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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第5章 新月は無慈悲な夜の王
41/60

【5‐5】  人外魔境の覇者

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。

【5‐5】  人外魔境の覇者



『栂村氏、拙者とメアリーの目はリンクしております! 拙者が目の前の隊員のデータを報告するのでそれを活用してくだされ!』


 啓介は自身へと向かってくる3人の隊員を攻撃対象として捕捉する。

 啓介から見て左端の隊員が右手から炎の剣を発生させて啓介に向かって振るってきた。


生田 雄二(いくた ゆうじ)。“炎剣を生み出す能力”【業火大剣】(ブレイズ・ソード)

「うらぁ!!」


 啓介は炎剣を左手で受け止める。

 すると炎剣は一瞬で水風船の様に破裂して消滅してしまった。

 啓介は右手に持っていた日本刀を唖然としている隊員の左胸に突き刺して蹴り飛ばす。


「ッ!?」


 啓介は反射神経で真横からの蹴りを回避する。

 隊員は左手に弓を発生させると右手で矢を生み出して啓介へ向かって放つ。


坂東 香苗(ばんどう かなえ)。“光速の矢を生み出す能力”【光陰矢如】(ライト・フレッキア)

「ッ!!」


 啓介は左手で矢を掴む。

 矢も水風船の如く破裂して消滅した。

 啓介は刀を地面に刺してリボルバーを一瞬で取り出すと隊員に向けて放つ。

 隊員は力なく倒れる。


「気をつけてください。5名が戦闘に参加します」

「ヤバイ!」


 啓介の周りを囲む50人の隊員の中から5人が飛び出してくる。

 その中の大柄な男が地面を砕くように踏みつける。

 途端に地面に地割れが発生した。

 地割れは啓介の元へ一直線に進む。


「うわちっ!」

工藤 晋(くどう すすむ)。“地割れを起こす能力”【大地咆哮】(アース・ロアー)


 刀を抜いて転んで回避した啓介に2人の隊員が能力で攻撃してくる。

 毒の槍と金色に染まった足による蹴りを啓介は地面に寝転がりながら回避する。


四十万 新太郎(しじま しんたろう)。“触れたものを純金に変える能力”【黄金生成】(ゴルケミア)

「チッ!」


 啓介は左手で隊員の金色の足を掴むと引っ張って地面に倒す。

 引っ張る形で起き上がった啓介は隊員の顔面に左手で拳をめり込ませる。


酒井 当麻(さかい とうま)。“毒の槍を生み出す能力”【猛毒乱槍】(ヴェノスピア)


 啓介は頭上から振り下ろされた毒槍を左手で殴り飛ばす。

 毒槍は消滅し、啓介は右手の日本刀で隊員の足を切り落とす。

 起き上がった啓介はサーベルを二刀流で振り回してくる隊員の攻撃を身体を捻って回避する。

 隊員の股間を蹴り上げた啓介は後ろから襲い掛かってくる4人の隊員へと意識を向ける。


楠本 翔子(くすもと しょうこ)。“触れた元素を分解する能力”【元素殺害】(ディシンテグレイト)

「おらぁ!!」


 啓介は右掌を押し付けようとしてきた隊員の右手を左手で掴むと隊員の腹を蹴りつける。

 胃液を吐きながら後ろに居た2人の隊員を巻き込んで吹き飛ばされる。


木村 英一(きむら えいいち)。“身体を鉄に変える能力”【身体鉄鎧】(アイアンメイデン)

「ちっ!」


 啓介は鉄の拳をかわすと左手で隊員の顔面を掴み、日本刀を腹に突き刺す。

 左手が触れている間は能力を吸い取っているので隊員は能力が使えずに絶命する。

 啓介は崩れ落ちた隊員の後ろからミサイルが飛来したことを咄嗟に察知すると右に飛び込んでミサイルを回避する。


「うわああ!!」


 ミサイルの爆発に啓介は2メートルほど吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す。

 それと同時に隊員たちが襲い掛かってくる。


谷口 勇(たにぐち いさお)。“粉塵爆発を起こす能力”【粉塵爆発】(スキンティッラ)


 辺りを舞う赤い粉が一瞬で爆発する。

 啓介は爆発の間をすり抜けて隊員の懐へ飛び込むと左肘で腹を殴って顔面を横に斬る。

 それと同時に啓介の足元に黒い液体が地面から這い出て啓介の足を掴む。


「!!」


 身動きが取れなくなった啓介に隊員が3人突っ込む。


佐久間 栄治(さくま えいじ)。“コンクリートを操る能力”【舗装練成】(カスケィブル)


 啓介は左手で足に纏わりついたコンクリートを触る。

 コンクリートは水の様に溶けて消滅する。

 そして啓介に拳が飛んでくる。


「くっ!!」

綾瀬 真央(あやせ まお)。“触れたものを腐らせる能力”【腐食ノ手】(モールド・ハンド)


