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 そんな訳で、ケレスに十万年前の超越者たちが残した修練法を伝え、俺たちは彼からその比類なき戦略と戦術を学ぶ事になった。

 正直、俺たちの方がどれだけ益になるか知れない程に得をしている。

 彼の戦略も戦術も、学べば学ぶほどに驚愕せずにはいられない程に優れていた。常軌を逸しているとすら評しても過言じゃあない。

 おかげで、俺たちの戦いの幅も大きく広げる事が出来た。

 戦略や戦術が戦いにおいていかに重要かを今更ながら改めて実感した。


 一方のケレスも、教えた魔力と闘気の修練法を実践する事で飛躍的にその力を増していっている。

 あの様子だと、数か月後には確実にSランクに至っているだろう。

 ケレス自身も驚いているらしいけれども、何よりも周りがドン引きするぐらい驚愕している。まあそれはそうだろう。今更になって飛躍的な成長を更にするとか、どんだけなんだという話だ。

 成長の様子を見れば、Sランクに至るのも確実だし、周りとしてはもう引き攣った笑顔で見守るしかないだろう。


 そんな風に、互いに高め合う形で修練を積むこと三週間。実に実りある有意義な日々だった。

 だけど、流石にそろそろこの国に来た目的を果たすべきだろう。

 実質的に最早、完全にケレスに会いに来たのが目的になっているけれども、一応は十万年前の遺跡の調査に来たのだ。

 そんな訳で、ケレスの方は勝手に成長していくし、俺たちも彼から一通りの戦略や戦術を学び終えた所で遺跡に向かう事にする。


「また、魔域に埋もれているのですね」


 アレッサの言う通り、このアーミィッシュの遺跡も今は魔域の中に埋もれている。


「今回の遺跡は、元々は最前線の基地だったらしいからね」


 ドワーフの国レイザラムでの儀式で立ち寄った、魔域の中にある遺跡と同じだ。

 少しずつ、魔域が拡大して浸食されているというより、一進一退の攻防を繰り広げる結果。元々は魔域であった場所が魔域でなくなり、同じ様に、魔域に呑まれる場所も出たりと、魔域自体の形が変動し続けているのだ。だから、この遺跡にしたって、数万年後には魔域に埋もれてはいなくなるかも知れない。

 

 それと、いうまでもないけれども遺跡の探索にはケレスを連れて来てはいない。

 本人としてはかなり興味があったみたいなんだけれども、一体どんな危険物が眠っているかも判らないような場所に連れて行く訳にはいかない。

 国に仕える箕臼なのだから、遺跡で何があったかは後で報告しなければならないだろう。

 俺たちとしては、場合によっては報告なんてされたら堪ったものじゃないというか、大混乱に陥るのが間違いないと判っているのだから、連れて行く訳にはいかない。


「防衛都市のような場所ね。何が眠っているか怖くて仕方がないわ」

「いや、もう発掘済みの遺跡だから、何も残っていない可能性も」

「無いわね」


 ミランダはこの遺跡にも何かとんでもない物が残されていると確信している様子。

 実際の所、俺自身もそうだろうなと半ば諦めている。


「さて、遺跡は魔域のこの部分にある。ちょうど良いから実戦訓練をしながら行こうか」


 端末の地図を示して、それぞれ別れて魔物を討伐しながら行くように指示する。遺跡の調査中に魔物が侵入してきても面倒だし。狩り尽す勢いで殲滅するとしよう。

 みんなこの展開になると判っていたのだろう。諦めたようにそれぞれ魔域の中に向かっていく。

 ただし、全員がバラバラにではない。当然だ。ユリィたちはともかく、まだA+ランクのメリアたちに魔域での単独行動は荷が重いというより、単なる自殺行為だ。そんな訳で、Sクラスのユリィたちがサポートにつく形で別れて行動する形になる。その辺りの連携なども既にワザワザ話し合う必要もなく速やかに事項されるレベルにまで互いに信頼しあえている。

 実に良い傾向だ。

 いや、感慨にふけってないで俺も魔物の討伐を始めるとしよう。Sクラス上位の魔物は俺とミランダの担当だ。本当なら、いくら魔域とはいえ、Sクラスの魔物なんて活性化でも起きていなければそうそう出て来るものじゃないんけど、その辺はもう諦めている。俺たちが魔域に入って、正確には俺が魔域には行ってSクラスのお出迎えがないはずがない。

 殲滅するつもりで狩り尽す為に、まずは遺跡のある場所を超えて魔域の中心部付近に向かってみると、早速ワイパーンの群のお出まし。しかも、率いているのはES+のケイオス・ワイパーンだ。

 この引きもどうかと思うのだけども、ケイオス・ワイパーンはそう言えばまだ倒した事がない。つまり食べた事がないし、味もワイパーン系の中で最高との事だ。

 じっくりとローストして薄くスライスしたモノを丼のご飯の上にこれでもかと乗せて、ソースをかけて食べる。ワサビ醤油でも可。

 ワイパーン系はローストが一番合うし、何よりもご飯との相性が抜群だ。巨大な塊をそのまま焼いて、中心部だけを切り出して食べるのも良いが、流石に無駄になる部分が多すぎるし・・・。

 いやまずは倒そう。

 こちらに向かってくるワイパーンの群に、防御障壁を打ち破る魔法とアイン・ソフ・オウルを叩き込み、一気に殲滅する。

 戦闘らしい戦闘にもならない。一方的な虐殺だけども、一気に倒せるのにワザワザ一匹ずつ倒していく理由もないし、そんな時間と労力の無駄をする必要もない。

 全滅させたワイパーンがちに落ちる前に全部回収してしまうと、そこにまた次の魔物が現れる。

 しかも何故かまたSクラス。

 ヘル・ケルベロス。その名の通り、三つの頭を持つ巨大に狼。地獄の番犬。

 閃光の様なブレスを防御障壁で防ぎ、先程と同じように一気に仕留める。

 それにしても、いくら中心部だからと言って、立て続けにSクラスの魔物が現れ過ぎだろう。ケレスが竜騎士団長になった五十年前とは違って、今はそんなに魔域の活動も激しくはないはずなんだけど?

