百合未満ビアン以下
私の指がふやけるほど触れてやった。甘い顔をして余韻に浸る女は、ただのセフレだった。綺麗な二重と小さな唇。不釣り合いなショートマッシュ。顔以外良いところがない。本当に顔だけは好みだった。
先ほどその女が紡いだ言葉が、薄い縁の糸を断ち切る。
正直、そろそろ付き合いきれなかった。
「ジェンダー、レス?」
「うん。好きな人になら打ち明けられるなぁと思って」
「あそう、じゃもう連絡しないで」
「は?! 私のこと受け入れるって言ったじゃん、は?」
「悪いけどわたしが好きなのは「女」なんだよね。ジェンダーレスならもうキャバもやめたら?」
「いや、それは仕方なく」
「あっそう、男の家に寄生してるくせにビアン名乗るのやめな。バイバイ」
やっぱり付き合いきれないと思った。
私の捨て台詞を肴に、今度はどのバリタチを引っ掛ける気だろう。
部屋を出ようとして、顔を上げた。
好みの顔が泣いている。
「どうしてそんな酷いこと言うの……」
「お前が酷いからだよ、ただのセフレだろ」
「ねえ、やだよ行かないで」
「じゃあ次から私はネコしかやらないけどいい?」
「…………」
「ほら見ろ」
お前はビアンじゃない。お前は「男性器」と「男性ホルモン」が嫌いなだけだ。女性に抱かれる自分が好きなんだろ。
私は別にネコをやりたいわけじゃない。この女が、男の甘い汁啜って、女の良いところだけ食って、しまいには中性のいいとこ取りしようとし始めたから、呆れ果てただけだ。
「最低!」
金切り声を上げて、セフレだった女は枕をぶん投げてくる。私の肩に当たって、重たい枕は落ちた。
「女になったら戻ってきな」
笑って言ってやったら、そいつは呪詛を撒き散らしてきた。
万札一枚をガラステーブルに置いて、扉を閉める。
どうせ明後日には、またこの女から連絡が来るだろう。そして私は返してしまうんだ。
お前が、その顔の女の身体で居続ける限り。




