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観客が消えた映画の世界で、作り物の少女は"本物の心"を探す。  作者: 幸いぶん
シアター1.伝奇時代劇『Samurai wonder』
15/20

チャプター14.現実と空想


「こ、ここは?どこだぁ?」


沢山の座席が並んでいる広く薄暗い部屋

正面には真っ白な巨大な布が張られている

映写機の光だけが、暗闇に輝いていた。


… 無事に戻ってこれたみたいね。


「はぁーーーっ…!

マジでどうなることかと思ったわ。」


「シアウさん

あのラスボスさんに何を言ったんデース!

最後なんか血眼で追いかけてきましたケド!?」


フーディの怪訝そうな瞳が、

抱えられてる私に向けられている。


「あのラスボスのプライバシーにも関わる事なので、

ここでは黙秘させて貰うわ。」


「…… あの人の気になるネタバレでもぶら下げて

利用したんデスネ。

インサイダーとか感心シマセーン。」


「なんで建物の中に…

おらたちさっきまで外にいたよな?」


フーディの反対の腕には和装をした桜色のエルフ。

きょとんとあたりを見回している。


「あーっもういいでしょ!逃げ切れたんだから。

情報も渡してないからセーフよっ!

済んだことよりも!当面の問題は。」


「who!?ちょ暴れると落ちマスヨ!?」


「離してくれ!さっきの場所に戻らねえとっ!!」


そして彼女ははっとした顔をすると

短い手足でじたばたとし始めた。


「この子の方でしょ。」


ビネガーたちとはまるで雰囲気が違う

映画を壊すのとはまた"別の異物"。

私たちもこんなのは初めて観た。


「鎧兜がまだおる!!江戸はまだ危ねぇ!!」


「大丈夫よ。

もう異変は終わったから江戸はもう安全よ。」


「安全なわけないだろ!

瓦版の兄ちゃんも置いてきちまっとる!

あの妙なのが消えてもまた鎧兜がっ!!!」


「トツ国の兵隊たちは江戸に侵攻した後に

途中で作戦を辞めて一旦引くのよ。

あれ以上は江戸の人達には手を出さないの。」


「………んだ?」


だけどわかってることはある。


「主人公を一撃で下したトーツ・サマーは

あぁ貴女のいう"鎧兜"ね。」


ビネガーを見た時にまず"助けよう"とした。


「倒れた主人公を見て、何を思ったのか

侵攻していた部隊に撤退を命じるの。

それで江戸からトツ国は一時撤退。」


それでいてあの混乱の中でも

状況をしっかり見ようとしていた。


「それがこの映画の"正しい筋書き"なのよ。

ビネガーシンドロームはもう解決したから

この筋書きに合うように物語は進むの。」


「……ちょっと待ってくれ。

わりい言ってる意味がさっばりわからねえ。」


「ま、そうなるのも当然よね。

言ったわよね?説明は後でするって。」


「……。」


「色々疑問に感じていたことがあるでしょ?

私達も貴女に聞きたいことが山程あるわ。」


感情的にみえるキャラクターだけど

考えなしに動く造形ではないっぽいのよね。


わざと選択肢を与えると私の予想通りに

彼女の反発は大人しくなっていった。


「おら…。」


「なにかしら?」


「おら美桜だ…おらの名前。」


「そう、美桜、良い名前ね。」


〈Samurai wonder〉には

そんな名前のキャラクターは存在していない。

わかってはいたが眉間に小さく皺が寄る。


「美桜どうする?

応じてくれるってのなら着いてきてちょうだい。」


美桜は黙り込んで考えていた。


もっと慌てても良い状況の筈なのに

彼女は既に、次の段階へと入っている。


「ミオサン、色々難しいコトだらけデスよね?

実はボクも最初はそうだったんデス。haha!」


沈黙を破るようにフーディが笑った。


「…ふーでい。」


「オールオッケー!!

江戸の人達が大丈夫なのはボクも保証シマス。

信じてクダサーイ!!」


丁寧に私達を床へ下ろすと

美桜と視線をあわせるように

フーディはしゃがみこんで笑顔を見せている。


正統派ヒーローの面目躍如ってとこかしら。


「ヒーローもビジネスマンも信用が大事!!

