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観客が消えた映画の世界で、作り物の少女は"本物の心"を探す。  作者: 幸いぶん
シアター1.伝奇時代劇『Samurai wonder』
11/16

チャプター10.ある筈のない展開


「……違う。」


「何がデスか?」



「── 何もかもよっ!!!」



どうなってるの!?

腕がわなわなと震えて止まらない。



「この映画の主人公は本来ね

町人町でトーツ・サマーと戦って!

一撃で負けるのよッ!!

1時間13分あたりのシーン!!!」


「……それ、全然ヒーローじゃなくないデスか?」


物語がおかしくなるのは想定済みだ。

だが、登場人物がすり替わってるなんて事態は

今まで起きたことが…。


… いま、なんて?


混乱する私の頭でなにかがぷちんと切れた。



「リベンジあるからッ!!

一度負けてもまた立ち上がり戦うのッ!!

打ちのめされる主人公、

圧倒的な力のラスボスと驚愕の真実を前に

折れかける心…

紆余曲折あって、それでもたちあがるーーっ!!

……王道の展開よっ!!」


「oh、そ、そんな鼻息荒くしないでクダサーイ!

わかりましたカラ!!」


本当にわかってるの!?

と言いよる私を押し除けて


金髪は混乱の元凶を見続けていた。



「でも、それなら確かに違いマスネ。」


────────────

ガキン!ガキン!と町人町に響く戦いの音。


目の前にあるのは馴染みのある姿。

ずっしりとした、日ノ本の伝統的な鎧兜だ。


……違うのは。



(まいったなぁ、油断も隙もねえ…!)


それが、身の丈ほどある蒼い槌を肩に背負い。


その全身が

トツ国の色へと塗り替えられていることだ。


真っ白で七尺ばかり(2mを越える)の巨体。



疾風(はやて)ッ!!」


その周りを

おらは追い風にのって、びゅんと素早く動き回り


鉄扇ですれ違いざまに連撃を繰り出していた。


ガキンッ、ガキンッ!

鉄がぶつかり合う音が絶えずに響いている



『成程。』


「ちきしょうめっ、片手でッ!?」


けれどもそれは武器も使わずに

籠手で弾くようにいなされてしまう音だ。


しかも、なんて馬鹿力…!


一閃を空に弾かれて

鉄扇ごとおらの身体は宙に軽く吹き飛ぶ。


恐ろしいのは、これがまだ



『身に違わず、軽いな。』



── 攻撃ですらないことだ。



ワンダーの予兆だ、鎧兜と槌が蒼く光を帯びていく。



「誰がちびだぁ!こんにゃろッ!!!」


宙に放り出され、ぐるりと回るおらに目掛けて


鎧兜の男はまるで小枝でも振るように

その巨大な槌を構え、ぶんと振り下ろす。



『終わりだ。』


野分(のわき)!!」


回転した勢いのままに、ばさっと鉄扇を広げて振った。


集まった風は大砲の弾が如く放出され、

その反動でおらの身体は後ろへ飛んでいく。



「避けらんねぇだろ!!」


『ほう。』


さっきまでおらが居たとこを、槌は通り過ぎ


鎧兜の眼前に迫る、風の弾と衝突する。



「ぶっ飛 ───。」



次の瞬間


風の弾はあっさりと潰される

勢いは止まるとこを知らず。


ドゴォォン!!と大きな音をたてて。

槌が地面を叩き割った。



「── ッ!?」



衝撃は見えない波となり

四方八方の物を壊していく


あたりの建物は崩れ去り

大地は絶え間なく揺れている。



「なんちゅー規模でっ…!?」


『うわあああああああーーーっ!?』


風で壁を作っておらへの衝撃波を防ごうとした刹那

町の人たちに迫るのが、視界の隅にはいった。



「あぶねぇ!!!!」


どちらも守るには時間が足りない…!


