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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第5章 新月は無慈悲な夜の王
45/60

【5‐9】  最強VS最弱

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。

【5‐9】  最強VS最弱



「お礼参り…ねぇ」


 大和は表情を歪める。


「中々面白いこと言ってくれるじゃねぇか」


 大和は啓介の顔を見る。

 迷いのない瞳。


「俺が誰だか分かってて喧嘩売りに来たってか?」

「喧嘩なんてガキの遊びじゃねぇよ」


 啓介は左腰に差している日本刀に左手で触れると断言した。



「殺しに来た」



 大和はニヤリと笑みを浮かべる。


第1位(さいきょう)第24位(さいじゃく)が殺せるとでも思ってんのか?」

「思ってる」

「ヒーロー気取りか? 何万人もの犯罪者を殺してきた俺を殺して英雄扱いってか?」


 大和は地面に突き刺している大剣の鍔の部分に肘を立てて体重をかける。


「ヒーローなんて興味ねぇな。第一、俺もお前と同じ暗部に生きる人間。罪のレベルが違うといっても同じクズだ」

「……わからねぇな。俺を殺したいって理由がよ」

「お礼参りだって言ったろ」

「……あぁ、さっきのアマのことか」


 啓介は眉を動かした。


「第17位って聞いてたわりには弱かったな。アイツは能力の使い方を改善すりゃ面白くなるからわざわざ生かしておいてやったんだぜ? 感謝してほしいくらいのレベルだな」

「……」

「俺を殺す為に力をつけてきて…それで俺に無残に殺される。それが一番楽しいからな」


 まぁ心が折れちまったかもしれねぇがな、と大和は付け加える。


「……」


 啓介は目を閉じて息を吐く。

 そして再び目を開く。


「だったらテメェのその楽しみを今から俺が奪ってやる」

「あ?」

「テメェが今ここで“ポッと出の素人”に簡単に殺されるんだよ」

「……」


 大和は鍔に置いていた左手で柄を握る。

 啓介は左手で日本刀の鞘を掴み、右手で柄を握る。


「面白くねぇ冗談だな」

「そうか? 俺にとっては渾身のネタだったんだが」

「芸人に向いてねぇな」

「そうかい。今から死ぬ人間からのアドバイスとして受け取っとくよ」

「……やっぱつまんねぇわ。だから─」

「そうかよ。…わかったから─」


 2人がほぼ同時に動き出す。

 ガキン!と日本刀と大剣がぶつかり合う音が響く。



「「さっさと死ね」」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 啓介は両手で、大和は片手で武器を握っている。

