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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第2章 私の愛した幼馴染
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【2‐1】  再びやって来る

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。



【2‐1】  再びやって来る



 5月4日。

 非日常はひょんなことから舞い降りてきた。



「中華料理が食べてみたい」



 自宅のリビングで学校生活の疲れを癒すために思う存分だらけていた自称・性格以外はマトモな高校生である栂村啓介(んがむらけいすけ)に彼のパートナー(決して恋愛的な意味ではない)のアリエルはこう言った。


「…はぁ?」


 突然何を言い出すのだろうかと啓介は隣に座っていた外見超絶美少女のアリエルを眺める。

 今、テレビの番組で中華料理が特集されているが…それに影響されたのだろうか?


「いきなりどうしたんだよ?」

「中華料理とやらが食べてみたい」

「いや、それはわかった。俺が聞きたいのは理由だ」

「テレビで特集されていたから」

「…短絡的過ぎる」


 啓介はここ一ヶ月の間の食事を思い出す。

 超能力者になったことで脳の性能と回転率が人間時代に比べて大きく飛躍したこともあってか全部思い出せた。


「確かに、和食と洋食ばかりで中華料理は一度も食べてはいないな」

「デスヨネー。だから私は食べてみたいの。ドゥーユーアンダスタン?」


 地味にイラっと来る英語の発音だったが、啓介は何も言わなかった。


「じゃ、明日中華料理でも食べに行くか」


 十年以上独りで暮らしてきた啓介であったが、料理は得意ではない。

 人に振舞えるレベルのものを作ることが出来るだけであり、料理に対するこだわりも興味もいまいち存在しない。

 決してよくアニメやマンガの主人公などが持っているような家事スキルを有しているわけではないのだ。

 だから啓介は自身があまり食べたいと思わない料理は作ることが出来ない。

 中華料理はその部類に当てはまる。


「えー…明日ぁー?」


 アリエルが不満そうな声をあげるが啓介は溜息を突いて状況を説明する。


「あのなぁ…。今の時間を考えてみろバカ。現在の時間は午後八時三十七分。さっき夕食も風呂も終わってあとは寝るだけだ。…今から店に行くつもりか?」


 ぐっ、っと声を詰まらせるアリエルに啓介は追い討ちをかける。


「だいたい食ってばかりだと太るぞ。俺のパートナーがピザだとか勘弁願いたい。だから中華料理は明日な。Do you understand?」


 アリエルに比べて無駄に綺麗な発音かつドヤ顔で啓介は言い返す。

 中学時代の三年間、英語を専攻していただけのことはあった。

 アリエルはうーっと不満そうに唸るがハッとすると左手を顎に当てて何かを考え込む。


「そうだね…そうだねそうだね」

「?」

「明日、啓介はこのテレビに出てる場所に中華料理を食べに連れて行ってくれると」

「は?」


 啓介が口を開けて唖然とする。


「今からこの場所に行くには距離があるし、何よりもお店が閉まってるからね。うん、啓介って相変わらず優しいね」


 何というポジティブな思考回路。

 啓介は嬉しそうなアリエルの笑みに一瞬だけ詰まるが直ぐに反論を開始する。


「待て待て待て!テレビに映ってる場所がどこだかわかってんのか!?神戸だぞ神戸!日本国の近畿地方にある兵庫県の県庁所在地だぞ!?そして俺達の住んでいるここが何処だかわかってんのか!?」