 啓介は間一髪で回避すると左手で隊員の腕を掴み、刀を地面に突き刺してリボルバーを取り出す。

 リボルバーの銃口を口の中に突っ込んで引き金を引いた啓介はバックステップでその場から離れる。

 啓介の居た場所に別の隊員の蹴りが飛んで来た。


野久保 千尋(のくぼ ちひろ)。“触れた相手を焼死させる能力”【火葬職人】(クリメイター)

「おらっ!」


 啓介はもう一度飛んできたけりを左手でガードすると弾切れになったリボルバーを投げつけて怯ませる。

 そのまま足を引っ張って右手で顔面を殴る。

 隊員を倒すと啓介は刺している日本刀を引き抜く。

 そのまま後ろから襲ってきた隊員を日本刀の柄で腹に突き刺す。

 サーベル攻撃をステップして回避すると日本刀を隊員の首に突き刺す。


内村 信二(うちむら しんじ)。“眠りを妨げる能力”【睡眠妨害】(スリープ・ディバイド)

「うらぁっ!」


 左手で隊員の鼻を殴って圧し折ると右足で足を引っ掛けて転ばせる。

 転んだ隊員の腹に日本刀を突き刺すと啓介は手を離して上から降ってくる落下物を両手で受け止める。


小池 佳奈美(こいけ かなみ)。“触れたものを爆弾にする能力”【沈黙魚雷】(トルペテオ)


 啓介に降ってきた巨大な瓦礫は一瞬で砂の様に崩壊し、砕け散る。

 日本刀を引き抜いた啓介は目の前から向かってくる隊員に集中する。


萩原 理修(はぎわら りしゅう)。“幻影を生み出す能力”【幻影地帯】(ミラージュ・エリア)


 啓介は2人に分身した隊員の右側を左手で殴る。

 しかしそちらが分身だったようで、隊員はガラスの様に砕け散った。


「!!」


 啓介は本物の隊員からの太刀攻撃を紙一重で回避する。

 頬から血が流れる。

 啓介は日本刀を掴みなおすと隊員目掛けて振るう。


「!」


 しかし、日本刀はいきなり刃の部分が破裂し、粉々になってしまう。


「なっ…!?」

松本 修二(まつもと しゅうじ)。“物の目を潰す能力”【奇妖貧乏】(ニンブレイジ)


 混乱する啓介だったが、凌の声で冷静さを取り戻すと目の前の隊員の奥にいる笑っている隊員を見る。


「(アイツか!)」


 啓介は太刀の突きをかわすと目の前の隊員を回し蹴りで吹き飛ばす。


「うおおおおおお!!」


 啓介は刀を潰した隊員へと突進する。

 それと同時に四方八方から銃声が響く。


「お任せください」

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 メアリーがボソリと呟くと啓介の周りに健康に悪そうな青白い壁が展開され、全ての銃弾を弾く。

 隊員たちが驚愕に襲われると同時に啓介は笑っていた隊員の目の前までたどり着いた。


「弁償しろやコラァアアアアアア!!」


 啓介の左ストレートは隊員の頭蓋骨を凹ませた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ぐ…ぐそ…」

「どこに行ったのやら…」


 理奈は息を整えていた。

 理奈の足元では血塗れの隊員が恨めしそうな声をあげていた。


「真鍋には繋がらないし…」

「お、おぼえで…ろ…」

「うっさい」

「ぎゃ!!」


 理奈は日本刀を隊員のうなじに突き立てて永遠に黙らせると辺りを見回す。

 

