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 ケレスから一通りの戦略と戦術をを学び、別れを済ませた俺たちは次の目的地、極寒の国マーチス王国にヒュペリオンの速度にモノを言わせて二時間で辿り着いた。


「確かに、明らかに既に寒いな」


 着いた感想は寒いの一言。

 明らかに既に気温は氷点下だ。正直、よくこんな一年中寒い厳しい環境の土地に住めるなと感心してしまう。


「この国で、真冬い魔域の活性化なんかが起こったら地獄だな」

「言わないでください。そんな不吉な事っ」

「そうよ。本当に起きたらどうするの?」


 思わず漏れた感想に、寒さに弱いらしい二人が真っ先に反応する。

 いや、むしろ当然か、これまでの経験からしてもう確実に、この冬辺りにもう一度この国に来る羽目になりそうな気がする。


「そうは言っても、氷点下百度以下の極寒地獄じゃ、魔物の方も無事者すまないと思うけど」


 ダイヤ・ハウンドやアイス・ワイパーンなど、凍てつく極寒の環境に適応した魔物も居るが、全体としての数はそう多くない。

 普通のオークなどが真冬のこの国に現れたら、討伐するまでもなく寒さにやられて全滅しそうだが・・・。その辺はどうなっているのだろう?


「ああ、それは事実よ。真冬の時期はワザワザ討伐しなくても、極寒の環境がある程度の魔物を退けてくれる。自然の守りでもあるのよこの寒さわ」

「それはまたスゴイですね」


 ミランダは前にこの国に来たときは凄かったわと、自身がかつて真冬にこのマーチスを訪れた時の様子を語り始める。

 前に来たことがあるなら、はじめからその時の事を教えて呉れればとも思うが、聞かなかった俺たちの方が悪い。

 ミランダによると、五十年ほど前に真冬のこの国に来た時、興味本位で氷点下百五十度。極寒のこの国でもありえないレベルの寒波に見舞われたその日の内に、魔域の様子を見に行ったことがあるそうだ。

 そこは正しく死屍累々。全てが凍り付いた氷の彫刻の世界だったそうだ。

 アイス・ウルフの様な、極寒の環境に適用した魔物のハズでも、ランクの低いモノは軒並み凍り付き。トナカイやマンモスの様な極寒地帯の動物型の魔物でも魔法で冷気を遮断できなければ一瞬で凍結。なんでこんな所に飛ばされたんだと思うオーガの群も、途中で魔力が尽きて冷気を遮断できなくなったのだろう。全てが凍り付いていたとの事。

 A・Bランクの魔物すら凍り付かせる凶悪な冷気とは、流石に想像を絶するんだが、これは本気で万が一にも真冬に再び来る羽目になった時には、どれだけ防寒着を完備していても、冷気の遮断は欠かさない方が良いだろう。試しに体感して模様とか思わない方が絶対に良い、命の危機に直結する寒さだ。


「その話を聞くと、実際に自分で確かめてみたい様な、絶対に来たくない様な、判断に迷うな」


 全てを凍らせ命を刈り取る死神の如き極寒の環境。話を聞くと俄然興味が湧いて、実際に自分で体験してみたくなる。


「それよりも今は、早く遺跡に行きましょう」

「そうだよ。アベルには早くこの国の遺跡がどれだけ危険か確かめてきてもらわないと」


 寒さが苦手な二人が話の流れが怪しくなってきたと感じたのか、遺跡の方に話を変えてくる。

 ついでに、ここの遺跡も想像を絶する厄介事が待ち受けているのが前提のようだ。

 イヤ・・・。本当に気持ちは判るんだけどね・・・・・・・。

 これまでに訪れた十万年前の遺跡は、レイザラムで儀式の為に訪れた遺跡以外は全て想像を絶する危険物のオンパレードだった訳だし、いや、あの遺跡だってきちんと調べてみたらこれまた、シャレにならない代物がゴロゴロ出て来ただろう事は間違いないんだけどね・・・。

 その意味では、あの遺跡は下手に調べようとしないですぐに立ち去って正解だった。

 正しく、君子、危うきに近付かずが正しい証拠だ。

  

 ・・・・・・それが解っているなら、どうして危険だと判っている遺跡をワザワザ回っているって話になるんだけどね。

 

