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8(改修版)

「あの、どう言う事なんですか?」

「どうもこうも、キミたちには俺の弟子になってもらうったことだよ」


 さて、場所をギルドから俺が泊まっているホテルに移して、只今、少女たちを説得中。

 因みに、このホテルだけどもマリーレイラで一番高級なホテルで、しかも一番高いロイヤルはイートだから、一泊10万リーゼもしたりする。

 一泊100万円。うん凄いね。でも、上には上があって、中には一泊で100万リーゼ。1000万円もかかるホテルとかもあるらしいよ。いずれはそんなホテルに泊まる事もあるのかね?

 と話が逸れた。

 あの後、混乱する彼女たちをこのホテルに連れ込んで、いきなりの弟子にする発言の説明をしている訳。

 実は、このホテルに連れ込んだ時点で、既に彼女たちに拒否権はなくなっていたりするんだけどね。その意味では、ほとんど詐欺に近いかも知れない。


「弟子ってどういう事なんですか?」

「そのままの意味さ、俺がキミたちを鍛えて強くする。何時まで一緒かは判らないけど、しばらくは俺と一緒のパーティーを組んでもらうよ」

「だからどうしていきなり。私たち、今日初めて会ったばかりなんですよ?」


 うん。それも当然の疑問だね。

 でも、こういうのは時間とかより直感の方が大事だと思う。


「確かにそうだけど、シーリザードマンを相手にしてのキミたちの行動を見て、人柄は十分に判ったからね。キミたちならば信頼できると思ったんだよ」

「えっと、ありがとうございます」

「キミたちも知っての通り、俺はA+ランクの冒険者だ。それもまだ若い、子どもと言っても良い様な歳のね。その所為で色々と面倒な連中が寄って来て困っていたんだ」

「面倒ですか?」

「そう、俺をカモにしようとか、寄生して甘い汁を吸おうとする連中さ」

「「「「「ああ・・・・・・」」」」」


 どうやら納得してくれたようだ。

 実際、此処の所そんな連長が場合によってはこのホテルにまで押しかけて来て困ってたんだよ。

 これまでは実家にいたから問題なかったんだけども、1人旅を始めたからには、これからは自分でどうにかしないといけない。

 それでどうしようかと考えて、思い付いたのが信頼できそうな冒険者を見付けてハーティーを組むと言う

至極単純なモノ。


「そう言えば、アレッサさんが今ギルドで少し揉め事が起きてるって、その事だったんですね」

「俺としては揉め事を起こすつもりなんてないんだけども、しつこくてね」


 本当に、あの執念はカンベンして欲しい。何度断ってもしつこく言い寄ってくる奴もいるし。


「ですが、それと私たちを弟子にすると言うのとどんな関係が?」

「いや、関係大ありだよ。つまりね。パーティーを組もうと言い寄ってくる相手をどうにかするには、誰かとパーティを組んでしまうのが一番手っ取り早いだろ?」

「それはそうかも知れませんけど」


 俺の説明に呆れたような顔をするメリアたち。


「だから、誰か信頼できる人たちと臨時でパーティーを組めないかって思っていたんだ。それに、弟子の育成の事もあるしね」

「そうです。単にパーティーを組むんじゃなくて、私たちを弟子にして鍛えるって言ってましたよね?」

「うんそう。それがもうひとつの理由」


 これも面倒臭いんだけども、果たすべき義務としてやらざるおえないんだよ。


「俺はA+ランク冒険者。超一流の、人外に片足を突っ込んだ強者だからね。弟子を取って後継者を育てる義務が発生するんだよ」

「そうなんですか?」

「残念ながら事実でね。B-ランク以上の冒険者は、後輩の育成義務があるんだよ」


 これについては、面倒臭いと思うけど同時に仕方がないかとも思う。ヒューマンには500人しかSクラスがいないし、それに準ずるA・Bランクの人外に片足を突っ込んだ実力者の数も、他の種族に比べて極端に少なかったりする。

