ep.12『追憶』③
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「まさか、あたしが世間から離れてる間に新しい魔王が出てきたとはね……」
誤解の解けたラピアとルカは、家に招かれ茶を振る舞われていた。
「魔王を倒す旅をしてるって話だけど……あんたが勇者っていうわけじゃなさそうだね。暴食の霊剣も持ってないし」
ラピアを見てそう判断したナディは、続けてルカに目をやる。
「あんたに関しちゃ、そもそも冒険者じゃなさそうだ」
「ご明察ッス。自分はただのしがない新聞記者でして、是非とも魔王討伐経験者であるナディさんからお話を伺いたいと……」
「面倒だ。パス」
「そ、そんなぁ! せっかくこうしてお会いできたのに!!」
「あんたら、そんなどうでもいい用件でこんな遅くに訪ねてきたってのかい?」
そう問われたラピアは、改めてナディに向き直る。
「……実はナディさんに、はぐれた仲間を捜すお手伝いをしてほしいんです」
「なるほど……そいつが今の勇者なのかい?」
「いえ、勇者のギデオンさんとはその、訳あって別行動をしていまして……。私が捜しているのは、格闘家のヴォルガーという男の子です」
「格闘家の……」
「ナディさんのパートナーだった、開天盤古さんの弟子です」
そう聞いた途端、ナディの体はびくっと反応した。
「……そうか、あいつの。時期的には多分、あいつが最後に残した弟子なんだろうな」
「はい、その一人です」
ナディはしばし、遠い眼をして物思いに耽っている様子であった。
「……わかったよ。探知するための魔力を貸しゃあいいんだろ。そのくらいならやってやるさ」
「ありがとうございます!!」
ラピアは深々と頭を下げると、革袋を漁り始める。
「それでは、場所のイメージを明確にするためにこの近辺の地図を……」
そういって、革袋の中から宣言通りに地図を取り出す。
地図は長い筒状に丸まっていた。
「……んっ? なんかおかしくないか? 袋のサイズに対して明らかに地図が長すぎるような……」
「あっ、これはリア王女の開発した……後で詳しく説明します!!」
「あ、ああ、そうだな。まずはヴォルガーとやらの居場所を探知しよう」
ラピアは広げた地図の、現在地にコインを置く。
そしてナディと二人で、コインに魔力を込める。ヴォルガーの位置を探知しながら。
二人の指が乗せられたコインはズズ……と少しずつ移動し、森を隔てた先にある都市を示した。
「あ……この街かぁ……」
場所を確認したナディは思うところがあったようで、ぼそっと呟く。
一方のラピアは、
「この街ですね!! それでは早速いってきます!! ありがとうございました!!」
と飛び出していく!!!
「待て待て待て待て!!!」
ナディの声に応じて家の中から伸びた蔦が、ラピアの体をお腹に巻き付いて拘束する!!!
「ぐえっっ!!」
「この街はちょっと特殊というか、金持ちが集まる街でな……許可が無きゃ入れないんだ」
「そんな!! じゃあどうすれば!!」
「こればっかりはしゃあない……あたしが取り次いでやるよ」
「本当ですか!!? ありがとうございます!! では早速いきましょう!!!」
ラピアは走り出すが、蔦は変わらず彼女を拘束し続けている!!!
「ぐえぇっっっ!!!」
「落ち着け!! こんな時間だ、車だって捕まんねぇよ。明日にしてくれ」
「で、でも……」
「あたしも一緒にそのヴォルガーってやつを探知したけどよ、別に命の危険があるわけじゃなかっただろ?」
「それは……確かに、そうです」
「仮にもあいつの弟子で勇者パーティのメンバーなんだ。そうそう簡単に死にゃしないだろ」
「……そうですね、そうです。すみません、取り乱して」
ラピアが落ち着いたのを確認すると、巻き付いていた蔦はその拘束を外した。
「この街から移動する様子も無さそうですし、準備を整えて明日迎えに行きます!!」
「ああ、そうしろ」
落ち着いた途端に、ラピアのお腹がぐぅ~と音を立てた。
ナディはそれを聞いて、ぷっと吹き出す。
「まったくしゃあねぇな……夜食を用意してやっからちょっと待ってな」
「へへ……お呼ばれいたします」
ラピアは顔を赤くしながら頭を下げた。




