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シャリア視点、三回目です。

 アーミィッシュの遺跡探索は、結局、無事に? 終わる事が出来ました。

 今更ながら、こんな危ない遺跡を周るなんてやめた方が良いと思うのですけど、どうやらアベルはまだ続けるみたいです。

 正直、アベル自身ももう意地になっているというか、ムキになっている気がします。

 ただ、ミランダさんの方が、毎回とんでもない危険物が出て来るのにウンザリしながらも、もう完全に楽しみ始めているので、止めるに止められません。


「次に行く遺跡でどんなものが待ち受けているか、今から怖いのですけど・・・」


 私たちとしては、またそこでみたモノの一切を他言無用になるに決まっていても、そんな危険な秘密ばかり増えていくなんて怖すぎます。


「別にそんなに心配しなくても」

「心配しますよ。出来れば、私たちは抜きで行って欲しいくらいです」


 これは本心です。別に遺跡探索は私たちが居なくても出来るのですから、巻き込まないで欲しいです。


「これ以上はもう。私たちには無理です」


 私が本気で真剣に訴えると、メリアたちも頷きます。ノインも一緒に、もう勘弁してくださいと真剣に訴えます。

 ユリィさんたちはミランダさんほどではないですけど、既に遺跡探索を楽しみ始めていますし、サナさんとザッシュさんの二人はどうしてか最初からノリノリです。

 だけども、私たちはもう無理です。これ以上、あんな想像を絶する遺跡の超兵器とかに係わり合いになりたくありません。

 それに、余りにも想像を絶する超兵器過ぎて、世間に知られたらどんな混乱を引き起こすか判らないので、遺跡にあったモノについては一切他言無用になるのは初めから解っているのだから、そんな場所には近づかなければいいのです。

 君子危うきに近付かずです。


「どうしても遺跡探索を続けるのなら、アドルさんたちでしてください。私たちは、それこそアドルさんたちが調査を終えて、危険な物がないと判った遺跡にしかもう行きたくありません」

「アハハ、まあ気持ちは判るわ。流石にこれ以上の厄介事はゴメンよね」


 ミランダさんは笑っていますが、私たちにとっては厄介事で済むレベルではありません。このままでは胃に穴が開いてしまいそうです。

 アーミィッシュの遺跡に関する顛末にしてもそうです。

 遺跡をそのまま防衛拠点として使える様なら引き渡して欲しいと言うケレスさんの要求は、当然ですが棄却。ですが、結局使うのは無理だと説明するために、あの危険な要塞の遺跡の概要を、ある程度彼に伝える事になりした。勿論、話した内容は彼でストップするように確約した上でです。結果、ケレスさんは真っ青になって顔を引き攣らせていました。

 当然です。間違いなく、聞いて事を心の底から後悔したでしょう。

 間違いなく、私たちと同じ気持ちを共有している彼の様子に、少しだけホッとしてしまったのは秘密です。


「厄介事で済む話じゃありません。遺跡の話を聞いた時のケレスさんの様子を見ましたよね。私たちもあの時の彼と同じ思いですよ」

「これ以上秘密を抱え込んで、何時バレてしまうかと不安な日々を送るのは無理です」

「とてもじゃないけど、私たちじゃもうこれ以上、重大な秘密を抱え込めないよ」

「これから行く遺跡で、もしも、これまでよりもさらに危険な物が眠っていたらと思うともう・・・」

「もしも、私たちが秘密を漏らしてしまったらと考えると怖くて眠れなくなる」

「正直、私たちには荷が重すぎる秘密が眠っている場所に行きたいとは思わないし・・・」

「これ以上、秘密にしなきゃならない事を増やしたくない・・・」


 私たちはそれぞれ思いの丈を吐き出します。

 正真正銘の私たちの本音に、アベルは苦笑しますが、その様子はむしろ嬉しそうでもあって首を傾げてしまいます。


「まあ確かにそうだよな。判った、次からは俺が先に遺跡に行って中を確認して来るから、みんなは問題がないと判った遺跡にだけ来てくれたらいいよ」


 何かもの凄く楽しそうで嬉しそうなのは、どうしてでしょうか?

 とりあえず、私たちは身の安全の心の平穏を何とか手に入れられたようです。



「それで、アベル殿たちは何時、次の遺跡の探索に向かわれるつもりなのでしょうか?」


 戦略や戦術の講義を終えたケレスさんが私たちに尋ねてきます。

 遺跡探索が終わって一週間近く経ちますが、実は私たちはまだアーミィッシュに留まっています。その理由は言うまでもなくこのケレスさんから教わる戦略や戦術。

 そのあまりにも奥深さに、私たちはもうほとんどついて行けなくなっていますが、アベルは何処までもどん欲に吸収していっていますし、ミランダさんは目を輝かせていますし、ユリィさんたちも興味津々です。それはサナさんとザッシュさんもも同じですけど、ザッシュさんの方は途中から完全についてこれなくなってます。

