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ep.12『追憶』③

***


「まさか、あたしが世間から離れてる間に新しい魔王が出てきたとはね……」


 誤解の解けたラピアとルカは、家に招かれ茶を振る舞われていた。


「魔王を倒す旅をしてるって話だけど……あんたが勇者っていうわけじゃなさそうだね。暴食の霊剣グレイブ・オブ・グラトニーも持ってないし」


 ラピアを見てそう判断したナディは、続けてルカに目をやる。


「あんたに関しちゃ、そもそも冒険者じゃなさそうだ」

「ご明察ッス。自分はただのしがない新聞記者でして、是非とも魔王討伐経験者であるナディさんからお話を伺いたいと……」

「面倒だ。パス」

「そ、そんなぁ! せっかくこうしてお会いできたのに!!」

「あんたら、そんなどうでもいい用件でこんな遅くに訪ねてきたってのかい?」


 そう問われたラピアは、改めてナディに向き直る。


「……実はナディさんに、はぐれた仲間を捜すお手伝いをしてほしいんです」

「なるほど……そいつが今の勇者なのかい?」

「いえ、勇者のギデオンさんとはその、訳あって別行動をしていまして……。私が捜しているのは、格闘家のヴォルガーという男の子です」

「格闘家の……」

「ナディさんのパートナーだった、開天盤古さんの弟子です」


 そう聞いた途端、ナディの体はびくっと反応した。


「……そうか、あいつの。時期的には多分、あいつが最後に残した弟子なんだろうな」

「はい、その一人です」


 ナディはしばし、遠い眼をして物思いに耽っている様子であった。


「……わかったよ。探知するための魔力を貸しゃあいいんだろ。そのくらいならやってやるさ」

「ありがとうございます!!」


 ラピアは深々と頭を下げると、革袋を漁り始める。


「それでは、場所のイメージを明確にするためにこの近辺の地図を……」


 そういって、革袋の中から宣言通りに地図を取り出す。

 地図は長い筒状に丸まっていた。


「……んっ? なんかおかしくないか? 袋のサイズに対して明らかに地図が長すぎるような……」

「あっ、これはリア王女の開発した……後で詳しく説明します!!」

「あ、ああ、そうだな。まずはヴォルガーとやらの居場所を探知しよう」


 ラピアは広げた地図の、現在地にコインを置く。

 そしてナディと二人で、コインに魔力を込める。ヴォルガーの位置を探知しながら。

 二人の指が乗せられたコインはズズ……と少しずつ移動し、森を隔てた先にある都市を示した。


「あ……この街かぁ……」


 場所を確認したナディは思うところがあったようで、ぼそっと呟く。

 一方のラピアは、


「この街ですね!! それでは早速いってきます!! ありがとうございました!!」


 と飛び出していく!!!


「待て待て待て待て!!!」


 ナディの声に応じて家の中から伸びた蔦が、ラピアの体をお腹に巻き付いて拘束する!!!


「ぐえっっ!!」

「この街はちょっと特殊というか、金持ちが集まる街でな……許可が無きゃ入れないんだ」

「そんな!! じゃあどうすれば!!」

「こればっかりはしゃあない……あたしが取り次いでやるよ」

「本当ですか!!? ありがとうございます!! では早速いきましょう!!!」


 ラピアは走り出すが、蔦は変わらず彼女を拘束し続けている!!!


「ぐえぇっっっ!!!」

「落ち着け!! こんな時間だ、車だって捕まんねぇよ。明日にしてくれ」

「で、でも……」

「あたしも一緒にそのヴォルガーってやつを探知したけどよ、別に命の危険があるわけじゃなかっただろ?」

「それは……確かに、そうです」

「仮にもあいつの弟子で勇者パーティのメンバーなんだ。そうそう簡単に死にゃしないだろ」

「……そうですね、そうです。すみません、取り乱して」


 ラピアが落ち着いたのを確認すると、巻き付いていた蔦はその拘束を外した。


「この街から移動する様子も無さそうですし、準備を整えて明日迎えに行きます!!」

「ああ、そうしろ」


 落ち着いた途端に、ラピアのお腹がぐぅ~と音を立てた。

 ナディはそれを聞いて、ぷっと吹き出す。


「まったくしゃあねぇな……夜食を用意してやっからちょっと待ってな」

「へへ……お呼ばれいたします」


 ラピアは顔を赤くしながら頭を下げた。

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