研究されなくなるなんて事はないだろうけど、それでも少しは面倒事が減ったのは確かだ。


「研究を潰すのもそうだけど、アベルはお父様たちの相手もお疲れさま」

「お父様たちも、いい機会だからと張り切ってましたから。アベルも大変だったでしょう」

「それはね。いくつカードを切る羽目になったか・・・」


 実際の所、ユリィたち自身が特に気にしていなかったので、今回の件で全面戦争の危機とまではいかなかったのだけども、それでも非は全面的にこちらの、ヒューマンの側にあるので、余程の無茶な要求でもない限りは謝罪として応じなければならない。

 ・・・まあ、要するにワイロではないが、相当量のレジェンドクラスの魔物の素材を献上して矛を収めてもらう形になった。

 各国手もにかなりの量を既に買って行っているけど、レジェンドクラスの魔物の素材はその希少価値からも信じられないほどの値段が付く。国家予算にだって限りがあるのだから変える量には限りがある。

 各国ともに、本音を言えばもう少し手に入れたいのを我慢していたのが現実なので、もう少し手に入れたかった分を謝罪を込めてムリ量で進呈する事で、どうにか終わらせたと言う事である。

 正確にはそれだけじゃないけれども、まあ、一番大きかったのがそれだろう。


「今回の一件で、アベルは個人資産から10兆は使ったからね。損失がシャレにならないけど、まあ、問題ないでしょ」

「正直、あんなに大量に持ってても使い様がなかったしね」


 ぶっちゃけ、レジェンドクラスの魔物の素材については、どうやって使いきれと? と本気で悩む以前にどうやっても個人では使いきれない量が手元にあったので、ある程度在庫処分できたのでむしろ助かった一面もある。

 それに、俺自身既に自分でも把握しきれないほどの額を稼いでいるので、日本円で100兆を失ったと言っても時に何の問題もなかったりする。むしろ、もう少し使っても良かったと思うくらいだ。

 ・・・正直、金銭感覚がもう完全に崩壊してしまっていると思わなくもない。

 だけど、間違いなく既に個人資産で数千兆を手している状況で、10兆や20兆ぐらいどうと言う事もいのもまた事実。


「て言うか、既に俺自身、自分の個人資産について、正確に把握しきれていないんだけどね・・・」

「それは仕方がないわね。私自身、自分の個人資産が正確に把握しきれなくなって久しいし、その上、キミと一緒になってから更に収入が増えて、一体今どのくらいの神を持っているのか見当もつかなくなっているし、多分、間違いなくみんなも既にそうなっているでしょう」