 因みに、アベルさんの提案で子の講義には途中からケレスさんの息子さんを含む、希望者が多数参加しています。彼にも必死になってケレスさんの教える内容を覚えています。

 いえ、その必死さは私たちとは違って鬼気迫るものすらあります。

 ケレスさんの教えを一つも残さず覚えようと必死になって一言一句聞き逃さず、全て書き取っていく様子は、最初は必死すぎて引いてしまう程でした。 

 アベルが言うには、本心では絶対にケレスさんの後を継いで竜騎士団長にはなりたくなくても、いずれ指名されてしまう可能性があるの゛、その時の為に必死になっているのだそうです。

 特に、副団長のゼーレさんは、ケレスさんが自らの副官に選ぶほどの人物と勝手に高評価を受けているので、万が一にも後を継いで竜騎士団長になった場合、今度は失望されて評価が血の底にまで落ちてしまうのは確実と、ほんの少しの可能性でも戦々恐々としているらしいですし。

 ケレスさんの長子であるケインさんは、どうあってもケレスサンマ後を継がなければならないのは確定しているので、こちらももう本当に必死になって研鑽を積み続けるしかないそうです。

 それに、自分の子に対してはケレスさんも教えを施したりしているにしても、竜騎士団長と言う多忙な役職についている以上、そうそう時間を取れる訳がないので、彼の子供や孫にしてみれば今回の講義は、またとないチャンスだそうです。

 そんな訳で、この講義も私たちが教わるよりも、他の人たちが必死になる場所になっていますが、これも間違いなくアベルの意図した通りでしょう。

 

「そうですね。来週にはこの国を出て、次の遺跡に行こうと思っています」

「次はマーチスの遺跡ね。一体何が待ち受けている事やら、楽しみであると同時に怖いわ」


 どうやらある意味のんびりとした、戦略や戦術を学んですごす日々も今週いっぱいで終わりの様です。

 次の目的地であるマーチス王国は、このアーミィッシュから北東に五千キロほど、北極圏に位置する極寒の国です。一年中凍り付いたままの永久凍土に覆われた魔域に接する極寒の国だという事です。


「まだ寒くなる季節の前で助かりました」


 私自身は寒がりと言う程ではないのですが、それでも一年中凍り付いたままの大地がある場所に、最も寒い季節を選んでいきたいとは思いません。

 オーロラなどの自然現象を見る為に、あえてその時期に訪れる観光客も少なくないそうですが、行けば必ず魔物の討伐をする事になると判っているので、純粋に観光に行く訳ではない以上は出来れば冬は避けたい国です。


「そうですな、あの国は真冬には氷点下百度以下にまで気温が下がる事も珍しくはないそうですから、慣れない方にはつらいでしょう」

「氷点下百度以下ですか?」


 私たちも極寒の国だとは調べて知っていましたが、どうやら私たちの想像を超えて厳しい環境の国の様です。

 これは、ひょっとしたら今の季節で既に気温は氷点下近くか、氷点下になっているかも知れません。


「本当にまだこの季節で助かったよ」

「もしも真冬だったら死んでしまいます」


 寒さに弱いメンバーが心の底から安堵しているみたいですが、今の季節でも十分に寒いと思いますよ?


「はは、お気をつけて行ってきてください。ですが、来週の週明けにも立たれるとなると、後四日で皆さんともお別れですか、なんとも名残惜しいモものです」


 それは私も思います。世界中を旅して周っている私たち、主にアベルですが、ひとつの国に一ヶ月以上留まる事はそう多くありません。

 アベルさんが非常時に転移魔法で何時でも駆け付けられる国を増やす為でもありますけど、すぐに立ち去ってしまう上に大半を魔物の討伐と修行に充てるので、あまり観光を楽しんだり、人との交流を深める機会もありませんので、特に感慨もなく後にする事が多いのですが、今回の様に一か月以上滞在して、それにケレスさんのように深く考量する人がいれば、私たちの方も名残惜しくなってきます。

 次にいつ会えるか判らないのだから尚更です。

 アベルさんなら、合いたい相手の所に転移魔法ですぐにでも行く事も出来ますけど、私たちはそんな事は出来ません。


「そうですね。まあ、次に会う時は貴方は確実にSランクに成っているでしょうね」

「そうですね。自分でも本当に驚いています。周りは期待してもそんな才能はないと諦めていたのですが」


 それはアベルに出会った幸運。或いは不運によるものですね。

 アベルに出会った時点で、ケレスさんはSランクになる事が確定していたのですから。それに、多分これから更に色々と厄介事に巻き込まれる事になるでしょうけど、それももう諦めてもらうしかありません。


「それは錯覚ですよ。むしろ、貴方にSランクに成るだけの才能が無い方がありえない。さて、それよりも、出発まではまだ日があるんです。それまでにゆっくりと別れを惜しみましょう」


 ケレスさんにSランクに成る才能が無いなんてありえない。そうアベルが言うと、アーミィッシュの人たちが全員で深く頷いています。やっぱり、この国ではケレスさんは何処までも特別なのです。

 そして、実際に特別だと十分に理解するしかない人物です。

 いずれにしても後四日、アーミィッシュを発つまでの間。ケレスさんに戦略や戦術を教えてもらう傍ら、彼らとの交流を深めて、別れを惜しんで過ごしました。



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