 それで互角の腕力。


「(ッ!!)」


 啓介は後ろにバックステップで後退する。

 そのスキを逃さずに大和は啓介を追撃しようと突っ込む。


「!!」


 大剣の突きを啓介はリンボーダンスのようにして回避するとそのまま足で大剣を蹴り上げる。

 右足で大剣を押さえつけると啓介は左手に持っていた日本刀で大和を横から狙う。

 しかし大和は大剣から手を離して日本刀を後ろへと飛んでかわす。


「うおっ!?」


 大剣の重量に耐え切れず啓介は地面に倒れこむ。


「(なんて重さだよ!?)」


 超能力者へと進化して、筋力が数倍にも成長したにも関わらずこの重さ。

 啓介では両手ですら持ち上げれなかった。

 そしてそこに大和が突っ込んでくる。


「ッ」


 啓介は丸腰の大和を狙って日本刀を振るおうとする。

 しかし大和は日本刀をかわすと右肘で啓介の首を殴りつける。


「ぐえっ!」

「どこの口がほざいたんだ? 俺を殺すって」

「ぐはっ!?」


 大和は左足で啓介のわき腹を蹴りつける。

 啓介はそのまま大きく吹き飛んでいく。

 日本刀が手から離れる。

 展望台の観光用双眼鏡に激突する。

 背中に激痛が走る。


「能力使うレベルでもねぇな」

「ッ」


 大和は大剣で啓介の首を狙って突いてくる。

 啓介は能力を発動する。


「(【身体鉄鎧】(アイアンメイデン)!)」


 両手を使って大剣を受け止める。

 大和はそれを見るとニヤリと見下した笑みで啓介に話しかけた。


「コピー能力か? ソイツは確かゴミのうちの一人が持ってた能力だったハズ」

「ぐっ…」


 今の啓介は大剣を受け止めるだけで精一杯だ。

 一瞬でも気を抜けば腕を弾かれてゲームオーバーになる。


「うおおおおおおおおおおお!!」


 啓介が後ろへと転がって両足で大剣を弾く。

 大和は再び大剣から手を離して距離をとる。

 そのスキに啓介は新たな能力を行使する。


「(【業火大剣】(ブレイズ・ソード)!!)」


 右手から業火が剣の形をして発生する。

 雨にも負けない威力を放っている。


「うおおおおお!!」

「それもか。人の真似しか出来ねぇザコだな」


 大和がそう呟くと右手を掲げた。



「折角だ。能力使って遊んでやるよ」



 大和はそう呟いた。

 その瞬間、大和の身体の回りの水溜りが動き始める。


「火遊びはガキのするモンじゃねぇからな。消してやる」


 大和は啓介を指差す。

 それと同時に大和の足元から大量の水が発生し、1つの集合体となって啓介に襲い掛かる。


「!!」


 啓介は炎の剣を振るって大和に突進する。


「うおおおおおおおおおっ!!」


 炎剣が大和の前で巨大な水の塊とぶつかる。


「!!」

「その能力が最上位能力(LEVEL7)なら互角だったかもな」


 炎剣は圧倒的質量を武器にした水の触手に消化されてしまう。

 水の触手は啓介に襲い掛かる。


「くっ!」


 啓介は左手で向かってくる触手を受け止める。

 しかし触手は啓介の左手に物ともせずに巻きついた。


「!?」

「どうやら同系統の力はコピーできねぇみたいだな。だったら話は早い」


 啓介は左手と右手を触手につかまれた状態で大和を見る。


「水は形を持たない。だから切り落とすこともできやしない。…ヒャハハ、どうだ?」


 啓介は睨みつける。


「気にいらねぇな」


 水の触手が啓介の首を締め上げる。


「がっ!?」


 啓介の身体が宙に浮く。


「苦しんで死んでいけ」

「ぐ、あぁ……」


 目の前の景色がゆがんでいく。


「(探れ…探るんだ…。水の弱点を!)」


 火を倒すなら水。

 雷を倒すなら土。

 どんな属性にも弱点は必ず存在する。


「(水。…水の弱点は……)」


 意識が遠のき始める。

 水の触手なのに締め付けれるなんて反則だ、なんて啓介はぼんやりと思った。


「(やば、い…死ぬ)」

『栂村氏! 水の弱点は土ですぞ!』

「(…りょ、う?)」


 啓介の右耳から声が聞こえてくる。


「(土…なら!!)」


 啓介は気力で能力を発動させる。


「(【土木人形】(ゴーレム・マリア)!!)」


 啓介がそう念じた瞬間、展望台が揺れ始める。


「あ?」


 大和が怪訝な声を出す。

 次の瞬間、大和は信じられないものを目にした。


「へぇ…すげぇじゃねぇか」


 展望台に届くほどの巨大な土で出来た人形(ゴーレム)

 人形(ゴーレム)は巨大な拳を振り下ろした。

 展望台の屋上が破壊される轟音が響いた。


「ぐっ、はぁ、げほっ!!」


 啓介は地面に転がり、咳をする。


「生きてる…!」


 啓介は巨大な穴の開いた地面を見つめる。

 水の触手は完全に消滅していた。


『遅れて申し訳ないでござる!』

「ホントに遅いわ!」

『アリスの再構築をしていたんでござるよ!』


 啓介は人形(ゴーレム)の拳を挙げさせる。

 先程まで鶴神とアリスがいた場所に2人は居ない。


『アリスを再構築させて樹神氏の縄を解かせました』

「グッジョブ!」

『2人は戦闘区域から逃げるように命令しておきました』

「遠慮ナシってか」


 啓介は土埃と煙で見えない場所にいるであろう大和に向かって口を開く。


「来いよ、まだ死んでねぇんだろ?」


 戦いはまだ始まったばかりだ。

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