表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NO MORE映画崩壊-観客が消えた世界で、作り物の少女は本物の心を探す-  作者: 幸いぶん
シアター2.アメコミリブート『マーベラスグラスホッパー』
23/28

チャプター2.二人のヒーロー


 画面の中でおんなじ顔が見合っていた。

 どうなってんだこの状況、頬がひくひくしている。


「りぶーとってなんだべっ!?」

「時代に合わせた価値観にしたいとか、複雑になったストーリーを一新したいとかの理由で作品をつくりなおすこと!」

「わからんっ!」

「ほぼおんなじだけど!ちがう世界!」

「わかったっ!!」


 おんなじなのに、ちがう世界。

 だからフーディが二人いるのか!

 

「とりあえず突入しましょう、このままじゃメチャクチャになっちゃうわ!」

「まってくれ、どうやってはいるんだこれ!?」


 ゆっくりしている時間はない。

 そうシアウは言うなり、スクリーンのほうへ近づいていく

 おらも慌てて、その後を追った。


「スクリーンに触れればいいわ、そこから今映ってる場所に飛べる」


 シアウの伸ばされた手は。

 ぶつかることなく、スクリーンの中にずぶずぶと沈んでいく。


『ホワイ!?何もないとこから手が!?』


「ね?」

「き、奇々怪界だな……?」


 スピーカーから漏れてる悲鳴を他所に。

 おらも恐る恐る、スクリーンを指でちょんと触れてみる。

 水面のようにゆらゆらと揺れている、不思議だ。


「ビネガーシンドロームに犯されてる作品は、現実との境界があやふやになるの、ほら、いくわよ美桜」


「っと、ひ、ひっぱんないでくれよ!んだぁ!?」


 シアウに腕をつかまれると、体勢を崩しながら。



 ── とぷん、と。



 おらたちの身体は、スクリーンの中へ沈んでいった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 私は美桜を引っ張り、スクリーンの中へ突入した。


 ぐにゃりと歪んでいた景色は。

 足が地面についた感覚と一緒に、ゆっくりと元に戻っていく。

 

「到着っと」

「んだぁぁ〜……」


《アツダンシティに現れたヴィランは現在 ── 》


 場所を確認しようと、私は周りを見回した。


 広々としたリビングに、仕切りのないキッチン。

 家族用の大きなL字のソファーの前で、テレビの音が響いている。

 アメリカの一般的な家庭の内装、これは間違いない。

 この世界の主人公である、フーディ・アーツの自宅だ。


「美桜も無事ね」

「何処をみたらそう見えるってんだ!?」

「前」


 真横でフローリングに突っ伏している美桜。

 不服そうに顔をあげる彼女の目線を、指で誘導した。


「ホワイ!?なんでボクが目の前にッ!?しかもなんか若いデース!?」

『ホワイ!?なんでボクが目の前にッ!?しかもなんか知らない人が増えてマース!?』


「……あぁ」


 美桜から、あれと比べればな。

 というような声色と苦笑いが漏れている。


「えーっと、とりあえず、そうね」

「シアウさんどうなってるのデース!?」

『……suspicious(怪しい)、アナタたち、もしかしてヴィランなんじゃ?』


 私達三人は集まり、真ん中にある大きなテーブルを境にして。

 リブート版のフーディから距離を取る。


 ジリジリと詰め寄ってくる、リブートフーディ。

 一歩、また一歩と私達も後ろへさがる。


 この家の玄関は……しめたわ、丁度真後ろにある!


「ややこしいことになる前に、逃げるわよっ!!」

「もう十二分にややこしけどなぁ!?」


 美桜たちに合図を出すと、振り返って全力で走り出す。

 説明をするのにもリスクがある、あまり知られすぎるとストーリーに影響が出るかもしれない。

 破綻してこの映画(せかい)が崩壊してしまうのは避けないと……!!


「Oh my God!何がどうなって!?」


 三人で入り口に向かってダッシュしていると、ガチャリと玄関のドアが開く。

 初老の男性が、扉の向こう側から顔を覗かせた。

 とことんラッキー……!!


