表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/398

133

「金色の機体か、これもある意味テンプレだよな」


 実際に自分で乗ろうとは思わないけど、心の中でそう続ける。

 所謂ロボットアニメでは金色に輝く機体はむしろ鉄板と言って良い。ただし、現実にそんなモノに乗って戦えと言われたら間違いなく断る。

 まあ、正直俺が造った装機竜人エール・セイヴァーもかなり派手な外見をしているが、それでも全身金の機体よりははるかにマシなはずだ。

 しかも、この機体はデカい。その全長は百メートルに達するだろう。所謂スーパーロボットとか呼ばれる類に近い気がする。

 全体のフォルムはしなやかで流線的。或いは、黄金に輝く仏像に近い雰囲気もある。


「機体名アマテラス。十万年前の超越者たちの専用機のひとつか」


 またとんでもない物が出てきたものだと思う。空気の無い宇宙での戦闘のために開発されたもので、ジエンドクラス、それもΩランクの魔物とすら対抗可能。

 ヒュペリオンと同じく今の世界には明らかなオーバースペックで、世界に混乱しか招かない危険物だ。


「それで、これどうするの?」


 ヒュペリオンと一緒に見付けた五百機以上のグングニール。その全機で挑んで、余裕で返り討ちにあう問答無用の機体。それを前にしてミランダは疲れた様に、諦めたように聞いてくる。

 

「これから先、必要になる事態もあるかも知れないから持って帰るよ。ただし、当面はアイテムボックスに封印で、存在については他言無用で」

「それが賢明な判断ね。流石にこんな危険物の事を迂闊に漏らすバカはいないわよ」


 そう言いながら、しっかりザッシュの方に視線を向けていたりする。

 その視線に気が付いたザッシュは、勿論漏らしたりしないと激しく頷く。


「それにしても、十万年前の遺跡にはこんな想像を絶する物しか眠ってないのでしょうか?」

「それ以前に、ここってもう既に発掘済みの遺跡なはずなのに、どうしてこんなものが残っているんでしょう?」

「それはまあ、発掘した当の本人が、始末に負えないと元に戻したからだろ。発掘済みの遺跡を再調査する事はまずないし、遺跡に入るロックを解けるものもまず居ないし、元に戻すのが一番安全だから」


 ぶっちゃけ、俺自身こんな物を持っていてもどうしようと本気で思う。これとヒュペリオンがあれば、万が一にもジエンドクラスの魔物が現れるような事態になっても、対処できるのは事実だけども、本当にそんな時が来るのかも判らないし、仮に対抗出来たとしても、後で死ぬほど面倒な事になるのは決まっている。


「まあ、とりあえず、まず気この遺跡の機能の確認と、他に何か乗ってないかを調べようか、多分、これだけじゃすまない気がするし・・・」


 このアマテラスだけでもうお腹一杯なんだけども、この要塞自体も最前線の防衛拠点であった以上、相応の迎撃システムなどを配備しているハズだ。

 それらの中には、現在使われている戦略殲滅兵器など比較にもならないほどの凶悪な兵器も当然ながら含まれているだろう。

 そう、考えるまでもなく始めから解っていたハズの事、惑星上で使って良いものなのかと本気で不思議な思う様な兵器の更に上位版。そんなモノがゴロゴロしているのが確実なのがこの遺跡だ。正直、ケレスに遺跡を明け渡すとかそんなのを一瞬でも可能かと考慮するまでもなかった。

 

「判っていたけど、本気でどうなんだろうねコレ?」

「十万年前までの戦いずどんなものだったのか想像すらつかないわね」


 指令室でこの要塞の詳細なデータを調べてみれば、どうやらここは魔域を閉ざす目的で造られた要塞らしい。

 本当にどれだけとんでもないモノがゴロゴロしているんだと叫びたくなる。

 魔域を閉ざす。今となっては最大のタブーそのものとなっているが、十万年前まではそれこそ日常茶飯事だったらしい。

 そもそも、魔域にエリアマスターが現れ、魔域そのものの維持を支えるようになったのは、カグヤによる封印が成されて以降の話だ。それ以前はそもそもエリアマスターなど魔域には存在しなかったし、それさえ倒せば魔域は閉じるなんて簡単な話ではなかった。

 更に言えば、エリアマスターを倒せば確かに魔域は閉じるが、その瞬間に莫大な数の魔物の侵攻を許す事になるようになったのも十万年前以降の話で、しかも、その当時は常にその比ではない魔物の侵攻に常に晒され続けていたのだから、これについてはもうおまけの様なものだ。

 とりあえず、この遺跡はそんな苛烈を極める魔物の侵攻に対して、侵攻口を閉ざす事でその脅威を一時敵に消し去るための機能を有している。

 あくまでも一時的だが、一つや二つの魔域からでも、魔魔物の侵攻が数百年はなくなるのは大きいだろう。魔物の侵攻数を抑えられるし、ある程度魔物の侵攻から解放される安全地帯を造ることも出来る。


