表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

チャプター7.フォーモと客星

ーーーーーーーーーーーー


─── あれから、長い月日が経った。


故郷を離れ、運命の子は旅に出る。


この島国に眠る黄金を狙う

“トツ国”の侵攻から。


人々を守るために…。


ーーーーーーーーーーーー


熊に襲われたあの日から、もう十年は経っただろうか。


江戸の子供たちとすれちがうと、

ふと故郷のことを思い出す。


おらは今、日本中を旅してまわっている。

追い出された訳じゃない。


むしろあれから

村の皆との関係は良くなったぐらいだ。


理由は、まぁ色々ある。



「元気してっかなぁ、じっちゃんやみんな。」


村から旅立とうとした時も

みんな泣きながら止めようとしてくれてたっけ。


特に泣いてたのは…。


初めて”またな”をくれた、あいつの顔を思い出すと

くすりと笑みが溢れていた。



「此処が江戸かぁ。」


初めて足を運んだ江戸の街。


だけど見上げると

あの頃と変わらない青空があった。



「まーた浮かんでるべぇ。」


あの頃とおなじ

雲も”文字”も、そこに変わらずに流れていた。



ん、文字は少し違うような…?


──────────────


がやがやとした喧騒。

瓦屋根の店が並び、絶えず人々が行き交っている。



「んだぁ〜!すっげぇなぁ〜!!」


中央には遠目からでもわかるほど、

立派な城がどんと構えられていた。



「じっちゃんから話には聞いてたがよぉ…。

まさかこんなにでっけぇとはなぁ!」


旅をして色んな景色を見てきた。

でも江戸は規模がちがう。


あちこちに”知らない”が溢れていて、

目が勝手に追いかけてしまう。



『瓦版はまーたトツ国の話かい。

物騒な世の中になったちまったねぇ…。』


『おっちゃん、蕎麦ひとつ、いそいでくれよ!!』


『てやんでい!何処に目をつけてやがんだ!!』


「見たこともねえもんも目一杯だぁ。」


耳を適当に立てるだけでも、なんだか楽しい。

今日の宿を探すついでにふらふらとしてみるかな。


そんな事を考えていると



『それで旅に出た主人公は、

この街で初めてラスボスと戦うのよ、

手も足も出ずに惨敗するんだけどね。』


『oh!因縁作り、と言う奴デスネ!』


読本(しょうせつ)の話だろうか。


特に聞き慣れない言葉が混じった話し声に、

おらはふと視線をそちらへ向けた。



「…でっけ…!!」



── その二人組は、明らかに周りから浮いていた。



周りがまるで子供に見えてしまうほどの身の丈の男

じっちゃんぐらいあるのでは…?


もう一人の女も、横の男には負けるが

五尺一寸(155cm)ぐらいあるだろう。


江戸の町人たちよりも

どっちも頭ひとつやふたつ大きい。



「何食ったらあんなにでかく… ─────。」


驚いたのはでかさだけでは無かった。


黒いぴっちりした着物(スーツ)

ゆったりとした白い着物(ローブ)


見たこともないような

不思議な着物にも目がいったが、それよりも。



「…あの髪。」


数秒もたたず、目に張り付いた。


短く剃りたつ金、風に揺れる長い白。

不思議だけど、綺麗な色だった。


記憶のかぎり髪が黒くない人間を

おらは自分以外にみたことがない。



「ち、ちょっとごめんよ!とおしてくれねえか!」


ぼうっと眺めていると

二人が人混みに消えそうになる。


人の波をぐいぐい押しのけて、慌てて走り出した。



(もしかして、おらとおんなじ?)


おらが旅に出たうちの理由のひとつ



「そこのあんちゃんじょうちゃん!!」


知りたかったことを知れるかもしれない。

無我夢中で手を伸ばす。



「耳をみせてくんねえかぁっ!?

じゃなくて話をちっとだなぁ!!」


けれども、目の前が急に暗くなる。



「んっ!!!」


どんっ、とぶつかっておらは尻餅をついた。



『ってぇな、何処に目ぇつけてあるいてんだ!!』


「…す、すまねぇ…!」


見上げればご立腹の町人

じわりと痛む鼻を抑え、立ち上がった。



『すまねぇで済んだら同心はいらねぇんだ、よ?』


ま、まいったな、さっきの二人組を逃したくは無い。

だが非礼をしっかり詫びないのも良くない。


謝ろうと目をあわせた瞬間

すぐに表情が柔らかく変わるのが見えた。



『ってなんだい、子供かい。』



追いかけなきゃ、謝らな…。



「んだ?」


ごちゃついていた思考が一言で真っ白になる。



『怒鳴って悪かったなぁ。』


「え、いや、おら子供じゃ…!」


『ここいらじゃ見かけない顔だな。迷子かい?』


「迷子じゃねえぞ!子供でもっ!」


『それならいいが、

走り回るならもっと広いとこで遊ぶんだぞ嬢ちゃん。

危ないからな。』


「んだああああっ!!だーかーらーっ!!!!

走り回ってたのはごめんなさい!!!!!」


『はっはっは!素直で良い子だなぁ!

まあ怪我だけはしないように気をつけろよ!』


でも!も言わせてくれずに、

そのまま頭をぽんと撫でると走り去ってしまう。



…………。



ちなみに、おらの背丈は十年前から変わらず

四尺(120㎝)のままだ…。


────────────────


あの後、二人組を探しまわるも

結局見失ってしまった。



「……んだぁ〜っ…。」


ふにゃりと身体から力が抜けていく。



「でもまあ、流石江戸だなぁ。

あんなの他のとこでは見なかったっていうんに。」


髪も、目も、耳も。

おらは誰とも違った。



「もしかしたら、ここならわかるかもしんねぇな。」


村のみんなは受け入れてくれた。

じっちゃんもだ。


それでも時々考えてしまった。



── おらは、どこから来たのだろう。って



「……よしっ。」


でもそれは、後ろ向きな感情じゃなかった。


みんなのおかげで、おらも

受け入れられそうだと思ったんだ。


おらが何者なのかを。



「まあ、見失ったもんはしかたねぇか!

そのうちまたあえるかもだしなぁ。」


だからこれは純粋な好奇心。

知りたいと思う我儘。


それが旅に出た理由のひとつだ。



「そうとなりゃ、

気を取り直して今日の宿を探すかねぇ。

じっちゃんが言うてた、うどん屋もみつけてぇなぁ。」


もうひとつは。



新板(ごうがい)だぁ!!新板(ごうがい)だよぉ!!』


気を取り直して歩き出そうとすると

人集りが出来ているのが目に入る。



「なんだぁ?」


またもや好奇心につられ

ふらふらとそちらへ足が動くおらの耳に。



『悲劇!

昨日、近隣の村が”トツ国”に占領されちまったと

命からがら逃げ出した村人は語る!!

江戸が襲われるのも秒読みかぁ!?』


もうひとつの理由が入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