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シャクティ視点、二回目です。

 ミミール様はこの状況も予想していたのでしょうか?

 既にアベルはレジェンドクラスの魔物とも平然と戦い、打ち倒すようになっているます

 ほんの少しだけども追いつけたと思ったら、何時の間にか信じられないくらい突き放されている。私たちとアベルの実力差は一体どれくらいになってしまったのでしょう?

 もう、考えるのもバカらしいくらいに突き放されてしまったけれども・・・。


 流石のアベルもレジェンドクラスの圧倒的な力を使い切れずに、最初の頃はかなり追い詰められていました。だけど、レジェンドクラスの魔物との死闘が始まって既に二ヶ月。十回近い戦いを経て、力のコントロールももう完璧に近いくらいまで身に付け、Sクラスまでの魔物と戦ってきていた時と、変わらない感じで、気後れする事も無く平然と戦えるようになっている。

 私たちから見たら、もう完全にレジェンドクラスの力を使いこなせる様になっているように思えるけれども、本人からしたらまだまだらしい。肝心の非常事態がまだ終わる気配も見せないのが、そのなりよりの証拠との事。


 とは言っても、もうアベル自身にも十分に余裕があるし、心配も無いと思っていた矢先に現れたのがダーク・ドラゴン。

 言うまでもなくアッシュ・ドラゴンの上位種で、VXランクの魔物。

 同じドラゴンであってもその力はアッシュ・ドラゴンとは比べ物にならない。

 後になって、一番最初のアッシュ・ドラゴンとダーク・ヘビモスとの戦いが生温く思える程にギリギリだったよと振り返る程に凄惨な戦いを経て、どうにか倒せたのは奇跡以外のなにものでもないとの事。

 ミミール様も戦いがを割った後にすぐに駆け付けたけれども、


「出て来てくれないかなと言ったけど、まさか本当に出て来るとはね。キミの運がいいのか悪いのか」


 と呆れられていたみたい。

 それでも、ダーク・ドラゴンを含めて山の様な食材を買って行かれるのは忘れなかったけど・・・。

 正直、それについては私たちもトヤカク言える立場にない。

 私たちも、正確には私たちの父上たちもだけども、せっかくのチャンスを逃す訳にはいかないと、アベルの下を訪れて大量購入していっている。

 ユリィとケイの家族はともかく、まさか、こんな初対面になるとを思いもしなかったと、私の父などは笑っていたけれども、それもどうなんだろうと思う。

 とは言っても、実に五百年ぶりのレジェンドクラスの魔物の素材。しかも、これまでアベルが倒してきたのは全てアタリの、食材として最高のモノばかり。

 私自身も、アッシュ・ドラゴンのステーキを食べて、その味に天に昇るような体験をして、その上、ダーク・ドラゴンの比べ物にならない程に更に至上の味を体験してしまっては、どんな事をしても手に入れたいと思うのも当然なのは誰よりも理解できる。

 せっかく私たちと言う繋がりを持っているのだから、それを最大限活用してレジェンドクラスの魔物の素材を手に入れようとするのは、むしろ王として当然の判断なのも判っている。

 判っているけど、財政は大丈夫なのか不安になるくらいの金額を使っていた気がする・・・。

 だけど、それも当然の事。手に入れる為に私たちとの繋がりを利用はしても、買取に適正料金を支払うのは当然。むしろ、ここで値切ったり或いはただで手に入れようなんてするようなら、それは現実を知らない救い様のない愚か者の証拠。

 

 レジェンドクラスの素材を手に入れたいのは誰でも同じ。だけど、世界中の人がに入れたいと思ってもその総量には限りがあるから不可能。どうやってもごく一部の限られた者しか手に入れられないのが現実。

 だから、誰にでも分け隔てなく分け与えるなんて事はどうやっても出来ないし、その分、手に入れられる側化もシッカリと対価を支払う必要がある。

 そうしなければ、どうしようもない不公平を生んでしまうから・・・。

 だから、実はレジェンドクラスの魔物を倒して、その素材を五百年前ぶりに手に入れたアベルにも相当に責任が課せられていたりする。

 自分の命をとして手に入れた彼には、それをスキにして良い権利があるのだけども、同時に無償で見ず知らずの誰かに与える様な事は出来ない。

 もし、誰か一人に気紛れでそんな事をしたとしたら、その事実は瞬く間に世界中に広がって、自分にもと押し寄せる人々によって暴動が起きるのは目に見えているから、気紛れでも、純粋な善意でも絶対にしてはいけない。