 そして、これが重要なんだけども、A・Bランクの者は竜騎士として、装機竜人などに乗る事でSクラスと同等の力を発揮する事が出来る。

 要するに、Sクラスの数が極端に少ないヒューマンにとって、A・Bランクの実力者たちは命綱に等しい訳。

 だからこそ、1人でも多くA・Bランクにまで至って欲しいと願うのは当然で、だからこそ、その領域にまで辿り着いた強者には、見込みのある後継者たちにその真髄を教えて、新たなA・Bランク実力者が現れるように促すと言うのは、ある意味で当然。

 実際、魔物の脅威から社会を護り、維持するためには必要不可欠なのだから、俺としてもいなはないのだけど、それを盾にして弟子にしろと迫って来る連中もいたりするから困ったモノなんだよ。


「そもそも、A・Bランクに成れるのは、限られた真に才能のある者だけなんだから、才能のない者をいくら指導しても無駄なんだけどね」

「それは、確かにその通りかもしれませんが、余りにもぶっちゃけ過ぎじゃありませんか」

「確かにそうだけど、その叫んでしまいたくなるくらい疲弊してるって事だよ」


 そもそも、本当にA・Bランクになりたい訳じゃなくて、俺に知被いて甘い汁を吸いたい連中ばかりだと続けると、納得したのか気の毒そうにこちらをみてくる。

 いや、同情して欲しい訳じゃないんだけどね・・・・・・。


「でも、才能が無いならいくら指導しても無駄った言うなら、どうして私たちを弟子にするの?」

「確かにそうですね。甘い汁を吸おうと言い寄ってくる相手を牽制するのには確かに役立つでしょうけど、才能ない者を弟子にしても意味はないのなら、どうして私たちを弟子にすると?」


 アリアとシャリアが心底不思議そうに尋ねてくるけど、逆にその答えは決まっているよね?


「決まっているだろう? キミたちにはA・Bランクに成れるだけの才能があるからだよ」

「はいっ?」

「私たちがですか?」

「何の冗談ですかっ?」

「ありえないっ、でも、そんな嘘をつく理由も・・・・・・」

「私たちがA・Bランクに・・・・・・?」


 当然だけど驚いているね。

 A・Bランクにまで至れるのは、本当に才能を持った真の天才たる一握りの人間だけだからね。

 彼女たちも、自分たちに才能があるのは判っているようだけど、それでも、精々Cランクにまで上がれれば良い方くらいに思っていただろうし。

 

「人間性にも信頼出来て、才能に溢れる後輩を見付けたんだから、弟子にしたいと思うのは当然だよね?」


 俺の方が年下だし、後輩と言うのはどうかとも思うけど、実際に俺はもう何年も前から準冒険者の形だけどギルドに所属して、冒険者として活動していた訳だしね。


「信じられないかな? でもコレは本当だよ。だからこそキミたちをここまで招いたんだ」

「本当なんですね? 正直、とてもじゃないですけど信じられませんけど・・・・・・」

「だろうね。そう簡単に信じられるような話じゃないのは理解しているよ」


 普通、あったばかりの相手に、キミたちは人外に片足つっむレベルの才能を持っているよなんて言われても、信じられる訳がないよね。


「あの、どうしてあったばかりなのにそんな事が判るんですか?」

「それは、実際にAランクまで至る才能の持ち主をこの目で見て来たからだよ。キミたちからはうちの家族と同じ雰囲気を感じる。因みに、うちの家族は全員Aクラスに成っているのは知っているよね?」

「はい、ベルゼリアのレイベスト家は有名ですから」


 まあね。当然だけど、噂を聞きつけて是非ともその秘訣を、秘伝を伝授して欲しいって、或いは師事させてほしいって頼み込んで来る騎士家の人たちが後を断たなくて、仕方がないから、実家では今も、信用できる人を選んで10万年前の転生者が残した修行法を、俺たちと同じメニューをこなさせたりもしているんだよね。結果、レイベスト家はA・Bランク製造機とか言われるようになってたりするんだよ。

 実は、この功績もあって、実家は近い内に公爵家にまで昇爵するのも確実だったりする。


「つまり、私たちがA・Bランクにまでなるのは、レイベスト家のお墨付きて事ですか?」

「そういう事。それと、実はこのホテルに来た時点で、キミたちが俺の弟子になるのは確定しているから、ゴメンね」

「「「「「はっ?」」」」」


 メリアたちはまたしても揃って疑問符を浮かべて、同時に揃って首を傾げる。うん。可愛いね。


「だまし討ちみたいで悪かったけどね。このホテルまで来た時点で、既にキミたちは俺の弟子になるのを承諾した事になっているんだよ」

「それはどういう?」

「あっ!!」


 メリアがまだ混乱している一方で、リリアの方はどうやら察しがついたようだ。

 この2人がメンバーのまとめ役なんだな。メリアだリーダーで、リリアがブレインとなって纏まっている感じかな?


