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ep.13『択一』③

 最早どんな感情で接すればよいのかもわからなくなったリア。

 しかし、彼女の頭にふと、この状況に対する応急処置が浮かんでくる!!!


「そ、そうじゃ!! とりあえずあれを被せよう!!」


 そう言って彼女が皮袋から取り出したのは、予備の皮袋であった。

 無論、ただの皮袋ではない。

 魔法、特に空間魔法の天才である彼女がクレイオスの潤沢な資産と人員と研究設備を駆使して作り上げた、画期的な魔道具だ。

 その皮袋の内部はクレイオス領地内の倉庫に繋がる亜空間となっており、外観は手のひらサイズでも容量はクローゼット一つ分はくだらない!!

 リアは皮袋の口を、激しく喘ぐヴォルガーの口に被せた!!!


「……お゛♡ ……お゛♡♡」

「す、すごいぞリア!! 今でも普通に喋ってるくらいの音量は聞こえるが、喘ぎ声は確実に小さく遠くなっている!!」

「ああ……ヴォルガーくんの美声が……!!」

「美しいか否かは問題じゃない!!」


 ギデオンがこの対処療法に一安心する一方で、袋を押しつけたリアは苦々しい表情を見せる。


「……いや、この皮袋も長くは保たん!! 喘ぎ声の反響による亜空間へのダメージがデカすぎるのじゃ!! もうこれは一体どうすればいいのじゃ!!」

「そんな……!!」


 乳首開発に対する苦悩は解決していないが、リアは一旦それを置いといてラピアに向き直る。


「……とにかく今は、この催眠術をどうにかするのが先決じゃ!!」

「そ、その通りです!! 一緒に調べてください!!」

「妾達が来るまで何もしなかったわけじゃないのじゃろ? 一体どんな治療を試したのじゃ?」

「とりあえず、一回気絶させてみました。以前にキルデイルの催眠術が解けた時も、ヴォルガーくんは気絶したので……」

「それが今回はダメだったというわけじゃな……。その時と今で何が違うか、思い当たるところはないのじゃ?」

「そうですね……あの時はただ気を失ったわけではなく、とても大きい衝撃を受けていたのでそれが要因かもしれません」

「衝撃を与えればいいんじゃな!! 任せるのじゃ!!!」


 そう請け負ったリアは、右手に凄まじい勢いで煌々と魔力を集中させる!!!

 今までの鬱憤を晴らすぞ、と言わんばかりに魔力が高まっていく!!!


「それでどのくらいの衝撃を与えればいいのじゃ?」

「あの時はまず、両乳首を魔法ピッチングマシーンで滅多打ちにした後、落ちてくる隕石を受け止めてもらいました。その後、バネの要領で上空まで飛び上がったヴォルガーくんは隕石を空の彼方まで飛ばした後、地上に墜落しました」

「そんな衝撃再現したら先にこの宿が粉々になるじゃろ!!」


 リアはとりあえず溜まった魔力をヴォルガーの乳首に叩きつける!!


「お゛ぅっ♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛っっ♡♡ お゛っ♡♡」

「ええい、やはり催眠は解けておらぬ!!」


 傍らのギデオンは、隕石を受け止めたという情報を頭の中で逡巡させていた。


「ヴォルガーが隕石を受け止めたって、確か新聞に載ってた……。あの事件の裏でそんなことをやっていたのか……」


 至極真面目に市井の人々を救ってると思ったら、なんか変なことになっている。

 情報が増えたことで、ギデオンは却ってますますヴォルガーのことがわからなくなった。


「もしもこの状態が長く続くようなら……最悪の場合……乳首を切除するしかないかもしれません!!」

「お゛お゛お゛ぉぉんっっ!!??」


 あまりにも残酷で、しかし目を逸らすことのできない現実。

 ラピアはポロポロと涙を流し、ヴォルガーはお゛ぉんと悲しげなうなり声をあげる。


「いや……乳首の切除で解決するなら是非とも今すぐそうしてほしいんじゃが……」

「何を言ってるんだリア……例えヴォルガーの乳首であっても本人の望まない切除なんて……まぁ、う~ん……」


 いずれにせよ、ヴォルガーにもラピアにもその気が無いのでは仕方ない。

 リアはため息を一つついて、ラピアに提案する。


「ラピア、今度は妾がこやつを気絶させる。ついでに、こやつの猛り狂った魔力もなるべく押さえつける。じゃから、その間におぬしがこやつの身体を検査するのじゃ」


 そう言ってリアは両手の指先をピンと伸ばし、ヴォルガーの首筋に触れる。


「リア様……ありがとうございます!!」

「ヴォルガー、力を抜け!! 妾の術を受け入れるのじゃ!!」

「お゛ぉぉん♡♡♡」

「そんな気色の悪い受け答えがあるか!! ハァッッ!!」


 バチバチバチィィィッッッ!!!!


「お゛ぉぉぉんんんッッッッ♡♡♡♡!!???」


 ヴォルガーは気を失った。


「さぁ、今のうちじゃ!!」

「はい!!」

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