表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

チャプター9.フィルムシネマの幕開け

町人たちの歓声があちこちからあがっている。



『サ、サムライ、聞いた事がある…。

我らの支配下となった土地を

たった一人で部隊を殲滅し、解放していると言う

この島国の、イレギュラーッ…!!』


「誰に説明してんだべ? 見物人かんきゃく?」


ふっと素早く距離を詰め

妙なことを口走った白服の顎を蹴り上げる。


その身体はふわりと宙に舞い、

そのまま地面に顔を突っ込んだ。


動揺しているうちにばったばったと薙ぎ倒す。

気付けば、白服は十人倒れていた。



『な、あ…こ、こんな小娘にっ、

トツ国の精鋭が、こうも簡単に…!』


半分は減らしたか…そろそろ頃合いかね。



「精鋭かなんか知らんけどよぉ。

おめえたち、これ以上痛い目に逢いたくなきゃ

この江戸からとっとと出ていきな。」


『なにをふざけたことを!!』


いきなり現れた妙な存在が

理解出来ないことをやらかせば


怖がるのはわかっている。

その感情は子供のころにおらへよく向けられた。



「おめえたちの頭はもうのしちまったぞ。

それどころか、もう半分もやられとる。」


『ッ…!!』


「そんなんで、勝機なんてあるんか?」


気分はよくない、だが

“こういう時は”都合がいい。


無闇に血が流れないように出来るからな。


好奇に苛まれた眼差しを逆手に

わざとニヤリと、あくどく笑ってみせた。



『……ぜ、全員退避!

一時此処は放棄して、別働隊との合流を───』


『─── 誰に許可を取って指揮を取っている!!!!』


気絶した仲間たちを連れて逃げようとするのを見て

よっしゃ!と内心で思うが


すぐ、それを止めるような怒声が聞こえてきた。

ちと面倒だなと頬を掻く。



「随分と頑丈なこって。」


『私は選ばれしエリートだ。

あの程度の打撃、効くわけがないだろう。』


土に塗れ、頬にアザの出来た

親分あたまがそこに立っていた。


わりと本気で殴ったんだがなぁ。

流石、力で国を支配しようって奴らだ。


まともに全員とやりあったら、

さすがにおらも無事じゃすまないだろうな。



…だからこそ。



「そっかぁ、あまりに手応えなかったもんだから。

もう終わったもんかと思ってたべ!」


ぴきり、と親分の額に青筋が出来る。



『どうやら、余程死にたいらしいな。』


まともにやらせぬよう、感情を揺らす。



「んだ、やれるもんならやってみろ。」


じっちゃんが言っていた

戦いに大事なのは、強さだけではない。



『上官!我々も!』


『手を出すな。』


『しかし、あの娘は危険です!!

一斉にかかるべきで…。』


『…聞こえなかったか、

“手を出すな”と言ったのだッ!!!!』


“いかに状況を見て、考えられるか”、だと。



『上官命令だ、邪魔をするな。

あの子猿は、私の手で殺す…!』


親分が刀剣を構える

刃は蒼く、白い溝が無数に入った奇妙なカタチ。



「カッカしてると碌なことにならんぞ。

肩の力を抜いたらどうだ?」


『子供らしく、生意気な口がよく回るな…

余裕を見せていられるのも、ここまでだ。』


青筋を立てたままニタリ、と親分が笑う。


淡く蒼い光が親分から溢れ出し

刀剣はそれに呼応するように眩く光出す。



……“アレ”をするつもりか。



『見せてやる。

トツ国の中でも、更に選ばれた者だけが持つ力を。』


距離があるにも関わらず

親分は勢いよくブォンと刀剣を振り下ろす。



『な、なんだありゃあ!?光の…刃…?

うわぁぁっ!?』


蒼い光は斬撃のカタチへと変わり、

地面を大きく抉りながら、おらへ向かってきた。


町の人たちは驚きと悲鳴をあげている。



『お、俺の家がぁーーーーっ!?』


「思ったよりでけぇな…。

みんな巻き込まれるぞ!!伏せろっ!!!」


衝撃の余波で周りのものが飛ばされている。

…派手にやるなよなぁ、迷惑かかるだろ。



『冥土の土産に教えてやろう、これはッ!』



「『ワンダーと呼ばれるエネルギー!

我らトツ国の血族のみが操れる選ばれしパワー!!

そしてこの武器は、その力を吸収して、

増幅させる金属を使って作られている!!』」



「だべ?」


意気揚々と説明する親分の声に、おらの声が重なる。


高笑いしていた顔が何故…?

