ep.11『競売』⑦
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「ヒョーッヒョッヒョッヒョッ!!! キリキリ歩かんかぁッッ!!!」
「ぐおぉぉぉぉ……!!」
石畳の大通りを上半身裸で、屈辱の四足歩行を強いられるヴォルガー・フィルヴォルグ!!
その背中に跨がる777番……これ程までに異様な乗馬が未だかつてあったであろうか!!??
思い思いの日常で街を過ごす民衆も、この凄まじい光景は無視できずにざわざわと騒ぎ始める!!!
「ママー!! あの人すごくSEXYだよー!!」
「こっ、こらっ!! 見ちゃいけません!!! 代わりにママが目に焼きつけておきます!!!」
ヴォルガーはこの辱めに耐えながら、必死に訴えかける!!
「おっ、俺はこんなことをしている場合では……魔王軍と戦い……」
「えぇい!! まだ言うか!!!」
777番は怒りとともに、黒い棒から迸る電流をヴォルガーの右乳首に叩きつける!!!
バチバチバチィィッッ!!!
「お゛お゛んんっっ♡♡♡」
「せっかくじゃ!! この街の空をよーく見てみるんじゃ!!!」
ヴォルガーは777番に促されたとおり、街の空を見上げる。
街は高い壁に囲われていた。明らかに、モンスターの襲撃を防ぐための設備であった。
そして壁に切り取られた空は、蒼い――が、その蒼さにぼんやりと、膜のようなものが見えた。
「あれは……結界?」
「そう!! 常に壁と結界に守られたこの街は絶対安全なんじゃあっ!!!」
「ご老人!! この世に絶対的な安全など存在しない!!!」
「えぇい!! 黙らんかこのSEXY BOYがっ!!!」
バチバチバチィィッッ!!!
「お゛お゛んんっっ♡♡♡」
「よいかSEXY BOY、この街を守る結界はただの結界ではないんじゃあ!!! 設計したのは、なんとあの――」
と、777番が言い掛けたところで空の景色に異変があった。
空を舞う大型の飛竜が、ちょうど天井の結界に近づいていたのだ。
「ヒョヒョッ、こりゃナイスタイミング!! あのモンスターを見ればわかるぞい!! この街がどれだけ安全か!!」
飛竜がぶつかると、結界にはバチバチと電流のようなエナジーが走る。
衝突を検知して、そのポイントに重点的な魔力を送るシステムであった。
飛竜が何度ぶつかっても、結界はエナジーが走るばかりで破れる気配を見せない。
「ヒョーッヒョッヒョ!!! ご覧の通りの頑丈さじゃぁ!!!」
777番が勝ち誇ったような顔で空を見上げていると……異変は、地上で始まった。
空は変わらず蒼く輝いているが、街が突然、少しだけ暗くなったのだ。
「……あれっ、ランプが急に消えたぞ。故障か?」
「こっちの店もだ!」
「こっちじゃ釜の火が消えた! 魔力が来てないみてぇだ!」
「トイレが流れねぇぞどうなってんだ!!」
大通りに並ぶ様々な店や住宅……その中を照らすランプが、一斉に消えたのだ。
その異変はランプだけでなく、魔力を使用する様々なものに及んでいた。
この急な異変は街の日常を不便なものにしたが……それだけでは収まらなかった。
ガシャンッッ!!!
「ヒョ?」
777番の見上げる先……飛竜の衝突する結界に、確かにヒビが入っていた。
ガシャンッッ!! ガシャンッッ!!
飛竜は何度も衝突を繰り返し、その度にひび割れは大きくなる。
777番だけでなく、多くの住民がその異変を見上げていた。
そして、住民達が不安を口にするよりも先に――
ガシャァァァァンッッッ!!!
結界は、崩れた。
「キャァァァァァァァァァッッッッ!!!!」
瞬く間にパニック状態へ突入する街!!!
住民達は、我先に逃げようと走り出す!!!
「いっ、いかん!! ワシらも逃げ――」
「待ってくれご老人!! 戦わせてくれ!!!」
「ヒョッ!?」
「俺なら倒せる!! この街を守れる!! だからどうか――」
「……わかった!! 頼んだぞい!!」
777番はヴォルガーの背中から飛び降りると、背中についた錠に鍵を差して回す!!
ヴォルガーを操る拘束具には体の前と後ろ、二つの錠がついており、その片方がこれで解放された!!!
「行ってくれぃ、SEXY BOY!!」
「無論だ!!!」
ヴォルガーが見上げれば、上空の飛竜は口腔を朱々と光らせ、今にも街を灼かんとする様子であった。
昨夜の戦いで散々なダメージとデバフを負ったヴォルガー。
オークションの前にある程度の回復は受けていたが、まだまだ万全とは程遠い状態だ。
――今思えば、回復を施したのは外見を整えたうえで出品するためであり、内側の治癒が不足しているのは万が一にもヴォルガーが拘束を破ることを恐れたためであろう。
しかし、今ヴォルガーが戦うには十分だった。
人々を守るためには、立ち上がらねばならない……それだけで、ヴォルガーは拳を奮うことができた。




