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7(改修版)

 まずは、何を置いてもギルドに急ぐ。

 冒険者ギルドは、当然だけども街の中でも魔域に近い、防衛関連の施設、軍の基地や騎士団の駐留所などがある一角にある。

 冒険者ギルドもまた、魔物の脅威と戦う防衛の要のひとつなのだから当然だ。

 俺が転移したのは、そんな防衛施設の集まる一角の、街の外への出入り口付近なのでギルドにはすぐに着く。

 なんでギルドの入り口に転移しないかって?

 そんな目立つ事をする訳がないだろう。それに、非常時でもない限りは転移魔法の扱いにはかなりの制限が付く。

 当然と言えば当然だ。好き勝手に使われたらどんな犯罪も自由自在に出来てしまう。ある意味、下手な攻撃魔法なんかよりもよっぽど危険性の高い魔法なので、相応の制限を設けるのは当然だ。

 いや、今回は非常事態だから、ギルドに直接転移しても良かったんだけどね。それはそれで、何事か緊急事態が起きたと周りに騒がれて、逆に時間を取られてしまう可能性もあったんだよと言い訳しておく。

 とりあえず急いで冒険者ギルドに向かう。

 入口からは1キロ近く離れているんだけど、1分かからずに走り抜ける。

 そのままの勢いでギルドの中に突入すると、当然だけどもギルドにいた人たちの注目が一気に俺たちに集まる。

 メリルたちはその視線を無視して受付に直行するので、俺もそのままついて行く事にする。


「セイヴァー・ルージュの皆さん。どうしたのですか、そんなに慌てて?」

「アレッサさん。非常事態です。EランクハントエリアにDランクのシーリザードマンが出ました」


 その一言で、ギルド全体に緊張が走る。ギルドが管理する狩場、そこに適正レベルを超える魔物が現れるなどあってはならない事だ。


「数は? それと状況を詳しく説明してください」

「数はちょうど30でした。何時も通りに魔物の討伐を終えて、帰ろうとしていた時に海から突然現れました。当然エリア内には他の冒険者も大勢いましたけど、私たちでは全員で挑んでも返り討ちにあうだけなのは判っていましたから、即座に逃げ出したのですが、その隙に何人かやられてしまっていました」

「そうですか、やはり犠牲者は避けられませんでしたか」


 正確には、無防備に逃げ出そうとして魔物にやられた彼らもまだ死んでいなかったけどね。だけど、あの場にいた冒険者の内何人が生きて帰って来れるかは判らない。

 シーリザードマンとアビス・クロコダイルは倒したけど、その後に更に上位の魔物が現れないとも限らないし。


「なんとか体制を立て直し、元々エリア内にいた魔物を一掃しながらこのマリーレイラに逃げ込もうとしたんですが、途中で追いつかれてしまい此処までかと思った所を、アベルくん、いえ、アベルさんに助けていただき、なんとかシーリザードマン討伐する事が出来ました」


「既に討伐されているのですか?」

「はい。ですがその直後に、今度はB+ランクの魔物、アビス・クロコダイルの大軍が現れました」

「「「「「なっ!!!!???」」」」」


 既に討伐されていると規定安心しかかったギルドの空気が、今度こそ完全に凍り付く。

 B+ランクの魔物。それは討伐するのに戦車隊か騎士団の派遣が必要な脅威だ。間違ってもEランクのハントエリアなんかに現れて良い魔物ではない。

 しかも、Eランクまでのハントエリアは当然だけども街のすぐ傍に、何かあった時にすぐに安全地帯に逃げ込めるように設置されている。つまり、この防衛都市マリーレイラのすぐ傍にまで、アビス・クロコダイルの脅威が迫っていると言う事なのだ。すぐにでも迎撃の準備を整えないと、都市内部に被害が及んでしまいかねない。

 そんな非常事態となれば、緊張しない訳がない


「幸い。偶然その場に通りかかった、こちらのA+ランク冒険者のアベルさんによって、アビス・クロコダイルの大軍も討伐されました。しかし、立て続けに高位の魔物が侵入して来るなんて、明らかな異常事態です。それに、これで終わったのかも、他のエリアで同様の事が起きていないかも判りません。すぐに確認を」

「それは・・・・・・」


 また既に討伐されていると聞いても、今度は誰も安心しない。


「つまり魔物の活動が活発化している可能性があると言う事ですね。判りました。ギルド長に連絡し、即座に対策を取らせていただきます。それに、まずは異変が起きたそのエリアを含む全てのエリアの状況確認ですね」