と疑問に染まっていくのが見えた。



「おめえたち、どいつもこいつもまぁ飽きずに

丁寧に説明してくれるからなぁ。」


おらの身体からも淡い光が溢れ

鉄扇もそれに呼応するように光を帯びる。



── まるで敵の力の不可思議な力と、おなじように。



「覚えちまったよ、その台詞。」


『なんだ、それは、その光は…。』


「んだ?あー…ガキの頃からある力なんだがよ。

おらにもさっぱりでなぁ!」


鉄扇をばさりと広げる。

ごうっと、辺り一面に風が吹き遊ぶ。



『…有り得ない…。』


目の前に迫る斬撃。

それに構わず、おらは鉄扇を振り下ろした。



「── 太刀風たちかぜ!!」



次の瞬間、風は巨大な刃となりぶつかりあう。



『ワンダーは…トツ国の血族だけの力の筈だ…。』


鍔迫り合いも起こらず

蒼い刃は風に巻かれ、霧散する。


風の刃はそのまま真っ直ぐ飛んでいくと



『それなのにっ…こんなっ!!』


親分の刀剣の刃を切り落とし、彼方へと消えた。



『あ、あの嬢ちゃん、やったのか…?』


『嘘だ、上官が、手も足も出ずに…。』


切り落とされた刃がクルクルと宙を舞い

ザクっと地面に刺さると。


あたりは、しん、と静まり返る。

親分はそのまま膝をつく。



「落ち込んでるとこわりぃけど、もう一度いうぞ。」


一対一してくれて助かった。

内心ほっとしたのを悟られまいとしながら



「痛い目に逢いたくなきゃ

おめえら、さっさと自分の国に帰りな。」


堂々とした態度で言い放った

追い払うまで気は抜けない。



『すげえ、すげえ!!

なんだよ、トツ国の奴等を一捻りじゃねえか!!!!』


『いいぞー!!桜色の嬢ちゃんー!!!!』


町人たちが歓声をあげている。

…気をぬく…な…。



「そ、そうかぁ?へへっ。

どんもどんもーっ。あんがとーっ!!!!」


ふにゃりと頬がゆるむ。

ち、ちょっと手を振りかえすぐらいならいいよなぁ。



『…貴様、名前は?』


「んだぁ?」


膝をついた親分が声をかけてくると、

はっとしてそちらに振り返り、鉄扇を構える。



「おらか?美桜だ。」


言うかどうか迷うも、

隠すものではないなと言葉を返す。



『そうか…貴様は強い、ミオ。

各地の部隊を殲滅させていったという話も。

この強さなら、納得だ…。』


「んだよ、褒めてくれても、

おめえは瓦版の兄ちゃんのこと殺そうとしたから

好きじゃねえぞ。」


『だが、トーツ・サマー将官には敵わない。』


「とっ、さまぁ…?」


様子を警戒しながら話を続けていると

妙な音を耳にした。


ビュウウウ…っと。


何かが落ちてくるような音だ

空を見上げる間もなく


それはおらと白服たちの間に

ドゴン!!と凄まじい音を立てて着地した。


大地が大きくひび割れ

肌がぴりつくような感覚に襲ってくる。



「なななな、なんだぁ!?」


『なんだ、この為体は。』


『申し訳ありません、将官。』


鎧兜…?

全身真っ白の鎧兜が降ってきた…!?


それは、おらの方にゆらりと顔を向けてくる。


トツ国の兵士たちが

小さく震えているのが視界の端に見切れた。



「……こ、こりゃ、ちっとやべぇかな。」


仮面の奥に見える鋭い瞳がおらを睨んでいる。


それを見た瞬間に

いままで感じたことの無い悪寒が


おらの背筋をなぞったんだ。


───────────────


『hey、シアウさーん!

観光気分で来てないデース?』


カタコトの日本語で

私を刺してくる声が後ろから聞こえてくる。


『せっかく、あの名作

〈Samurai wonder〉 の舞台に来れてるのよ!

少しぐらい回っても良いじゃないっ!』


ち、ちょっと寄り道しすぎたかしら…。


でも聖地巡りどころか現場を巡れるなんて

映画好きとして回らないわけにはいかないでしょ!



『スシテンプラソバ!

随分と満喫してるように見えマシタが?』


『…むぅ。』


遠回りだけど目的地には向かってるわよ。

と思いながら、横に着く金髪の大男を睨む。



『haha!

まだ異変も起きてないようだからイイデスけどネ!!

……シアウさん?』


『なによっ!

寄り道した私が悪かったわよっ!

謝れば良いんでしょ、謝ればっ!!』


『いや、そうではなくてデスね。

この作品の主人公の性別を聞きたくて。』


突然の質問に首を傾げた。


ここにくる前に

2時間ほど解説してあげたっていうのに


しっかり聞いていなかったのかしら。



『性別?男よ、それが?』


『今、寄り道しながらも辿り着いたココは。』


『町人町ね。

トツ国の横暴に憤慨した主人公が兵士を倒して

その後ラスボスと対峙して、返り討ちにされる場所。

何度も見たから覚えてるわよ。』


『excellent!流石デスね!

では遠くにみえるアレは?』


なんなのこの質疑応答。

目的地について、私たちは江戸の町人に紛れていた。


地面の割れる音が聞こえる

威圧感に震えるモブたち。


この状況は

ラスボスであるトーツ・サマーの初登場シーンだ。


2メートルを超える巨体に負けないぐらい

巨大な青黒いハンマーを肩に担いでいる。


目の前で見れるなんて…!

ほんのちょっとだけ鼻息が荒くなる。



『この作品のラスボス、トーツ・サマー将官。

それと対峙するのは主人公の……………。』


『主人公の?』


それに対峙するはもちろん

風に揺れる桜色、子供と見まごう小柄な身体。


和風な設定にそぐわぬ、エルフ耳の女の子。


…………"女の子"?




『─── 誰よ、アレ!!!!!!!!!!』




町人たちの怪訝な視線も気にせず、

私は思いっきり叫んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