「へぇ......なんで分かったのかね?」
王都ジグワール。
ジグワール王国のお膝元。
ジグワールの34代目国王ワッツ・ペレ・ジグワールが統べる国。
国の象徴は、魔法使いの杖をモチーフにするほどの魔法の先進国。
王都では、一般人や商人でさえ簡易な魔法を使い生活の基盤にしている。
警備隊、王国軍には魔法使いの精鋭が沢山いる。
中でも有名なのが、今、勇者と行動を共にして各国を回っている魔導師テルノート。
『焔』の二つ名をもつ、勇者と同じくらいの別嬪だ。
「な?お前もそう思うだろう?」
そう言って『朝食屋』なんて変わった商売をする店主は、屋台のカウンターに座る男女二組の青年の方へ同意を求める。
「う、うん?そうだな.....まぁ否定はしない」
店主に話しかけられたカオルは、2年振りの米料理を堪能しながら、店主の親父の世間話に相づちを打っていた。
カオルの隣で、箸を使いぼろぼろと落としながら米を食べていたリューネスは、上手くいかないことにイライラしながらカオルの話に口を出す。
「かわいい?あの子が?」
「......否定はしない」
「ふーん.....」
じっと見詰めてくるリューネスの視線から逃れるように顔を反対に逸らすカオル。
「いや、それより、なんでオヤジは朝食時しか店開いてねーんだよ」
「あん?ああ......」
カオルはこの空気を何とかするための手を打った。
カオルの声に、野菜炒めを作っていたオヤジは、作りながら答える。
振るわれるフライパンの下にはオレンジに光る魔方陣。
IHに似ている魔法だろうと検討をつけつつオヤジの話を待つ。
隣で感じていた威圧感が薄れていくのを感じホッとするカオル。
「....確かに、気になるわね?普通なら、昼と夜とかが定食屋でしょう?」
話に乗ってくるリューネス。
やはり気になっているようだ。
リューネスが気になっているのは、別のこともあるが、カオルは気づいていないようだ。
リューネスとカオルの首には奴隷の証である首輪が付けられており、奴隷だけで主人も連れないのは異様な筈である。しかし、カオルとリューネスが主人の証である紋章が、お互いの手に刻まれていることを見た店主は、警戒を解いて座らせてくれたのだ。その際詳しく事情を聞いてこない店主にリューネスは不気味に思っていた。
「ああ、それな.....俺の店これでも儲かってんだが.....」
言い辛いのか、苦笑い気味の店主。
「儲かってるなら、夜もやってくれ!いっぱい来るぞ?」
「カオルが来たいだけじゃないの」
「ああ!!」
「こいつ.....」
キラキラした目で『やってくれ』と訴えるカオルに、オヤジは言う。
「ダメなんだよな、それが、王街では屋台を構えるのには、時間制限てのが付くんだわ」
「交通のじゃまとかが理由か?」
「それもあるが、貴族連中が抱え込んでる店の邪魔をするなってことだな」
「なんだそれ.....あ、いや、俺も邪魔するなとか言われた覚えあるわ」
カオルは勇者をやっていたとき大型魔獣に止めを刺そうとしたとき、お抱え騎士団にじゃまされたことを思い出していた。
同じことを思い出していたのか、割り箸がバキっとなる音が隣で聞こえたが、カオルは無視する。
どうなっているのか容易に想像できるからだ。
この話をしていても、嫌な感情が浮いてくるだけと考えたカオルは話題を再び変える。
「で、オヤジはそれの仕事以外は、何で稼ぐんだ?」
カオルの問いにニヤリと笑うオヤジ。
「情報だよ....元勇者のカオル様よぉ」
カオルの隣でずわっと殺気が膨れるが、カオルが頭に手をおいて宥めた。
「へぇ....なんでわかったのかね?」