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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第5章 新月は無慈悲な夜の王
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【5‐13】 アルカナ【愚者】

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。

【5‐13】  アルカナ【愚者】




 啓介はサタンの顔を見上げながら耳に入った言葉を反復させるように呟く。


「聖人…?」

『“神の加護を受けた人間”という意味ではない。“悪魔の加護を受けた人間”という意味での聖人だ』


 つまり、悪い意味での聖人というわけになる。


『貴様は22人のうちの1人に選ばれたのだ。貴様達の言葉で言う神々の超越者(ゴッド・イーター)の頂点である我々“9人の堕王”に認められたのだ』

「認め…は?」


 啓介は首をかしげる。


『他の超能力者よりも“神に噛み付くことの出来る可能性”を持った超能力者だけに与えられる超能力者の“上位互換”的能力を持った存在を聖人と呼ぶのだ』

「……」


 話のスケールがでかすぎる。


「なんで、俺が…」

『貴様のその“大罪人にすら噛み付く姿勢”、見事であったぞ。…罪にまみれた存在にも神にも牙をむく。…是非とも我々の力となってもらいたいものだな』

「…はぁ」


 サタンは啓介の顔を見ると踵を返す。


『聖人の力は“聖地”と呼ばれる空間か“凶悪な瘴気が渦巻く空間”でしか発揮できない』

「瘴気?」

『超能力者が発する気のようなものだ。レベルが高ければ高いほどに凶悪になる。…そうだな、“最上位能力者(LEVEL7)が4人集まる”ような事態になれば聖人の力は行使できる』


 サタンの姿が景色に馴染むようにして消えていく。


「おい!」

『聖人の力は説明するまでもない。実際に体験してみろ』


 サタンはそう呟くと消え去った。

 それと同時に啓介の脳に激痛が走る。


「うがっ!?」


 啓介が余りの激痛にくらっとする。


「う…ぁ…」


 意識が遠のいていく。


『さぁ、目覚めよ。…【愚者】よ』




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「はぁ…はぁ…」


 鶴神はふらふらとよろけながらも立ち上がった。


「ゴキブリか」


 大和は苛立ち混じりにそう呟くと闇の光弾を鶴神に放つ。


「あ゛あ゛ッ!!」


 鶴神は悲痛な叫び声を挙げて倒れこむ。

 しかし、それでも彼女は立ち上がる。

 傷が修復されていく。


「…もう、ちょっと…」


 鶴神はよろよろと立ち上がる。


「うざってぇえんだよおおおおお!!」


 大和は地面を踏み砕く。

 途端にアスファルトを破って土が盛り上がってきた。

 土は手を形成し、鶴神の身体に纏わりつくと彼女を圧縮し始める。


「うっ…あああっ!!」

「面白くも何ともねぇんだよ!! とっとと死んじまえ!!」

「あ゛あ゛あ゛ッ!!」


 背骨がゴキリと折れる音がした。

 鶴神の身体が力なく倒れる。

 鶴神の身体が地面に落ちる。


「う…ぐ…」

「もうつまんねぇんだよ!!」


 大和は光と闇の光弾を両手に発生させる。

 そして鶴神へとその2つの光弾を投げつける。


「もう…少しで…」

「消えろ!!」


 黒と白の閃光が鶴神を貫く。

 彼女の身体がビクン!と震えて地面に吸い込まれる。

 鶴神は動かない。


「…やっと死んだか。面倒かけさせやがって─」


 大和の言葉はそこで停止した。


「ぐふぁあっ!?」


 大和の口から大量の血が飛び出る。

 いきなりの事態に大和は目を見開きながらも口を押さえる。


「(な、何があったってんだ!?)」


 そこで大和は自身の異変に気づく。


「な、なんだコリャァアアア!?」


 大和の腹部に風穴が開いていたのだ。

 

「(何があった!? 何がどうなって…まさか!)」


 大和は目の前のふらふらと起き上がる少女を睨みつける。



「(コイツ、“肩代わりさせる対象をコントロールした”ってのか!?)」



 鶴神は立ち上がって大和を睨む。


「…面白いじゃねぇか。今までのはずっと能力をコントロールするために実験してたってのか」

「…私の痛み、わかってくれました?」


 鶴神はニヤリと笑う。


「…あぁ、最高だぜ。さいっこうに飛んじまうぜ!!」


 大和は激昂する。


「けどな、こんな傷で俺が死ぬとでも思ってんのか!」

「思ってませんよ…。私じゃ良くて時間稼ぎにしかなれない」


 大和は鶴神をツタで捕まえる。

 そして持ち上げる。


「私はどこまで頑張っても“最強”のアナタには勝てない。悔しいけど事実です」

「遺言はそれだけかッ!!」

「ですけど……私だけじゃなかったら、どうですか?」


 鶴神は大和の双眸を眺める。


「私だけじゃない。…2人が立ち上がってくれたら…3人でなら、勝てるハズです」

「生意気言ってんじゃねぇぞ!!」


 首にかかる力が強くなる。

 鶴神が苦しそうな表情をする。

 しかし、それでも彼女の言葉に“命乞い”はなかった。


「そうですよね…栫さん、啓介さん」



「そうだな」

「そうね」



 大和の後ろから飛んできた電撃が植物の根元を焼く。


「!」


 鶴神を縛っていた植物が死に絶え、鶴神が地面へと落ちる。

 しかし、その鶴神は地面に激突しなかった。


「…悪いけど、諦めの悪さは折り紙つきでね」

「!」


 大和が後ろに振り向く。

 赤いドレスを着た理奈がそこにいた。


「ここまでボコボコにされたんだ。…痛い目見てもらうぜ?」


 大和が正面を向く。

 鶴神を抱きかかえた啓介がそこにいた。


「テメェッ…!!」


 大和は地獄の底から響くような怨嗟の声を絞り出す。

 理奈は右手から電撃を迸らせる。

 啓介は鶴神を抱えたまま大和の正面に立つ。



「大和輪廻。…2回戦と行こうじゃねぇか?」




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