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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第5章 新月は無慈悲な夜の王
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【5‐12】 愚者の目覚め

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。


【5‐12】 愚者の目覚め



「…ん?」


 啓介は目が覚めた。

 目が焼かれそうになるくらいの眩しさに目を覚ましたのだ。


「…ここは?」


 啓介は上半身だけ起こすと辺りを見回す。

 透明な床の上に啓介は倒れていたようだ。

 真下には雲と底が見えない青色の空間が広がっていた。

 啓介は上を見上げる。

 上は宇宙が広がっている。


「どこだよ…!?」


 啓介は動揺して起き上がる。

 自分は先程まで戦っていたはず─


「大和はどうなった!? 鶴神は? 理奈は!?」


 啓介はうろたえて辺りを見回す。

 何もない空間。

 どこまでも透明な床が続く空間。



「…どこだよ、ここは!?」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「…………」


 大和は目を見開いていた。

 緑色の瞳がその人物を捉える。


「テメェッ…!!」


 大和は後ろへと下がる。

 そして啓介の前に立っていた人間の名を呟いた。


「樹神鶴神ッ…!!」

「ぐ…はぁ…」


 鶴神は力なく倒れる。

 腹部に穴が開いている。


「なんでテメェがこんなところにッ!?」


 血が頭に上りすぎていたのか他の人間の接近に大和は気がつけなかったようだ。

 鶴神は口から血をこぼしながら大和の顔を見て呟く。


「私はッ…もう、死んで欲しくない」

「バカじゃねぇのか! テメェは自分の能力を忘れたのか!」


 大和は激昂する。

 一番ムカツク相手を殺せると思った瞬間の邪魔に憤っているのだ。


「…私は人殺し。それは変わらない」

「あぁ…!?」

「……もう、善人面は…やめるッ!」


 鶴神は地面に手を突いてヨロヨロと立つ。

 その瞬間、鶴神の腹部の傷が治っていく。


「…山の中腹にあるホテルで、大勢の人間に触れてきた」

「!」


 鶴神は口からこぼれていた血を拭うと呟く。


「私はもう表の世界には戻れない。…あとは落ちて行くだけ」

「自暴自棄ってか!? ふざけてんじゃねぇぞ!!」


 大和は光の光弾で鶴神を撃つ。

 光弾は鶴神の身体を打ち抜く。

 鶴神は後ろへ吹き飛ぶ。


「…落ちていくんだったら…私はせめて、大切な人だけでも…守ってみせる!」

「防御しかできねぇヤツが何言ってやがる!!」


 大和は鶴神の身体を水の触手で掴む。

 肢体と首に触手は巻きつく。


「…外道だって言われてもいい。最低だと罵られてもいい。けど…この人たちだけは、守る」

「わかってねぇな! そいつらはテメェを騙してんだぜ!?」

「わかってる!」


 鶴神は叫ぶ。


「でも、2人は私を守ってくれた!!」

「!!」


 大和は水の触手を使って鶴神の首と肢体の骨を握り潰す。

 ゴキリッ!と嫌な音が響き、鶴神の身体が触手から抜け落ちる。

 しかし、その傷もすぐに“なかったこと”にされる。


「…皆を守るためなら…他の人間なんてどうなってもいい!!」

「……上等だ。暗部の人間になりきるってんなら手加減は無用だ」


 大和は黒の翼で鶴神を斬る。


「あぁっ!!」


 鶴神は悲鳴を上げて転がる。


「よけねぇのかよ。腐っても超能力者なら動体視力はあんだろ」


 翼を鶴神の背中に突き刺す。


「あああっ!! ぐぅっ…!!」


 鶴神は涙を流す。


「……」


 大和は刺した翼をそのまま動かす。


「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」


 鶴神が悲鳴を上げる。

 大和は啓介をチラっと見る。

 意識はないが、死んでいるわけでもなさそうだ。


「……決めた」

「あああっ!!」


 翼を鶴神の身体から抜く。


「コイツが起きるまでにテメェは殺す」

「ああああああああああッ!!」


 地面から生えてきた植物が鶴神の身体に纏わりつく。

 そしてその植物が鶴神をしめつける。


「い、いやぁ…ッ!!」

「抵抗しねぇなら殺す。しても殺す」


 大和は植物を燃やす。


「熱い!! 熱い!!」

「だったらどうにかしろよ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」


 鶴神が泣き叫ぶ。

 そして炎に包まれていく。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




『教えてやろうか?』

「!」


 啓介は脳内に直接語りかけているような声に振り返る。


「なっ…!!」


 そこには1人の男性が立っていた。

 いや、男性というのは声から判断しただけだ。

 黒いマントに5メートルはあるでろう蝙蝠のような翼。

 そして身長も2メートルを軽く超えている。


『…ここがどこだか教えてやろうと言っているのだ』

「…誰だよ、アンタ」


 啓介は戦闘態勢を取るが、腰に刀がないことに気づき驚く。


『ここは“因果律の間”。お前の生きる世界とは別次元に存在する』

「別次元…誰だよ、アンタ」


 啓介の問いにその男はニヤリと笑みを浮かべて答えた。



『我が名はサタン。地獄の支配者だ』



 啓介は固まる。

 その名前には聞き覚えがあった。

 いや、むしろこの声にも聞き覚えが─


『契約の儀の際に出会ったのを忘れたか』

「…あ、あん時の!?」


 啓介は目の前に佇む男が“サタン”だと知り、驚愕する。


『ふむ、悪くない反応だ。だが、時間がない。用件を手短に済ますぞ』

「用件…?」

『通知だ。貴様へ報告することがある』


 啓介はサタンの顔を見上げる。



『喜べ、貴様は“聖人”へと進化することとなったぞ』



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