『あれ、お客さんでも来ているのかい?』

「─── 父、さん……?」


「お構いなくっ!!」

「お邪魔したべぇ、土足でごめんなぁ!!」


 あいた扉に滑り込んでいく、私と美桜。

 一度足を止めかけながら、追従して来るフーディ。


『ふむ元気な事だな、フーディ、お前の友達かい?』

『不審者デーーーース!!!!』


 背後から聞こえる叫びを振り切るように、私達は走り続けた。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 おらたちはもう一人のフーディが居た家から、かなり離れた位置まで走ってきた。

 

「ぜぇ、はぁ……!こ、ここまでくれば一安心でしょ……!」

「もう息上がってんのか、だらしねえなぁ」

「アンタたちと一緒にしないでっ!私はかよわいエルフなのよっ!」

「おらもだろ?」


「……」


 シアウはぷいっと顔を背ける。

 都合が悪くなると子供みたいになるとこあるよなあ。

 まあ今はそれよりも。


 まわりをぐるりと見渡した。

 景色はさっきとはかなり違うとこまで来ていた。


 さっきまで一軒家が多かったのに、今じゃあるのは江戸城みたいにでかい建物ばかり。

 人も多い、江戸の町人たちとおんなじかそれ以上か。

  だけど土地が広々としていて、狭さは感じない。


 地面は石が真っさらに敷き詰められている、その上をぎゅんぎゅんと走り回る鉄の塊。

 確か車、とか言うんだっけかあれ。


 ぐるんぐるんと目が追いかける、あっちこっちを見てみたい気持ちが収まらない。

 


「それにしても、すっげえなあ〜〜っ!!現実とおんなじような建物いっぺぇだぁ!!」

「世界観のベースが現代だからね、そりゃあ似るわよ、まあ此処は日本じゃなくて、アメリカだけど」

「あめりか、日ノ本とは別の国かぁ」


 子供達が目の前を走り抜け、広場に向けてはいっていく。

 広場には遊ぶ為のものが、色々と置いてあった。


 斜めになった台座を滑り落ちたり。

 ぶら下がった板に乗って、親がそれを押してゆらゆらとさせたり。

 

「アツダンシティ、アメリカ欧州にあるって設定の架空の都市、ここはファンからこう言われているわ」

「んだ?」

「アメコミ一治安の良い街」


 なるほど、と。

 楽しげな様子を横目に、おらは笑っていた。


(おかしいな?)


 ふと気になり、たちどまる。

 いつもならこんな会話に割り込んでくるのに。


「ふーでい、黙ったままでどうした?」

「イエ、ソノ……」


 振り返ってフーディを見上げてみる。

 心ここに在らずだ。

 いつも軽快な足取りが、どことなくぎこちない。


「そういえば状況の説明をし忘れてたわね、勝手に動くんじゃないわよアンタ、本当に」


 何かあったのだろうか?

 最初に入ってきた家から逃げてきてから、ずっとこの調子だ。


「しあう、言い方」

「私達は遊びでやってるんじゃないの」


「……」


 シアウの悪態にすら。

 フーディは何も返さず、下を向いている。


「大丈夫か、ふーでい?なんかあっ──」



『── きゃあああああーーーーッ!!!』

『ヴィランが、ヴィランが出たぞーーっ!!ヒーローを呼んでくれーーーっ!?』


 突然のことだった。

 平和な空気を切り裂くように、声が街に響く。


「なんだぁ!?」


 驚いてあたりを見回すおらの横を。

 さっきまで、俯いていたはずのフーディが颯爽と駆け抜ける。


「……|I'm needed《ボクが必要だ》!!」


「ふーでいっ!?」

「ああもう、また走るの〜〜っ!?」


 悲鳴の聞こえたほうへ、誰よりも早く。

 おらたちも、それを追って慌てて走り出した。


『人は脆い、だから早急に進化だったのに……私の研究を否定したお前たちは、間違っている』


 逃げ惑う人々たちを囲む様に。


『それを今から証明しよう』


 虫の羽音が、響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