「リリアだったね。キミは気付いたみたいだね」

「気付いても今更どうしようもないけどね。正直、これは卑怯だと思うけど」


 それは確かにそうかもね、だけどもね。


「それについては謝るよ。だけど、俺の弟子になるのはキミたちにとって悪い話じゃない所か、願ってもない話だと思うけど?」

「それは確かに・・・・・・」


 ふっふっふっ。キミたちの事については実はもうちゃんと知らべてあったりするんだよ。

 Eランク冒険者パーティー、セイヴァールージュ。メンバーは同じ孤児院出身の幼い頃からの親友たち。

 冒険者学校を出た後、マリーレイラを拠点に冒険者として活動をはじめて、僅か1年でEランクにまで駆け上がった機体の新人。1年後にはDランクにまで上がっているのも確実と言われている。まさにホープ。

 

 そして、当然だけども順風満帆な彼女たちに嫉妬したり妬む冒険者も少なからずいる。

 それもある意味で仕方がないんだけどね。


「ある意味で、俺の弟子になると言う事は、そんなやっかみや妬みをさらに刺激するけど、同時にどうやったって手出しなんて出来なくもなるよね」


 彼女たちを妬んだり良く思わない冒険者たちの多くは、基本的には同じEランクの者たちだ。彼らは何年もかけてようやくEランクまで辿り着いた。死ぬ思いをしながら必死に戦い続けて、ようやく辿り着いたのがEランク。

 そして、そこでさらに何年も努力し続けているけれどもねその上に辿り着く目途は一向に見えてこない。彼らは、自分たちの才能の限界をイヤと言う程に思い知らされているのだ。

 そんな彼らにとって、メリアたちの才能は眩しすぎる。

 自分たちの努力を嘲笑うかのように、いとも簡単に駆け上がって行く彼女たちを妬まずにはいられないんだ。

 実際には、彼女たちも必死になって努力をしているのだけども、その真実は彼らの目には届かない。

 だからこそ、彼らは妬まずにはいられない。

 才能の差と言うどうやっても越えられない壁が生み出す、ある意味では仕方のない怨嗟。

 だからこそ、俺はメリアたちを嫉む冒険者たちを責めはしない。

 ただ、これ以上彼女たちに何かをさせるつもりも無い。

 それに、本当に警戒するべきなのは、俺に寄って来るのと同じ、相手を利用する事しか考えていない、寄生虫のような連中だ。そう言う輩は、自分の利益のために人を陥れる事すら躊躇いもしない。


「A+ランクが直々にパーティーを組んで鍛えている弟子に何かしてくるなんてありえないからね」

「それは判っています」


 うんそうだね。でも、キミたちもまだ判ってない事があるよ。


「それに、キミたちには一年以内にB-ランク以上になってもらうつもりだから、そうなったらもう、余計なちょっかいをかけて来るのもいなくなるしね」

「はいっ?」

「B-ランクですか?」

「えっとどういう意味ですか?」

「そんなの無理に決まってるっ」

「どういう事?」


 うん。慌ててる。慌ててる。

 普通に考えたらありえないよね。でも、今となってはそう難しくもないんだよ。実家で鍛えた経験があるからね。


「そう驚く事じゃないよ。キミたちにはSランクに成れるだけの才能があるんだから、A・Bランクなんかあっと言うまだよ」

「「「「「はいっ?」」」」」


 ああ、今度は魂が抜けちゃいそうになっているね。

 もう、驚き過ぎてどうしたら良いのか判らなくなっている感じだね。


「何を驚いているんだい。俺が直々に弟子にすると勧誘したんだから、それくらいの才能はむしろ当然だよ」

「何でですかっ!!!。アベルさんだって、まだA+ランクじゃないですかっ!!!?」

「ああその事、実は俺、A+ランクじゃなくて、ES+ランクだから」


 今度こそ完全に理解の限界を超えたのか、少女たちは完全に無言になって固まってしまう。

 おもしろそうだからしばらく様子を見てみようかな?


