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ep.12『追憶』②

***


「はぁ……はぁ……」


 ラピアが息を切らしながら走る大通りは、パレード二日前の夜。

 50年以上続く伝統あるこの祭は数日に渡って催され、本番のパレードの前から屋台は大量に並んでいた。

 魔力の探知でヴォルガーを探すラピアは一旦足を止め、目に付いた屋台の店主に尋ねてみる。


「すみません!! この通りをSEXYな男の子が通りませんでしたか!!??」

「ああ、その人ならここを猛スピードで走り抜けていったよ」

「ありがとうございます!!!」


 理由はわからないが、ヴォルガーがラピアから離れていく速度が突然上がった。

 あまり離れすぎると正確な位置もわからなくなる。できる限り早く合流したかった。

と、考えていたラピアはふと気がついた。

 この街は、ヴォルガーと共に目指していた目的地の近くだ。

 近くの森に、ヴォルガーの訪ねたい人が住んでいるはずだった。

 その人に協力してもらった方がヴォルガーも確実に見つかるに違いない。

 しかし、ヴォルガーがいない以上その住所はわからない。

 有名人のはずだから、誰かに尋ねればわかるだろうか?

 そんな風に考えながら立ち止まっていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。


「あっ、もしかしてラピアさんッスか!?」


 声の方に振り向いてみれば、新聞記者のルカであった。


「ルカさん!? どうしてここに!?」

「自分はもちろん取材のためッス! ラピアさんは……ヴォルガーさんとは一緒じゃないんスか?」

「それがその、はぐれてしまいまして、探しているうちにこの街に……」

「ええっ、大丈夫なんスか!?」

「ヴォルガーくんに限って、それほどの危険は無いとは思いますが……あ、そうだ!」


 新聞記者のルカであれば、ラピアの探している人についても何か情報を持っているのではないか。そう思いついた。


「ルカさん、ナディさんについて何か知ってませんか!? 昔、ヴォルガーくんの師匠と一緒に戦っていたあの――」

「知ってるも何も、その人に取材したくてここまで来たんスよ!」

「ほっ、本当ですか!?」


 なんという奇遇か。ラピアはこの機会を逃すまいとルカに迫った。


「住所もわかりますか!? 今すぐ会いたいです!!」

「い、今からッスか!?」

「緊急事態です!!」

「そういうことなら了解ッス! でも、正直なところ自分もアポがあるわけじゃないんで、あんまり期待はしないでほしいッス」


 なんでもルカも、住所を突き止めただけで連絡は取れてないらしい。

 というのも、ナディはここしばらく人間との交流を断っており、ルカが手に入れた住所に住んでいるかさえ定かではないという。

 それでも、ルカの所属する新聞社としてはできれば取材のしたい相手だ。

 魔王軍との戦いが続くこの世の中で、かつての英雄ナディの言葉を求める人間は少なくない。

 とにもかくにも、ラピアはルカとともにその住所まで行ってみることにした。


***


 森の中、まだ祭の喧噪が聞こえるほどの位置。

 そこに湧き出る泉が、ナディの住居の目印であった。

 ……と、いうのがルカの掴んだ情報なのだが、肝心の住居はどれだけ見回しても見つからなかった。


「う~ん……参ったッスね。場所を間違えたのか、それともこの住所にはもう住んでないのか……」

「……いえ、ここで合ってると思います」

「へ? でもそれらしい建物はどこにも……」


 ラピアは近くに咲いていた花を一輪摘むと、ふーっと息を吹きかけた。

 すると、白い花弁はふわふわ風に乗って飛んでいき、しばらく辺りを漂ったかと思うと、透明な壁に張り付いたかのようにぴたっと動きを止める。


「んっ!? その花、どうなったんスか?」

「ルカさん、私と手をつないでください」

「は、はいッス」


 ルカは言われるがままにラピアと手を繋ぐ。

 そしてラピアは、白い花弁の張り付いた透明な壁に手を触れた。

 するとその途端、今まで見えなかった一軒の家屋が現れた。

 ずっとその場所にあったかのだから、あるのが当然だという自然さで。


「ええっっ!!? いつの間にこんな、ええっ!!?」

「どうやら、認識阻害系の結界が張られていたみたいですね。私には見破れなかったので、代わりにお花に探してもらいました」


 よくよく見てみれば、その家は不思議な形状をしていた。

 木材を組み合わせたのではなく、太い樹木をくり抜いて居住スペースを作ったかのような姿であった。

 ともかく、住居を見つけることには成功したので、ナディを訪ねてみよう。

 とラピアが考えていると……突然、その手に蔦が巻き付いた。


「ッ!?」

「な、なんスかこれっ!?」


 両手の自由を奪う蔦の巻き付きは固く、容易に破れそうもない。

 どう対処しようかとラピアが考えていると、蔦を操った張本人が扉を開けて現れた。


「一体全体どこのどいつだい? まったく、こんな時間に結界を破りやがって!!」


 そこにいたのは、間違いない。

 金色の髪に翡翠色の瞳、そして長く尖った耳。

 ラピアもルカも、幼い頃から様々な書物で何度もその姿を見てきた偉人――ナディその人であった。


「やっ、夜分遅くに申し訳ありません!! 私、ラピアと申しまして、魔王アゥリマを倒す旅をしている者です!!」

「……は? 魔王?」

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