恐竜大好きヒナタくんと
ニコニコ保育園のヒナタくんは、恐竜が大好きな梅組さんです。
未満児組のころからずっと保育園に通っているので、ヒナタくんの“恐竜好き”は、どの先生もよく知っています。
ヒナタくんは、いつも突然“ティラノサウルス”になります。
チョキにした両手の指をかぎのように曲げて腰のあたりに構え、少しかがんで肩をすぼめ、
「ガオーッ、ティラノサウルスだぞ〜」
と低い声で吠えながら、周りをギロリと見まわし、ドスンドスンと歩きます。
暴れることはないのですが、ノドカちゃんには何のことかさっぱりわかりません。
でも、ヒナタくんの席はノドカちゃんの隣で、ノドカちゃんにとっては“いちばん最初のお友だち”でした。
ある日、ヒナタくんが言いました。
「ノドカちゃん、トリケラトプスになってよ」
「えっ? トリケラトプス?」
ノドカちゃんは、とりあえずチョキにした指をかぎのように曲げてみます。
「違うよ、それティラノだよ! トリケラトプスはこっち!」
ヒナタくんは一生懸命説明しますが、ノドカちゃんにはやっぱりよくわかりません。
その様子に気づいたハルカ先生が、にこっと笑って言いました。
「ヒナタくん、ノドカちゃんはヒナタくんみたいな恐竜博士じゃないから、ちゃんと教えてあげないとわからないよ」
そう言って、恐竜の本を持ってきてくれました。
「これがティラノサウルスで、これがステゴサウルスで…」
ヒナタくんは次々とページをめくりながら、恐竜たちを紹介していきます。
ノドカちゃんは、初めて見る恐竜の絵に目を丸くしていました。
そして本を最後まで読み終えると、まるでティラノサウルスの発作が治まったかのように、
ヒナタくんはぱたりと本を閉じて、おとなしくなりました。
その日をきっかけに、ノドカちゃんも少しだけ恐竜に興味がわき、
ヒナタくんと一緒に恐竜の本を見るようになりました。
数日後のこと。
「ガオーッ、ティラノサウルスだぞ〜!」
梅組の教室には、チョキの指をかぎのように曲げた“二匹のかわいいティラノサウルス”が、ノッシノッシと歩きまわっていました。
ノドカちゃんも、意外と楽しそうです。
ヒナタくんとノドカちゃんが手をつなぐとき、二人はティラノサウルスの指で手をつなぎます。
それは二人だけの、ひみつの恐竜握手でした。
ある日、保育園バスから降りたノドカちゃんは、お母さんと手をつなぐときにもティラノサウルスの指をしました。
「ノドカ、どうしたの? へんなつなぎ方」
お母さんがそう言うと、ノドカちゃんは顔を上げて、
「ガオーッ」
とかわいく吠えました。
お母さんはようやく理解して、笑いながら「ガオー」と返し、
同じようにチョキの指をかぎのように曲げて手をつなぎました。
二人はそのまま、恐竜の親子みたいに歩いて帰りました。
今日も、お父さんが帰ってきたら報告することがひとつ増えました。