 自分や仲間内で食べる分には構わないのだから、ある意味でそれもアバウトと言えるんだけど・・・。

 私たちも、アベルにこれまで散々食べさせてもらっているし・・・。

 ただし、私たちはアベルの仲間で、弟子になるから問題はないのだけど、それでも弱化区の後ろめたさを感じてしまう。


「本当に、私たちばかりこんな贅沢をしてしまって、少し怖いです」

「まあ、誰かに刺されてもおかしくないくらいの贅沢を、この世界で最高の至福を味わっているのは間違いないから」


 思わず呟くと同じ思いのヒルデが苦笑してきます。

 現実問題として、今の私たちを羨まない人はいないでしょう。アベルの弟子と言うだけで、私たちは最高の至福を思う存分楽しめているのです。


「自分一人で食べるのも味気ないって、私たちにも平気で食べさせる彼が凄すぎるんだけどね」

「それは確かに」


 普通なら考えられないんだけどと続けるクリスに、私たちも激しく同意するしかないのもどうなのでしょう?

 どうして彼はここまで私たちに、仲間に甘いのだろうと不思議で仕方がありません。

 その行為に甘えている私たちにとやかく言う筋合いはないんですけど・・・。


 まあとりあえず、この異常事態ももうすぐ終わりです。

 VXランクのダーク・ドラゴンの出現と言うイレギュラーはあっても、このまま、後数回のレジェンドクラスの魔物の出現をアベルは無事に切り抜け、問題なく終わらせられるハズです。

 サレマで、アベルが気紛れでおかしな事をしない様に見張っておいた方が良い気もするので、私たちはココのところアベルにピッタリだったりするのはどうかとも思うけれど・・・。


 正確には、アベルが何かしないかだけでなく、私たち自身、試行錯誤を続けながら自分の力を使いこなせる様になっていく彼の様子を見ておくべきだと思うからでもあるのだけど、

 ミランダさんも私たちと同じように彼の様子を釘付けで見ているのも同じ理由。

 特に彼女の場合は事態がより深刻。

 彼女は数十年後には確実にレジェンドクラスになっているとミミール様に予言されているので、自分がなった時の為にアベル様子を見て覚えておく必要がある。

 ・・・ついでに、私たちも同じ理由が少しだけある。

 別に実際に私たちがいずれレジェンドクラスになれるなんて思っている訳じゃないけれども、それでも、ほんのわずかな可能性を考えてしまう。

 アベルの弟子になて、私たちもこれまでとは比べ物にならない勢いで強くなってきている。数年後にはES+ランクにまで力を伸ばしているのも確実とまでなると、どうしても、まさかの可能性を考えてしまう。


「実際にこの地獄絵図を目の当たりにして、成りたいとは思わないんですけど」

「こっちの願いなんてある意味関係ないからね」


 別になりたくなくても何時の間にかなってしまう。力を持つ者の宿命と言っても良いもので、そこに個人の意思は一切関係ないのでどうしようもない。


「それに、アベルと一緒に居る時点で常識とか、そんなの一切通用しない気もするし」


 常識的に考えて、数百年から千年に一度、誕生すればいい方のレジェンドクラスの超越者が、そんな数十年や百年程度の短期間に何人も生まれるハズがないのだけど、そんな過去の常識なんて当てにならない気がしてならない。のはどうしてだろう?


「とりあえず、この非常事態もこれ以上の波乱はなく、無事に終わって欲しいけれども、それも願い薄な気がするのはなんでかな」


 またVXランクの魔物が現れるとか、まだこれから波乱が待ち構えている気がしてならないのはどうしてだろう?

 同時に、どんな波乱が、試練が待ち構えていてもアベルならば平然と乗り越えてしまうと何時の間にか確信しているのに気付く。

 なんだろう、信頼とも少し違うこの不思議な確信。

 気が付けば、私自身の中に良く判らない感情が生まれている。


「これまでの傾向からしても、間違いなくこのまま何事もなく終わりはしないよね」

「何があっても不思議じゃないと思えてしまうのもなんでなのかしら」


 多分、ヒルデとクリスの二人も同じ思いを、感覚を持ている。

 それが何かは判らないけれども、決して不快ではない。そんな私たち自身の変化も興味深い。

 やっぱり、無理を通してココに来て良かったと本当に思う。 

 ユリィとケイは割と強引に自分の意志を押し通せたみたいだけど、私たちはアベルの下を訪れるのは簡単じゃなかったのも事実で、割と無理を通して来るのにも随分と時間がかかってしまった。

 最初は、五人そろって一緒に居られるだけで良かったのだけども、今はそれだけじゃなくて、色々な楽しみが満ち溢れている。


「せっかく無理をして来たのだから、もっと私たちを楽しませてくださいね。アベル」


 その全てが、想像を絶するような騒動と共にアベルから始まっているのは確か。

 だから、彼にはもっと私たちに輝く世界を見せて欲しい。



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