町人たちにむけて鉄扇を横に薙ぐ

風の防波堤がみんなへの瓦礫や衝撃波を弾いていく



「…ガ、ッ…!!!」


衝撃波をもろに食らったおらは、

着地も叶わず、身体を建物の残骸に叩きつけられた。


ずるり、と瓦礫をすべり

そのまま倒れかけるも、なんとか踏ん張った。



「ちき、しょう…!ばけもん、かぁ…!?」


先程までの町人たちの歓声は沈み

トツ国の兵士たちが喜ぶ声が聞こえてくる。



『よく言う。』


地面から槌を引き抜くと

ゆっくりと鎧兜がこちらに歩み寄る。


不味いな、何か手はないのか。



『何も考えてないように見えて

貴様は常に考え続けている。』


「…んだぁ?」


『敵を観察し、感情を煽り

虚を突く機会を虎視眈々と狙う。

その上で自力も高い、我が国の隊士に欲しい程だ。』


「……へっ…冗談じゃねぇ…!

誰がおめえらみたいな悪者の仲間になるかよっ。」


やりにくい

おらに対する油断や隙が一切ない。



『その惚けた言動や子供を思わせる身なりも、

油断をさせる為にわざとやっているのか?』


「……こりゃ素だ、悪かったなっ!!」


ふらりとする足腰に気合いを入れて、吐き捨てると

鉄扇を構えて、鎧兜と再び対峙をしなおした。



『あ、あんな強い嬢ちゃんでも、敵わねぇのか。』


『江戸はもう、おしまいだぁ…!』


不安そうな町人たちの声が聞こえる

それを一瞥する鎧兜の男。



『希望を託して、勝手に絶望するとは

何処の国も民衆の愚かさは変わらんな。』


「わりいのはおめえらだろ

江戸の人たちにあんな顔させやがって。」


『…それでいて、純粋か。

益々意味のわからない存在だな、貴様(美桜)は。』


町の中でなんて使いたくはなかったが



…"加減無し"で力を使うしかないか。



不幸中の幸いか、吹き飛ばされて

町の人達とは距離が離れてる。


ここなら巻き込まずに…。



『ついでだ、あと2つ、問いたいことがある。』


「……なんだよ。」


会話をしている裏で、意識を集中させる。

おらの周りの光が少しずつ強さを増していく。



『貴様のその武器(鉄扇)

我らトツ国の武具と同じ物で出来ているな。

どういうことだ。』


「おめえらの兵隊が、おらの故郷に来たんだ。

追い返した時に忘れもんをしてたから

それ使ってじっちゃんが作ってくれた。」


風もそれにつられて、轟々と激しさを帯びる。



『成程、統治の初期段階で失敗して逃げ帰ってきた部隊があったと報告を受けた。それか。』


こいつがその変化に気付いてない筈はない。

まだ、余裕があるのか?



『なら、これで質問は最後だ。』


それでもやるしかない

一か八かで最大限のを。



『貴様のその力は、なんだ。』


「…おめえらとおんなじだろ。」


お返しに動揺させようって腹か?

そんなので揺らぐほど場数は踏んで…。



『惚けるな。それは、ワンダーでは無い。

全く異なるものだ。』



その一言に、ドクン、と心臓が鳴った。



「……え?」


『ワンダーは肉体と気を高める力だ。

風など操れん。』


日ノ本を守る為に旅に出た時に

うっすらと不安はあったんだ。



『貴様の身体的特徴も、トツ国の人間にはない物だ。』


ワンダーを見た時に思った

おらの不思議な力と似ている。


もしかして


おらの正体っていうのは、トツ国の人間なのか?



『吐け。』


そんなおらの不安は




『…貴様は"一体、なんだ"?』



見えない暗闇へと、投げられた。




轟々と吹き荒んでいた風が


ぴたりと止んだ。


風が止み、静まり返った江戸の町に




『もう…お終いだぁ…。』


『皆、トツ国に…殺される…。』


『そうだ、だったら…いっそのこと…。』




【全部消えて、しまえばいい。】




─── 暗闇が、迫っていた。

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