「しかも、これ今でも使えるし・・・」


 カグヤによる封印が成されている今の魔域に対しても、この遺跡の魔域を閉ざす為の機関は使える。

 つまるところ、この遺跡を埋もれている魔域を閉ざすことも可能なのだ。


「これは余りにも重大過ぎる発見過ぎて、どうしたらいいのか判らない・・・」

「えっ? この遺跡を使えば、魔域を封じる事が出来るんですよね? なのに何を悩むんですか?」


 アリアが純粋に不思議そうに尋ねてくるが、事はそう単純な問題じゃない。


「確かにこれで数百年は魔域を閉ざす事が出来る。だけど、それはあくまでも数百年の限定での話だ。完全に魔域を閉ざす事はではないし、龍脈の力を用意るこの封印は、同じ場所に何度も出来るモノじゃない」


 そうこの封印は、弱まってきたならば新たに封印をかけ直し、魔域を閉じ続けていられるものではない。それにこの封印は、多様すれば多用するだけ龍脈の力を消耗していく。それは星の生命力が失われて行く事を意味する。

 ある程度までならば、龍脈の力は自然に自己回復して行くので問題ないが、世界中で魔域を閉ざすためにこの遺跡の機関が使われたりしたのなら、深刻なレベルでの龍脈の消耗を招く事になりかねない。

 ついでに言えば、この遺跡が封じられる魔域はあくまでも周辺のものだけだ。世界中の魔域に仕える訳じゃない。もっとも、こうなると世界中に同じ機能を持った遺跡が存在していると考えた方が良さそうではあるけれども・・・。


「この遺跡の機能をへたに公表すると、世界中の遺跡を周って、同じ機能を持った遺跡を見つけ出し、一Eに世界中の魔域を閉ざす方向に話が行きかねない」

「一時的でも魔物の脅威から世界が解放されるんだから良い事だと思いますけど」

「そう簡単な話じゃない。まず、世界中でこの封印が使われるような事になったら、龍脈の力が一気に消費されて、星の自己回復を超えて過剰に消費され続けた結果、惑星そのものが崩壊する危険性すらある」

 

 とは言うものの、実際にあれだけ圧倒的な、絶対的と言っても良い龍脈の力を使い果たすなんて事がありえるのかもはなはだ疑問だが、万が一でもその危険性があるのも確かだ。それに、レジェンドクラスの魔物の力を考えると、ジエンドクラスの魔物の力がどれ程か、更に魔域そのものが内包している力がどれだけのものかも判らないので、実際は、相当に危険なのではないかとも思う。

 現実問題として、一時的でも、魔物の脅威から解放されたところで、世界そのものが滅んでしまったのでは意味がないのだ。そんな危険性があるマネをするなんてどうかしている。

 この遺跡の機関は、あくまでもあまりにも激しすぎる魔物の侵攻を少しでも抑える為、そして、非戦闘要員の市民が安心して暮らせる場所を少しでも造り出す為に造られたモノだろう。


「更に言えば、魔物の脅威がなくなった事による戦力の減退が問題となる。数百年も魔物の脅威から解放されるという事は、逆に言えば数百年後には軍にも騎士団にも、竜騎士団にすら実戦経験を持つ者がいなくなる。その状態で魔物の侵攻が再び始まったなら、一体どれだけ戦えるか」


 ついでに経済的な問題に、社会システムの維持の問題もある。

 この世界の経済は魔物の討伐とその素材の売買がかなり大きなシアを占めているし、魔道具などの動力に使われる魔石の新規調達が出来なくなれば、社会エネルギーが破綻する事になる。

 そして、何よりも問題なのが、魔物の脅威と言う抑止碌がなくなる事による戦争の勃発の危険性だ。

 特に、世界中の国で経済の大きな変革や、エネルギーシステムの見直しなどを迫られるとなれば、その不満などは容易く争いの火種に発展しかねない。


「まあ、実際の所は、世界中で魔域の封印がされるなんて事態にはまずならないだろうけど、それならそれで、この遺跡の力で魔域を閉じた国と他の国との関係の悪化が問題になって来る」


 この遺跡を使えば、確かにアーミィッシュを含む、周辺のいくつかの国は魔域が閉ざされ、魔物の脅威から数百年の間解放される事になる。 

 だが、その一方で他の国は魔物の脅威に晒され続け、多くの犠牲を払いながらその脅威を打ち破り続けているのだ。

 その在り方の違いが軋轢を生まない訳がない。

 国同しの関係は一気に険悪なものになってしまいかねないし、ならば我が国も魔域を封じる遺跡をと、同様の機能を持つ遺跡を血眼になって探す事になり、結果、魔域に対する防衛が疎かになる危険性もあるし、最終的に全ての魔域を閉ざすべ儀との結論に至っる可能性すらある。


「とりあえず、現状じゃあ確かに魔物の脅威から国や人を護れる一方で、純粋な禍になりかねないんだよこれは」


 元々は極めて有効な機関だったのに、今となっては唯の危険物でしかない。しかもコレは、ヒュペリオンやアマテラスよりもさらに始末の悪い危険物だ。


「こんな危ない物の存在が知れたら、一体どんな騒ぎになるか、想像するだけで怖いわ」

「そんなにですか・・・」


 ミランダが怖いという程の危険物なのかと、改めて危険性を理解したのかゴクリと唾を飲むみんな。


「それにしても、本当に十万年前遺跡にはこんな危険物しかないのか・・・」


 むしろ、この程度のものはそれこそ一般的だったとかそんなムチャな事は言わないよな?

 今更ながら、十万年前の社会の想像を絶するデタラメさに、超越者が残した遺産の凶悪さに頭が痛くなってくる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