 確かアレッサだったかな? 話を聞き終わった彼女はすぐに他の職員に的確な指示を出して状況確認を始める。

 すぐに全職員が正しく駆けずり回って状況を確認して行く。

 冒険者ギルドの責任者であるギルド長に異変が伝えられ、同時に判明した各エリアの状況がどんどん報告されていく。 

 どうやら、懸念したように異変は他のエリアでも同様に起きていたようだ。

 状況の確認が取れると、確認された情報がそのまま騎士団や軍本部、この防衛都市の防衛本部に伝えられていく。

 同時に、防衛本部から王都に連絡が行き、他の防衛都市でも同様の異常が起きていないかの確認が行われていく。

 結果は、全ての防衛都市で同様の異変が確認されたとの事。

 即座に異常事態宣言が発動され、防衛体制が取られる。

 そうやって状況確認と防衛体制の構築が進む中で、まだ戻って来ていない冒険者たちの救出作戦が開始される。

 高位の冒険者による救出作戦。

 当然の様に俺も参加を要請され、そのまま救出に無う事になる。

 だけども、救出に向かうべき範囲が広すぎるし、実力差があり過ぎる魔物を相手に防戦一方でも持ちこたえるなんてまず無理だ。格上の魔物に遭遇してしまった時点で死亡は確定。 

 結局、救出できたのは半数にも満たず、蘇生可能な遺体を何とか2000人分ほど回収できたが、今回の1件で、Eランクまでの冒険者を中心に総勢1200人の死者が出た。


「いったい何が起きているんでしょう。こんな異常事態はじめてです」

「まあ、予想は出来るけど、出来れば当たって欲しくないかな。それより、まだ討伐報酬の換金と魔物の素材の買取をしてもらってないんじゃないかな? とりあえず落ち着いたみたいだし、今の内にしておけば?」

「あっそうですね。でも、本当にシーリザードマンの素材を私たちが売ってしまって良いんですか?」

「さっきも言ったけど、倒したのはキミたちだからね。それに俺はアビス・クロコダイルの素材を回収してるし、気にしなくて良いよ」

「そうですか、それじゃあ遠慮なく」


 そう嬉しそうに笑うと討伐報告の受付に向かうので、ついでに俺も討伐報告を終えてしまおうとついて行く。


「今日の魔物の討伐確認をお願いします」

「はい。ではギルドカードをお出しください」


 メリアたちはギルドカードを差し出し。受け取った職員がギルドカードに記載された今日の魔物の討伐記憶を確認して行く。


「これは、E+ランクの貴方たちが、シーリザードマンを討伐されたのですか?」

「はい。でもこちらのアベルさんに助けていただいてですよ」

「こちらの子にですか?」


 明らかに年下の俺に助けてもらったと言われて、不思議そうに首を傾げる職員。どうやら、彼女は俺がA+ランクだと知らないみたいだ。


「俺の分の討伐確認もよろしく。ギルドカードを見てもらえれば納得してもらえると思うよ」

「はあ?」


 苦笑してギルドカードを差し出すと、どういう事だろうと不思議そうに受け取り、次の瞬間、驚愕して座った状態からⅠメートル近く飛び上がる。

 うん。なんとも冗談みたいな光景だね。

 マンガとかで良くあるけど、実際にはまず不可能なんだけど、この世界だと出来たりするんだよね。


「アベル・ユーリア・レイベスト。A+ランク。あのレイベスト家の方ですか・・・・・・」


 代々Dランク、精々Cランクになればいい方の弱小一門が、何時の間にか家族全員Aランク以上の尖鋭になっていたんだ、実のところ注目されない訳がなくて、こうして隣国にまで噂が広がっていたりする。

 とりあえず、俺が手を貸したと言う事で納得したらしく、メリルたちと俺の魔物の討伐確認を済ませて、討伐報酬を用意する。


「はい、こちらがセイヴァールージュの皆さんとアベルさんの討伐報酬です。確認してください」

「えっこんなに?」


 提示された金額を見て、メリルたちはみんなして驚いている。

 まあ、確実にいつもより桁が1つ多いからだろう。


「Dランクの魔物の討伐報酬なんだから、Eランクの魔物とはケタが違うのは当然だよ」

「成程そうか・・・・・・」

「此処まで違うんだね」

「納得していただけましたか? それでは、討伐報酬はギルドカードへの振り込みでよろしいでしょうか?」


 まだどこか呆然とした様子のメリアたちに、受付嬢は少しにこやかに問い掛ける。

 どうやら、彼女たちの様子が可愛らしくて仕方が無いようだ。うん。俺も全く同意見だよ。


「あっはい、それでお願いします」

「俺もそれで」


 因みに、冒険者ギルドの物に係わらず、どのギルドのギルドカードも現金を預金できるキャッシュカードのような機能が付いていて、ついでに、ほぼすべての店でカードで直接買い物が出来るようになっている。と言うか、むしろ現金での買い物の方が珍しいだろう。