「(市街地のあちこちで爆発が発生している。啓介があちこちに逃げ回ったせいね)」


 一直線に逃げてくれたならまだ追いかけやすかったのだが、これでは何処に逃げたのかがわからない。

 理奈は裏通りにあるバーの扉を開けて後にする。


「なんでバーに神仙組が10人もいたのやら…」

「くそっ! くそっ!」


 理奈は呟きながら目の前で振り下ろされる日本刀の攻撃をかわす。

 隊員がバケモノを見るような目で理奈を見て必死に刀を振っている。


「サボり? いや…でも」

「なんで当たらないんだよぉ!?」

「ちっ」

「ぎゃあああああ!」


 理奈は隊員の顔面を掴むと一瞬で黒焦げに仕立て上げる。

 黒焦げの死体は力なく倒れる。


「…ともかく、あの子は啓介に任せているし…私は街にいる残党を消すか」


 理奈がホテルを出てから現在までに帝都・長崎では“緊急事態宣言”が発令され、民間人は全員が建物や自宅へと避難している。

 理奈は町の外に出ている人間を片っ端から攻撃して始末しているのだ。


「(ホテル内部で100人近くは撃墜。外周や都市部で60人撃墜。…啓介に50人~100人が回っていると考えるならば残りは40人ちょっと)」


 理奈は裏通りから出ると走り出す。

 街は異様なほどに静まり返っている。

 乗り捨てられた車や誰も利用者が居ないのに点滅している信号機は理奈に何ともいえぬ肌寒さを感じさせた。


「…雲行きが、怪しくなって来たわね。…ん?」


 理奈は立ち止まって耳を澄ます。

 どこかで喧騒が聞こえるようだ。


「(銃声が聞こえる。…神仙組の可能性が高い。でも何処で? …ここから東。…山の方?)」


 理奈は振り返って坂の上を見る。

 あちらの方から音が聞こえているようだ。


「(…電磁レーダーでは20人近くの塊が1人…と何かを追いかけている?)」


 理奈はそこで理解し、走り出す。

 坂を全速力で走りぬける。

 しかし、思うようにスピードが出ないのでハイヒールを途中で脱ぎ捨てた。


「間違いない!」


 徐々に音が近くなる。

 理奈は坂を上り終えると交差点の右側を見る。

 都市中央部と繋がる道を1人の人間が走っていた。


「はぁ…はぁ…!!」

「大丈夫!?」


 理奈は走り出す。

 それと同時に足に電気を流して身体能力を強化させる。


「うおおおおおお!!」


 鶴神の後ろから追いかけてきていた神仙組の集団に理奈は奇襲を仕掛ける。


「う、うわあああああ!!」

「ひいいいいいい!!」

「砕け散れぇえ!!」


 理奈は抜刀した日本刀に電気を流して雷剣を生み出すと隊員達にソードビームの様に斬撃を放った。


「ぎゃあああああああああああああ!」


 隊員達は雷の速度に対応することが出来ずに灰へと変貌していく。

 理奈は虫ケラを眺めるような瞳で隊員達を見届けると鶴神のほうを振り向く。


「大丈夫? 怪我は?」


 理奈はへたり込んでいる鶴神の前でしゃがんで鶴神の身体をあちこち見回す。


「だ、大丈夫です。で、でも…ド、ドレス?」

「これは諸事情で…。って啓介は?」


 理奈が啓介の行方を尋ねると鶴神がハッとして理奈に大声で答えた。


「栂村さんが!!」

「啓介が?」

「い、今街の方で…大勢の人相手に1人で戦って…!!」

「大勢?」


 それは不味い、と理奈は考えるとへたり込んでいる鶴神を置いて立ち上がる。


「アリス、この子をお願いできる?」

「栂村様とマスターよりそう命令されています」

「そっ。なら頼めるかしら? 私は啓介の援護に行くから─」


 理奈は日本刀を仕舞うと鶴神が走ってきた道を指差す。


「しかし、残党は未だにいます。私だけで樹神様を守護できる確率は10%ですが」

「大丈夫。多分、啓介が戦っているヤツが最後のゴミ掃除になると思うからそれまでは展望台に避難して─」



「ほぉ、ゴミ掃除かぁ」



 理奈が言葉を言い終える前に後ろから声が聞こえてきた。

 理奈は言葉を止めて音のした方向に振り向く。

 コツコツと靴の音が聞こえる。


「こんな夜分にまでゴミ掃除とは、善良な一般市民の鏡だなぁオイ」


 理奈は冷徹な顔になる。

 こんな時間に、“非常事態宣言”が発令されているこの時間に、一般人が歩いているわけが無い。


「…誰?」

「あぁん? 俺はお前の言うゴミの一部だよ」

「あっそう」


 理奈は鍔に触れると何時でも抜刀できるように構える。


「悪いけど、消し炭にされたくないのなら黙ってひき肉になってくれないかしら?」

「どちらにしろ死ねってか? 頭イカれてやがんなぁ」


 声からして男。

 しかし、暗闇でイマイチ姿が確認できない。


「(ま、レーダーがあるから大丈夫なんだけど)」

「これだから”人外魔境の住人(LEVEL7)はバケモノ扱いさちまうんだな」

「ウッサイわね。他人が私達(LEVEL7)をどう思おうが勝手よ」

「ほぉ…第17位は噂よりも威勢がいいじゃねぇか」


 鶴神は怯えている。

 理奈は警戒レベルを引き上げる。


「復讐にしか目が向かない哀れな子羊。…それが今じゃ愛する人間を守るために戦うバケモノってか? 脚本にしちゃ落第点レベルだな」

「……」


 男の足音が大きくなる。


「決めたわ。アンタは今此処で道のシミにしてやる」

「舐めた口叩くなよ、三下が」


 空からゴロゴロと音が聞こえる。

 そして男の姿はチカチカと光る街頭に照らされて理奈の目に映った。



「俺は大和 輪廻(やまと りんね)。神仙組の6番隊隊員にして、暗部じゃそうだな…”人外魔境の覇者(さいきょう)って呼ばれてるんだわ」



「なっ……!?」


 理奈の全身が固まる。

 氷漬けになるよりも冷たい気持ち悪い感覚が全身を駆け巡る。


「第1位…!?」

「いいねぇ、その表情。…ヒヒッ、ヒヒヒ…」


 男─大和輪廻は両手を広げて空を仰ぎながら狂気に包まれた笑みを見せた。



「ヒャハハハハハハハハハハハ!!」



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