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尋常維持機構  作者: 蟹谷梅次
赤い銃創
3/39

3 ある寺の仮面

 新潟県某市にある寺に仮面があった。

 その仮面はどうも木に人の皮を貼り付けたものらしい。


「ひ、ひぇぇ〜‥‥‥」

「あっ、もうだめそう」


 コードネーム・(わたり)勝次(かつじ)は正座のまま震えてしまっている昭治を見据えながら「面倒くせえなこいつ」と呟いた。


「煙草吸うか?」

「煙草なんてもの吸っていたら肺が馬鹿になる」

「去年までやってたくせに‥‥‥」

「なあ、そんなことより。勝次、これ俺いるか‥‥‥?」

「あー、始まった。面倒くせぇよお前それ。どうせお前今回はただの非常時要員だから気を楽にして横にでもなってろ」

「そうしても構わないならそうするが‥‥‥」


 勝次は呪物の解呪を専門に行なっている職員である。

 姓が昭治と同じ「渡」であるのは、単純な理由として、勝次が昭治のスカウトで組織に入ったからである。


 昭治は畳に仰向けになりながら、懐から回転式拳銃を取り出し、弾をひとつ抜き取り、懐にしまう。


 そうしていると奥から住職が現れる。

 住職は顔に仮面をはめている。


「ほらダメそうだ」

「昭治、戦闘準備──」

「もう完了してるよ」


 昭治はのそりと起き上がりながら、障子の向こうから飛び出してくる魔人の顔面に大ぶりの蹴りを叩きつけ、泥に戻す。


『魔神が生み出されるほどの高度の呪物‥‥‥あの仮面なんなんだ』

『そんな事を考えている暇があるなら解呪の準備をしなさい』

『人の頭に入ってくるな』


 昭治は弾をいくつか放った。

 しかし、そこに住職が襲いかかる。撃とうにも撃てず、昭治は拳銃を奪われた。そして、仮面に操られた住職は勝次に銃口を向け、容赦なく引き金を引く。しかし、弾が入っていない。


 拳銃を蹴り上げ、自分のものにし直すと、魔人を撃つ。


「解呪、しなさい」

「しかし‥‥‥こんな状況で‥‥‥」

「俺がいるのに何が不安か。大丈夫、君はできる。はやくしてくれ。俺の弾は無限じゃない」

「わかった」


 解呪の準備は済んでいた。

 勝次はそれにエネルギーを送り込み、仮面がそれを浴びると、そのなかに宿っていた超常的な邪悪の意志はだんだんと零れ落ちていく。


 魔人はそれをさせてたまるかと勝次に襲いかかる。昭治は「お前らにそんな権利はない」とばかりに、それらすべてを叩き潰していく。


 仮面に光の粒子が纏わりつく。


 それが解呪の兆しだということを知る昭治は拳銃に弾を装填し、魔人を残らず一気に叩き潰した。


 解呪が完了すると、寺周辺の木々が一気にはじけ飛んだ。


「あとは封印をしなければね」

「わかってる」


 勝次は懐から茶色じみた帯を取り出すと、それを仮面に巻きつけた。こうして呪いの仮面の削除が完了する。


 住職は脳の神経のいくつかを消耗しており、おそらく回復はすれど後遺症が残ってしまうだろうという診断を受けた。


 昭治は「こわかった‥‥‥」と思いながら、車まで到着すると、勝次の様子を見た。いままで組織で働いてきてはいたものの、どうやらああいう状況になるのははじめてだったらしく、まだ胸の落ち着きがないらしい。


「怪異と戦うってのはそういう事じゃないのか?」

「わかってるよ、わかってる。うるせぇなお前」

「俺に八つ当たりをされたって困るばかりだ」

「‥‥‥‥‥‥」

「ごめんって。そうだな、腹も空いたし‥‥‥どこかに飯でも食いに行こうか。君、たしかラーメン好きだったろ」

「お前の奢り」

「ハハ。口を利ける。わかった。奢ってやるから、君はなるべく並ばずに食えるうまいラーメン屋を見つけたまえ」

「無茶を言う‥‥‥」

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