 ミランダがそう言ってみんなに視線を送ると、エイル以外の全員が曖昧な顔で背ける。


「確かにそうですね。それに、私たちの場合はグングニールの販売金額の一部も含まれますから、自分でも正直信じられない金額に何時の間にかなってましたし・・・」


 アレッサが代表して応えるけど、自分の口座の預金金額を思い出したのか、若干目が虚ろだ。


「私も、気が付いた時には口座の預金額が一兆を超えていたのだけは覚えてる・・・」

「それ以降は、正直、怖くて確認してません・・・」


 だろうな、いや、間違いなく原因は俺にあるんだけど、ぶっちゃけAランクの冒険者が稼げる金額じゃない。

 ノインですら引き攣った顔で自分の預金額を思い出している様子なので、正直、俺も彼女たちの資産額を効くのが少し怖くなる。


「みなさん大変なんですね」


 自分の個人資産を思い出して疲れた様子を見せるみんなに、エイルが声をかけるけれども、この様子だと何が大変なのか理解はしてないな。


「そう言うキミも、アベルと一緒に居る以上、すぐに大変な事になるから気を付けておいた方が良いわよ」


 それはどういう意味かなと突っ込みたいのだけども、俺とエイル以外の全員が深く頷いているので反論できない。


「大変な事ですか? 激戦区での連戦を強いられるのですか?」

「イヤそうじゃなくて・・・。いや、確かにそれもあるんだけどね。それ以上に大変な思いをする事になるから覚悟をしておいた方が良いよって事」

「最前線で常に死と隣り合わせにある事よりも大変な事があるのですか?」

「間違いなくありますね」

「良く判りません・・・」

「うん。私たちもはじめは判らなかったから当然だと思うよ」


 首を傾げるエイルに、どの道すぐに同紙になるからと生易しい視線を送るみんな。

 いやそれもどおなのかなと言いたい。まあ、確かにこのパーティーが色々と常識ハズレなのは認めるが、それは何も俺だけの責任ではないはずだ。

 ミランダだって十分過ぎるトラブルメーカーだし、他種族の王族であるユリィたちだって色々と厄介事を運んでくる事だって珍しくない。

 このパーティーに居て、色々と気疲れする羽目になるのは断じて俺だけの責任ではない。


「まあ、追々判るさ。今は特に気にしなくても良い。まずは何よりも一緒に居るのに慣れる事だからな」


 どの道、エイルが人間らしい感情を手に入れてくれない事にはどうにもならない事だ。

 或いは、俺たちと一緒に居ることの大変さに、本能的に感情を得ない様になったりする可能性もあったりするかなと思わなくもないけど、その時はその時だ。


「判りましたアベル様。ところで、これからの予定はどうされるのですか? 私が眠っていたような遺跡を周っている最中だったと聞きましたが」

「ああ、当然だけど遺跡探索に戻るよ。今度の遺跡は、ベルゼリアだな」


 当然だけど俺の母国。ベルゼリアにも十万年前の遺跡は存在する。それならまず初めに行けよとか思われるだろうけど、実はこの遺跡、非常に面倒な場所にあったりする。


「そう言えばベルゼリアにも遺跡があっておかしくないわよ。それで、何処にあるの?」

「王都の真下」

「はあ?」


 これにはさすがのエイルすらも驚いたようだ。全員で声を揃えて聞き返してくる。


「だから王都の、正確には王宮の真下」


 まあ十万年も前の遺跡だ。地中に埋もれてしまってもおかしくないのは、今までに回った遺跡の数々からして明らかなんだけども、まさか、その上に王都が、王宮が立てられているとはまさかの展開。

 遺跡が発掘されたのは六万年も前なので、その当時はまだベルゼリアも建国されてないし、当時は唯の荒野か草原だったのかも知れないが、今ではベルゼリアの王都。一千万人を超える人口を誇る大都市の真下だ。そうそう勝手に発掘も出来ないし、迂闊に遺跡に入って、遺跡の機能を生き返らせたりしてしまった場合、真上にある王都にどんな影響を与えるかも判らない。


「それはまた、随分と面倒な場所にあったものね」

「全く持って同意見」


 因みに、俺の持つ古文書。十万年前の超絶チート転生者が残した、強くなるための修行法が記された書も、実はこの遺跡から発掘された物らしい。


「とは言え、このまま放っておいても、実は遺跡自体に一定間隔で自動的に機能が取り戻されて動き出すように設定されている可能性もあるし、確かめる以外ないんだよ」


 例えば、何らかの観測所とかなら問題ない・・・。いや、大いに問題がある可能性もあるが、例えば、本当ににありえない可能性だけども、カグヤの状況を把握して、必要になったら自動的にメンテナンスの為の何かしらを送り出す為の施設だったりした場合、カグヤに異常が起きた時には何かしらの動きがある事になる。

 でまあその場合、可能性としてだけど王都が壊滅する事もあり得る。

 流石に無いと思うけどね・・・。


「そんな訳でこれからまた里帰り、因みにベルゼリアの次はマリージアだから」


 ベルゼリアにあってマリージアにないはずがない。そんな訳で、メリアたちも再び里帰りするのが確定だ。



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