顧客を裏切るコトは致しマセーン。」


「…おめえはさ。」


「ハイ!」


「おかしくなった皆をどうにかする時も

ちゃんと手加減をしてくれてた、殺さねえようにな。」


「それはモチロン!ヒーローデスカラネ!」


それでピンチになるのもお約束だからね

ベタな展開は嫌いじゃないけど。


「だからわかる。

おめえは良いやつだ、信じるべ!」


美桜の表情と雰囲気が

ふにゃりと柔らかいものに変わっていく。

ギャップのあるタイプなのね、なるほど。


「手間かけて悪かったな。」


そして素直と。


「着いていく!説明よろしく頼むべ!」


まあ扱いやすくていいわ。


「そう。こっちよ、きて頂戴。」


シアターの扉をガラリとあけると

私は美桜をつれて外へと歩き出した。


────────────


おらたちが薄暗い部屋から抜け出すと

そっから先は別世界だったんだ。


壁は真っ白でつるつる

床には鮮やかなふかふかな赤の敷物が

遠く向こう側まで敷き詰められている。

こりゃ通路なのだろうか。


出てきた扉とおんなじようなものも

いくつも並んでいる。


「なんだべこりゃあ!!」


扉の横にはってる絵も

こりゃまた精巧でまるで本物みてえだ。

歩きながらあちこちに目が行っちまう。


「そこはテンプレなのね、反応。」


「haha!子供らしくてイイ反応じゃないデスカ!」


おらのぴくっと耳が揺れる。

これはしっかり主張しておかねえとな

説明の時に"子供だから"で省かれちゃたまらん。


「ふーでいっ!!!」


「wats!?」


びしっと指を刺して声をあげる

すっとんきょうな声をだしてこちらをみるフーディ。


「おらは子供じゃねえぞ!歳はもう十八ぐれえだ!

立派な大人だべっ!!」


説明の為だ、決して小せえのは気にしてねえ。

… 気にしてねえ。


「確かに先程の行動は立派でしたケドー…。

その何というか、ちょっとsmall…?」


「すもう?おら相撲なんかしねえぞ。」


ちょくちょくワケのわからんこと言うよな。

眉を顰めてフーディを見上げていると


「間違いなく大人だと思うわよ。」


「だべっ!?」


溜め息を吐いたシアウから援護が来る

偏屈そうだなと少し思ったがいいとこあるかもな。


「えぇそれも18歳ぐらいじゃ収まらないかもね。」


「んだ?おらそんなに色気あるんかぁ?」


「貴女は私とおんなじ設定(しゅぞく)

かも知れないってコトよ。」


その言葉を聞いて

おらはシアウの尖った耳に目が移った。


「私の耳のコト、貴女さっき気にしていたでしょ。」


「尖った耳っ!!」


「そう貴女とおんなじね。

美桜、貴女は日ノ本の人間でもなければ

トツ国の人間でも無いわ。」


"おまえはなんだ"

そう言ってた鎧兜の言葉が頭に響く

あの時はわからんかった。


「…それはなんとなくわかってたべ。」


だけどその答えがあるかも知れねえ。

目の前に。


「ソレよ。」


「んだ?」


「私達の特徴よ。

感情はあっても割り切って冷静に考えられる。」


心当たりがわりとあった

子供の頃からぽつぽつとあった違和感。

熊と対峙しても、トツ国と戦っても

頭が止まることはほぼ無かった。


「しあうは、おらとおんなじなのか?」


「同じ作品かはわからないけどね。

貴女の種族は多分私とおんなじエルフよ。」


「えるふ…。」


初めて聞く言葉だった。

少なくとも日ノ本を旅してきて一度も聞かねえ。

それはまあ

この二人の言葉の殆どがそうなんだが。


「魔力…だと世界観的にわからないか。

不思議な力を使えて、人間より寿命が長くて

体の成長がとっても遅い。」


「── !!」


「ファンタジーとかだと定番の存在デスヨネ!

尖った耳がcharm point!」


「それでいて長生きをしているから

頭を使うのが得意で感情に流されきらないの。

心当たりあるんじゃない?」


「……全部、あるな。」


長寿は身に覚えはないが

それ以外は全ておらにあてはまっている。


「ならもう決まりね。」


「そのえるふっての仲間はほかにもっ!」


シアウたちの言ってることに嘘は無さそうだ。

── 知りてえ。


「質問したいところだろうけどごめんなさいね。

順序立てて説明していきたいから。」


「あっいや大丈夫だ。

茶々をいれてわりいな、話を続けてくれ。」


もっと教えてほしい。


「単刀直入に言えば、

さっきまでいた貴女の世界は"映画"よ。」


知らない言葉に知らない世界。

ここなら全てがわかるかもしれねえ。


おらは一体なんなんだ。




「─── 要するに"作り物"なの。」




「……は?」


……なにを言ってるんだ?


「正確に言えば、そこに住んでいる人たちも

そこに居るフーディも私も。

そして美桜、貴女自身も"作り物"。」


「ちょ、ちょっとたんまっ!!」


いくら冷静に考えられるって言っても

その言葉はあまりにも衝撃的で。


「そりゃそうなりマスヨネェ…。」


「そしてこれが私達を作った。」


けれどもそんな衝撃は

まだ序の口だったんだ。


「"本物の世界"よ。」


突き当たりにある、

広い空間でシアウは止まり向き直る。


この時までおらの旅はまだ

───始まってすらいなかったのだ。

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