 そこはもう、趣味としか言いようがない。

 別に厄介事に自分から首を突っ込みたい訳でも、トラブルに巻き込まれるのを望んでいる訳でもない。そこのところだけは本気で勘違いしないで欲しい。

 ただ、怖いもの見たさと言うのだろうか、こまで超絶な危険物を連続で見せられ続けると、他にはどんなものがあるのだろうと視たくて仕方がなくなってしまう。

 十万年前は、一体どれだけ規格外の異常な世界だったのだと、その一端を知るのが楽しくて仕方がなくなってきているのだ。


「ああ判っているよ。それじゃあ俺は早速行ってくるから、みんなはホテルで待っててくれ」


 因みにこのマーチスの遺跡は、当然のように永久凍土の中に埋もれている。十万年の間に分厚い氷の下に埋もれてしまったのだ。

 五万年ほど前に発掘された時に、氷のトンネルが彫られて入り口がつくられたそうだけども、間違いなくそのトンネルももう氷に埋もれてなくなっているだろう。

 まあ、それも実際に行ってみれば判る。とりあえず、今回は魔域の中に埋もれてはいないので、魔物を一々殲滅する必要もないし。


 と言うか、何時までもダラダラと考えてないでさっさと行こう。

 飛行魔法で一気に目的地に、ただし、試しにと冷気を遮断しないで飛んでみたら、風は遮ってあるのにとんでもない寒さだった。

 この季節でもうこの寒さかとウンザリする。

 まあ、永久凍土でしかも分厚い氷の層で覆われている。アラスカの氷河や南極大陸のような場所だ。冬でなくても寒いのは当然。


「と言うか、完全に埋もれてしまっていて何処にあるのかサッパリ判らないんだけど」


 遺跡の位置は十万年前の超絶転生者たちが記して残してあるとはいえ、此処みたいに氷の下に埋もれたり、土砂の下敷きになっていたり、地殻変動で水没していたりと、十万年も経っていると見付け出すのもなかなか骨が折れる。

 普通ならで、実際は探査魔法で一発で見付けられるから本当に助かる。


「この下ね。しかし、氷の層が五百メートルを超えてるし」


 恐ろしく分厚い氷の塊の下敷きになっているけれども、潰れてないか心配する必要はないのが助かる。

 とりあえず、氷を削の取って遺跡に続くトンネルを造っていく。何かもう、遺跡の上の氷を全て消してしまえば良い気もしなくもないけれども、どのみちこの遺跡も一通り調べた後、何事もなかったかのように再封印。次に俺の様な過去には屈された遺跡も回ってみようなんて、酔狂な事を考える転生者が現れるまでは放置されるのが決定の遺跡だ。それなら、ワザワザ遺跡がここにあると判るようにする必要もない。過酷な自然が隠してくれているのならそのままにしておけばいい。

 そんな訳で、まあ今回掘るトンネルも、俺が遺跡まで一回行けるだけでいい。

 実際、一回行ってしまえば後はもう転移魔法で氷の下に埋もれていても問題なく転移して行く事が出来るし、みんなを連れてもう一度来るにしてもその時も転移魔法で良いだろう。

 それにしても、氷のトンネルを掘り進めていくと、自分の周りの氷の透き通った透明度の高さに驚かされる。 

 これは、少し持ち帰っても良いだろう。色々と使いたいし、どれだけの量になるのか図ってみるのもバカらしいくらいの膨大に氷があるのだ。少しくらい持っていっても何の問題もないだろう。

 そんな訳で遺跡近くの最深部の氷を切り取ってアイテムボックスに放り込み、ついでに遺跡への入り口を確保する。

 さてさて、永久凍土の中に造られた施設。元々はなんの為に使われていたのやら?

 単なる観測所とかだったら助かるんだけど、何か見た感じ、結構大きな施設だし、単なる観測所と言う事はないかな・・・。

 まあまずは、ロックを解除しよう。正面の入り口横のモニターにこれまた何時ものように問題が映し出されている。

 しかし、このモニターは十万年もこうして点きっぱなしだったのかと本気で不思議に思わなくもないけれども、そこは一々気にしていても仕方がないと諦めるしかないだろう。

 実際、この世界でその程度の事を気にしていたらキリがない。

 さて問題は、空欄に当てはまる感じを入力して四文字熟語を完成させろと・・・。

 なんだ、この国語のテストの様なロックは? とも思うが、さっさと入力して入口のロックを解く。

 さて、入ってみて一目で何の施設か判るような特徴的な。それこそ防衛拠点の類の遺跡では無いようだ。代わりに何か、研究施設の様な雰囲気があるのだけど、こんな所にあえて建てる研究施設となると、それだけで非常に嫌な予感がする。

 ワザワザ何があっても周囲に被害が及ばない場所に隔離して造られた研究施設?

 もしそうなら、その時点で危険な研究をしているとまる判りだ。

 問題は本当に研究施設だったなら、何を研究していたか何だけど・・・。

 答えは、とりあえずと開けたドアの先に広がっていた


「流石にこう来るとは、想像してなかったな・・・」


 そこには液体の入ったカプセルが立ち並び、中には人が浮かんでいた。


「クローン・・・。いや、生物兵器の研究施設か・・・」


 人工的に造られた生命体。戦う為だけに生み出される兵器として存在する、人造人間を造り出す為の研究施設。

 確かに、想像を絶する戦いが続いていた十万年前の状況で、戦力の確保のために研究されない方がおかしい分野ではあっった。

 実際、今でも一部では研究が続けられていると聞く。

 だけども、実際に目の当たりにするのは初めてだ。そして、目の前に広がる光景にどんな思いを抱けばいいのか判らない。

 やれやれ、危険かどうかは知らないけれども、まず間違いなく面倒な遺跡である事だけは間違いないようだ。


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