「日本国の四国地方にある徳島県の県庁所在地である徳島市だよね?」

「わかってんじゃねーか!わかってて言うとかお前マジ鬼畜!」

「大丈夫だよー。距離にして百キロメートルだよ?全然大丈夫。一時間とちょっとで着くでしょ」

「距離なんざどーでもいいんだよ!金だよ金!」

「大丈夫なんじゃないの?数日前にお兄さんからお金が振り込まれたんでしょ?」

「バカか!?一か月分の生活費だよ!」

「でも一昨日お兄さんから『ゴールデンウィークに友達や彼女と思う存分に遊べる分のお金を振り込んでおいた』って電話来てたよね?」

「なんで知ってやがる!?あの時、俺は一階のリビングにいてお前は二階の俺の部屋にいただろ!?」


 神々の超越者(ゴッド・イーター)は地獄耳がデフォなのかと啓介は戦慄する。

 アリエルは嬉しさを隠さずに言い続ける。


「啓介って日頃から友達いないじゃない?」

「何で知ってんの!?俺言ったっけ?」

「いや、私が千里眼で啓介の学校生活覗いてるの」

「ストーカーかよ!?いくらパートナーでもやって良いコトとダメなコトってあると思うよ!?」


 確かにアリエルくらい美少女なストーカーだったら大歓迎だが、と啓介は思う(ただし人間限定で)。


「だって他にすることないし」

「イヤイヤイヤ!この前ゲーム買ってあげたじゃん?」

「クリアした。主人公達のレベルも限界まで上げて道具も全部ゲットして裏ダンのラスボスも撃破した」

「すげぇ!とんでもないゲーマーだよこの子!」

「まぁ、とにかく啓介は友達いないんだからさ…」

「……(アリエルに友達いないって言われるのもツライな)」


 ちなみに啓介は友達が出来ないんじゃなくて友達を作らないだけだと考えている(本当かどうかはわからない)。


「か、彼女といけばいいじゃない?」


 アリエルが両手の指でもじもじとしながら恥ずかしそうに啓介に言う。


「お前、数刻前に俺に『彼女いない』って発言したよね?俺をそんなに苛めて楽しい?」


 彼女が出来ないという懸案に関しては啓介は『彼女を作らないんじゃなくて彼女が出来る程のツラではない』と考えているので既に半分諦めている。


「(なんで不細工なのに生きてるのかだって?そりゃお前…配られたカードで勝負するしかねぇだろが!)」


 誰に言ってるのかわからないが啓介は心の中で吼えた。

 まぁ『整形』というイカサマもあるので彼女を作ることは可能といえば可能なのだが。


「け、啓介は何を言ってるのかな?私、そんなコト言ったっけ?」

「言ったよ!」


 アリエルは頬を少し赤く染めて啓介に尋ね返す。


「で、でもさほら…か、彼女ってパートナーと同義じゃん?パートナーといえば二人組で、彼氏彼女の関係も二人組!パートナーもカップルも同義だし、大丈夫じゃない?勿論、私は恋愛感情的な意味で啓介が好きだと言っている訳ではないからね?変な勘違いはダメだよ?私達は清く美しく正しいパートナーとして付き合っていくんだから!」

「(何を言っているんだろうかこの人は)」

「彼氏彼女の関係をカップルと言うでしょ?カップルって元々はフランス語の『結びつき』っていう意味の言葉から来てるじゃない?それで『結びつき』といえば同義語で『繋がり』『絆』『腐れ縁』『相関』『関係』とかあるじゃん?パートナーっていう関係だって十分に意味は同じだよ!?だ、だから…私が彼女になってもいいんじゃないんでしょうか!?」


 最後の方は敬語かつヤケクソ気味に言い放っていた。


「ちょっと待て。お前は俺をどうしたいと?」

「だ、だからわ、わ、わ、私の彼氏になりませんかね!?」


 アリエルは赤面で叫ぶ。


「仮に俺とお前が彼氏彼女の関係になったとしても神戸に中華料理を食べに行くということに関して何のつながりも無い気がするんですけれど」

「か、か、彼女連れで神戸に行けますよ!?」

「イヤ、お前の姿…他人に見えないじゃん」


 傍から見れば只の妄想彼女と歩いているだけである。

 うわ、痛々しい。

 まだ最近売れている恋愛シュミレーションゲームを持ち歩くほうがマシである。

 …いや、そっちも同じくらいに痛々しい。


「言ってなかったけど、契約後の神々の超越者(ゴッド・イーター)って自在に姿のオンオフが可能になるんですよ?」

「マジで!?」


 確かにそれならアリエルは外見だけは今世紀トップクラスの美少女(しかし中身は怪物かつ精神年齢は憶測だが数千歳)なので連れて歩くとこの世の我が同胞(モテないおとこたち)永遠の怨敵(イケメンども)の心に再起不能レベルの傷を与えることが出来そうだが、多分ムリだろうと啓介は思った。


「(俺達ってそういう雰囲気出せそうにないだろうし)」


 当事者にはそう感じ取れるらしいが傍観者の目にはどう映るのやら。


「だ、だから如何でしょうか!?」


 アリエルが聞いてくる。


「そうだな…」

「う、うん」

「んー…」

「うん」

「わかった」

「本当に!?」


 驚くアリエル。

 喜びよりも驚愕のほうが少し大きいようにも見える。



「明日、神戸に二人で食いに行くか」



 啓介はアリエルに向かって言い放った。


「……そうか、そうですよね。私って何やってるんだろう。バカ。私ってホントバカ…。冷静に考えたら私達ってそういう関係になったらダメだもんね。別に掟で禁止されているわけじゃないけど、異類婚姻譚なんてゴメンだって啓介言ってたし…。アレ、だったら私が人間になれば解決するんじゃ…いやいや、啓介と私はプラトニックな関係であって……」

「何をボソボソ言ってんの?オマエ」


 待望の中華料理食べに行くってのに何を落ち込んでいるんだと啓介は疑問を抱く。


「いや、食べに行くのは嬉しいんだけどね…。何ていうかちょっと自分の理性の脆さに落ち込んでいただけ」

「ふーん(そういやコイツ、あの学校での戦闘時も理性を失ってたし…結構理論派に見えて実は感情に流されやすいのかもね)」


 啓介は立ち上がるとテレビを消す。


「それじゃ、俺は寝るけど…どうする?」

「ふえっ!?こ、これはまさかの『シャワー浴びてくるから』的な発言の類語!?い、いやでも…私達はプラトニック・ラブな関係であり……あれ、プラトニック・ラブってどういう意味だっけ?ってか私達は友情を築く関係であって……いやでも正直求められたら断れる自信がないというかなんていうか……。いやいや確かにそういった行為は可能といえば可能ですけれど…」

「(一度テンパると連鎖してテンパり続けるみたいだな。しかし何て言ってるかよく聞こえん)」

「いやいやいや。こういう時ってどうするんだっけ?えーっと『不束者ですがよろしくお願いします』だっけ?いやいやアレは嫁入りする時の…って私達結婚も婚約もしてないってば。落ち着け、落ち着け私。私達は健全なお付き合い…じゃなくて健全なパートナー付き合いをしている訳であって…」

「どうすんの?一緒に寝るのか?」


 啓介の自宅に空き部屋は存在していない。

 妹の部屋を勝手にアリエルに使わせるとどうなるのかわかったものではないし、兄や姉の部屋なんてとっくの昔に物置になっていて目を背けたくなるような物量がそこには存在している。

 だから啓介は自分の部屋のベットにアリエルを寝かせて自身は床に布団を敷いて寝るような生活を送っている。


「い、一緒に寝る!?こ、これはやっぱり誘っているとしか…いやでもアレだよね…アレ?アレってなんだっけ?」

「いい加減、話聞いてくれない?」


 啓介は頭が痛くなった。

 夜は更けていく…。


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