 そんな訳で様子を見る事にして、1分経過。2分経過。5分経過。10分経過・・・・・・。そろそろ瘴気に戻してあげるとしようか。


「驚くのは当然だけど、これも真実だからね。はい。これがその証拠」


 俺が取り出したのは、ギルドカードではなく市民証。生まれた時に発行される本人堪忍証であるコレには、偽装されたランクではなく本来のランク。ES+ランクとハッキリと表記されている。


「ほっ本当にSクラス・・・・・・」

「えっ、でもどういう事? ギルドカードにはA+ランクて・・・・・・」

「夢なら覚めて欲しいですけど、夢じゃないんですよね・・・・・・」

「同感、もう、一生分驚いた気がする・・・・・・」

「だけど、アベルくんと一緒に居る事になるなら、私たちってこれからも・・・・・・」


 うん。正気に戻っても絶賛大混乱中だね。

 あと、若干気になる発言があった気がするけど、気の所為かな?


「あっ、この事は絶対に秘密だから。バラしたらどうなるか判っているよね?」

 

 そう言うと無言で必死に頷く5人。チョット脅し過ぎたかな?


「Sランクの方に、直接声をかけて頂いたのだから、もう、断る事なんて出来ないですね」

「はじめから、私たちに選択権はなかったんですね」


 それは人聞きが悪いな。いやまあ、実際の所はまさにその通りなんだけどね。


「判りました。改めてよろしくお願いしますアベルさん」


 そう言って深々と頭を下げるメリアは175センチほどで、年齢を考えるとかなりの長身の胸以外はスレンダーな体付きの赤い長髪をポニーテイルの様にまとめた、やや切れ長の同じ色の瞳が、大人びた印象を与える女の子だ。因みに、胸は思わず目が行ってしまうくらいにボリュームがある。今の彼女のランクと同じくらいのサイズがあるんじゃないかな?


「はじめから掌の内だったみたいね。これからよろしくね。アベルさん」


 何処か諦めて様子を見せるリリアは、ショートボブにした銀の髪と、好奇心を抑えきれない翡翠色がボーイッシュな印象を与える女の子だ。こちらはメリアよりやや身長が低い分、彼女よりも女の子らしい体格をしている。でも、胸はメリアと比べると少し控えめかな。


「助けていただいた上に、こんなに私たちを思ってくださって感謝で一杯です。どうぞよろしくお願いします」


 シャリアは長い金色のストレートヘアにおっとりとした印象の大きな青い瞳の、大人し気な女の子。ただし、その瞳にはとても知的な光も浮かんでいるので、多分物事の本質を理解した上で、的確な状況判断が出来るタイプだと思う。身長はリリアと同じくらいかな?


「はあ、はじめからこれじゃあ、これからが思いやられるけど、改めて助けてくれてありがとう。そして、これからよろしくねアベルくん」


 ため息交じりに、何処か諦めたようなエイシャは、肩で切り揃えた紅い髪と蒼い瞳の絵に書いたような文学少女系の女の子。160センチ程とや控えめの身長とプロポーションがその印象を更に高めている。


「これからよろしくねアベルくん。だけど、あまり驚かすのは止めて欲しいよ」


 言うだけ無駄なんだろうけどとばかりに笑ってみせるアリアは、短いブロンズの髪と翠眼の無邪気な笑顔の女の子で、身長が140センチより少し上くらいしかない上、童顔なのもあって俺と同じくらいの年齢にしか見えない。あと、本人の何処までも天真爛漫な人柄も拍車をかけている気がする。


「こちらこそよろしく」


 こうして、初めて訪れた異国の地マリーレイラで、俺は仲間を手にした。

 彼女たちとの繋がりが何時まで続くかは判らないけれども、出来る限り大切にしたいと思う。



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