「さてと、それじゃあ次は、素材を買い取ってもらおうか」

「そうですね。討伐報酬でこの額だと、素材はいくらになるんでしょう?」

「シーリザードマンは人型の魔物だから、素材の値段は他の魔物に比べて大した事ないと思うけど」

「それでも、今までとは比べ物にならない金額になりそう」

「怖いような少し楽しみなような」

「とりあえず、買取カウンターに行こうよ」


 何か楽しく会話をしながら買取カウンターに行ったら、周りから注目されていたよ。

 まあ、メリアたち五人はみんな美少女だからね。

 ・・・・・・ついでに言うと、非常に不本意ながら俺も見た目は美少女にしか見えないし。


「買取をお願いします」


 因みに、これは何処のギルドでも同じだけども、買取カウンター、正確には買取スペースはギルド本館よりも大きな別館にある。

 魔物の中には恐ろしく巨大なのもいるからね。Sクラスの魔物になると数十メートル以上とか当り前だし。そんな巨大な魔物の取引をするのだから、大きな建物じゃないとどうにもならない訳だ。


「はい、それでは討伐した魔物を出してください」


 ついでに言えば、討伐した魔物は解体したりしないでそのままここに持ってくるのが基本だ。

 そもそも、常に魔物の脅威に満ちている街の外で、倒した魔物をその場で解体するなんて、単なる自殺行為でしかないし、実際にそんな事をしようものならほぼ確実に魔物に殺される事になる。

 そんな事は割り切っているし、ギルドとしてもそんな危険な真似を冒険者にさせる訳にはいかないので、基本として魔物の解体はギルドの仕事になっている。

 それはともかく、討伐した魔物をマジックバックから取り出していくメリアたち、Eランクの魔物が全部で100匹近くに、シーリザードマンが30匹。かなりの数だ。

 俺の方も、別のカウンターで倒した魔物を出していく。と言っても、ルビー・クラブやアイス・ロブスターは食べる為に確保しておくので、出すのはアビス・クロコダイルとかだけど。

 いや、ワニ肉も食えるらしいからある程度は取っておくけどね。


「これはスゴイ量ですね。少しお時間を頂いてよろしいですか?」

「はい」


 討伐された魔物の状況によって、買取価格は変わってくる。傷の少ない状態の良いものほど、高く売れるし、逆に傷だらけのボロボロの物じゃあ、素材として使えなかったりもするので買取価格は安くなってしまう。

 いかに傷を付けずに魔物を討伐するかが、冒険者としての腕の見せ所って言う訳だ。

 そんな訳で、状態を確認して買取値を決める為に、買取職員が1体1体討伐された魔物の状況を調べている。これも結構大変な仕事だよな。

 まず、最高の状態で討伐された時の買取値を全て覚えておかないといけないし。℃の魔物のどの部分が素材としていくらの値段が突くかも覚えないといけない訳だからな。

 それに、買い取った後には解体して行かないといけない訳だ。それ専用の職員が相当数いるにしても、毎日運び込まれる魔物の数は相当な量になるだろうから、これまた休む暇もなく解体し続ける事になりそうだ。


「確認が終わりました。全て状態が極めて良好なので、この値段で買い取らせていただきます」


 提示された金額はに20万リーゼ。さっきの討伐報酬と合わせておよそ30万リーゼ。日本円で300万円になる訳だから、1日の報酬としては破格だろう。

 

「スゴイ。1日でこんなに稼いだのはじめてだよ」

「まあこんなモノだと思うよ。オーガなら、1匹当たり50万くらいにはなるけど」

「1匹で50万。A・Bランクは次元が違い過ぎるよ」

「そうかな?」

「と言うか、キミの方の買取価格が本当に凄い事になっているし。私たちが1年かけて稼いだ額を余裕で超えているし」


 今日売ったのはアビス・クロコダイルなど凡そ100匹の魔物、中にはA+ランクの魔物も何匹かいたので、買取値は6000万リーゼ。

 うん。一生遊んで暮らしていけるね。

 因みに、勘違いしないように言っておくけど、俺や彼女たちの討伐数は普通の冒険者とはかなりかけ離れている。一般的な冒険者が1日で倒す魔物の数なんて、平均して1人あたり10匹程度だろう。彼女たちは自分とと同ランクの魔物をその倍母仕留めているのだから、その時点で極めて優秀だ。


「高ランク冒険者はこういうものだよ。それに、その分出費も嵩むしね。と言うか、キミたちだってすぐにこうなるよ」

「いえ、私たちには無理ですよ。来年までにはDランクに上がれるんじゃないかって思いますけど、その先なんてとても」

「そこは大丈夫。俺が師としてキミたちを鍛えるからね」

「「「「「はい?」」」」」


 メリアたちは不思議そうに首を傾げてこっちを見るけど、あまいよ。そもそもそのつもりがなかったら、ギルドで報告を終えた時点ではいサヨウナラって別れていたに決まっているでしょ?

 キミたちにはこれから俺の仲間、弟子になってもらうからそのつもりでね。


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