 俺が来たからイキナリ魔物の活動が活発になったとでも?

 冗談のような話だけども、微妙に否定できない所が辛い。とりあえず、ヘル・ケルベロスを回収する暇もなくまた現れたSクラスの魔物を一匹残らず殲滅して行くとしよう。



「アベルさんが最後ですよ。随分と遅かったですね?」


 結局、遺跡のある場所まで辿り着くのに二時間もかかった。あれからもただひたすら待魔物が現れ続け、永遠と討伐を繰り返す事になった。

 結局、討伐したSクラスの魔物は二百を超える。一体どうやったらこんなに湧いて出てこれるんだと問い詰めたくなる数だ。


「何かSクラスの魔物がやたらと出て来てね。まさか二百以上も出て来るとは思わなかったよ」

「あっソッチも、私の方も呆れるくらい湧いて来たわよ」

 

 どうやらミランダの方もかなりのSクラスの魔物が湧いて来たらしい。彼女の方でも百近くを倒したそうだ。


「この短時間で三百か、勘弁して欲しいんだけど、これは一応、ケレスに報告しておいた方が良いな」


 こんな数のSクラスの魔物がいきなり現れるなんて、明らかに異常でしかない。魔域自体に何か起こっている可能性もあるので、遺跡の探索前に端末でケレスに連絡しておいた方が良いだろう。

 まあ、多分俺たちが来たからいきなり現れたとか、そんなオチで、警戒してもこれ以上異常な数のSクラスの魔物が現れたりはしないと思うけど、連絡はしておいた方が良い。


「ええ、、Sクラスが三百。全て討伐しましたけど、まだ現れる可能性もありますから警戒した方が良いでしょう」


 連絡さえしておけば、この後仮な何かあったとしてもケレスならばどうとでも対処できるだろう。 

 そんな訳で報告も終わったので早速、遺跡探索開始だ。

 と言ってても、十万年前の要塞は目の前に悠然と聳えている訳だけど。

 明らかに不自然と言うか、魔域の中に埋もれて十万年も放置されてきた遺跡なのに、その外見は現役の要塞と何ら変わらない。魔域の中に築かれた現役の防衛拠点と言われたら、何の疑いもなくそうなのかと納得してしまうだろう。


「それにしても、話には聞いていたけども、実際に見ると本気で凄いな」


 アーミィッシュの魔域はと深い森林が折り重なっている。その深い森林に囲まれた草原に、高さ二百メートル。建物の大きさは一万平方メートルを超える要塞が鎮座している。

 これが十万年も前に遺棄されて、もう使われていない要塞だと一体誰が信じるだろう。


「ケレスとしては、これが使えるようなら使いたいらしいけど、流石に明け渡すのもどうかと思うわよね」


 俺ならば遺跡のロックを外して中に入れるし、要塞のシステムを稼働させて使えるようにするのも可能だけども、正直、要塞事態にどんな機能がついているかも判らないし、迂闊に明け渡しでもしたらどんな事になるか判らない。


「とりあえず、はやくロックを外して中に入ろうか」


 実の所、別に俺がやらなくてもサナとザッシュなら、日本語で書かれたロックの解除が出来るのだけど、ここで迂闊にそんな事をしてしまうと、二人も俺と同じで日本語が、ネーゼリアでは未知の言語が解るのがバレてしまうので、今はまだ日本語が解るのは内緒にしてもらっている。


「さてロックは」


 ロックがあるのは正面のメインゲートの開放口。そこに用意されたモニターに映し出されるのは。


「何故に計算式?」

「どうかしましたか?」

「いや、このロックが計算問題だっただけ」


 しかも、数字が漢字で書かれているので微妙に判りずらい。

 まあ、問題自体は、流石に複雑な方程式をよういた難解な数式ではなかったので、すぐに説く事が出来た。


「さてさて、十万年前の要塞化、ジエンドクラスの魔物に対抗する事を前提に造られているんだとしたら、今は完全にオーバースペックだな」

「せめてのも救いは、これが要塞でここから動かない事ね」


 これがもし移動要塞の類だったりしたら、本気でシャレにならない事になる。ヒュペリオンと同じで、下手をすると世界を亡ぼしかねない超絶危険物になってしまう。

 そんな超絶危険物を自分たちの拠点として使ておいて何を言っていると言われそうだが、ヒュペリオンについてはまだ誤魔化しようがいくらでもあるので問題ない。

 て言うか、流石にその性能が知れ渡る危険があったら使わない。

 

「まずは指令室に行ってこの要塞の詳細を把握しようか」

「その前にあそこ、格納庫の様ですけど、何があるか確認しませんか?」


 確かに指令室に行く前に格納庫を確認しておいても良いかも知れない。そこに何があるか次第で、色々とこれからの事も変わって来るし・・・。


「出来れば、ここを発掘した人たちが全て持ち去っていて、何もないと助かるんだけどな」

「まず間違いなく、そう都合よくはいかないと思うけど」


 俺もそう思うよと応えつつ、ダメもとで祈りながら格納庫の扉を開くと、そこには黄金に輝く装機竜人が悠然と存在していた。



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