8 バカタレ
『昨日‥‥‥』
湖織は談話室で昼のバラエティを観ている昭治を、司令室からジ感で感知し、考え事をしていた。
『帰ってきた時の渡さんはご機嫌斜め三十度って監視だったけれど‥‥‥今日はなんだか普通の様子だ‥‥‥』
けれど、どうも、それが本当のことには思えない。
『あの人は怒っている時、平時だとすぐに我慢するからな‥‥‥いつもはこわいこわいってやかましいくせに』
そうしていると、どうやらジ感での感知がバレたらしく、「見たいならこちらに来てすぐそばで観察しなさい」と昭治が言う。
司令室から談話室にうつる。
談話室には彼だけではなく、ほかの職員もいた。
「俺の様子がそんなに気になるかい?」
「そりゃあ‥‥‥だって、お兄さんと接触したのでしょ?」
「するさ。彼処に奴がいたならな」
「いたんでしょう?」
「どうだか。‥‥‥そんな話はやめにしよう。君の話がしたいな。時折考えるんだ。君がどうして俺をそんなに気にかけるのかって」
「なぜだかわかります?」
「俺は前に祖母の強迫的な悪習から逃れる切っ掛けを君に与えたろ。それで‥‥‥君はそれに対し、大きな恩を抱いているんだ。違うかい?」
「間接的な要因ではありますけど、直接的なものではないです。もっと僕の心を読んでも良いんですよ。たまに人の頭の中に入ってくるでしょ。あれをやってさ」
「あれはつかれるからやりたくない」
昭治は缶コーヒーを両手で挟んでころころと回した。
「どうしてあんたはそう、不器用なんです」
「不器用‥‥‥俺は不器用かい?」
「そうでしょう。だってほら‥‥‥ジ感者なのにどうも人の心を知るのが苦手で、あんたはいつも困ってるじゃないですか。おばけ退治の専門家としてはそれが正しいんでしょうけど、あんたは人だろ」
「これではどちらが上官かわからんな」
「勝次さんもたまにあんたのこと愚痴のタネにしてますよ」
「言うのは野暮だぞ」
「わかってますよ。そういうことも‥‥‥あるってことですよ」
便所に立つ。少しだけどういう意味かわからないことがあり、悶々とした気分を味わいながら、便所から出たところで、我白と出会す。
「君の弟子は‥‥‥あれでは恋人だよ」
「そこまでわかってりゃ上等だね」
「はぁ‥‥‥? 何言ってんだ君は」
談話室に向かう道中に、足を速める我白ともつれてころびかける昭治で、未来の暗示みたいだと思われながら、詰める。
「どういう意味なんだ、教えてくれ」
「どうして私が君の東京人ムーブに付き合わなきゃならんの」
「わかんないんだ! あの子がどういう思いで俺といるのか‥‥‥」
「あんたそれ本気? あんなにオープンに感情出してて‥‥‥ジ感なんてない私なんかでもすぐに分かるよ!」
「何故分かるんだ」
「人を理解できないソシオパスがクレアボヤンス極めるとこうなるんだなって思ってるよ、この鈍感児。あんたいつまでもそうなんじゃ、ソレじゃあ湖織ちゃんが可哀想だよ」
「そう言われても‥‥‥俺は志津子をずっと引きずってる!」
我白が足を止める。
「君って本当にクソなんだな‥‥‥そこまでわかっているんじゃないか‥‥‥もう全部、解決してからでいいから湖織ちゃんと向き合うだけの時間を作ったら良いんじゃない?」
「全部解決したら、俺は‥‥‥実家に帰る‥‥‥」
「バーカ!!」
我白は行ってしまった。
「どうしよう‥‥‥志津子‥‥‥僕、馬鹿って言われちゃった‥‥‥」




