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ep.11『競売』②

***


 改めて、魔力の込め終わったパーツを防具として組み立てていく。

 パーツは全部で三つ。今回魔力を込めていた細長い金具と、四角い枠のような形をした金具に、黒く細長い動物の革だ。

 改めて見てみると、黒い革もヴォルガーには見覚えがあった。

 三つ揃うと、完成形がベルトであることは容易に想像がついた。サイズ感の小ささから察するに、腕か脚に巻くものだろうか?

 そしてラピアはテキパキとベルトを組み上げていく。

 どうやら、組み立ての段階にはそれほどの集中力と気合いはいらないようであった。

 生物の傷を塞ぐのと同じように、黒い革を自在に癒着させ、金具と合わせてベルトを形作っていく。

 シンプルな作業ではあったが、その手つきはやはり正確で丁寧だった。

 パーツの完成には十年以上かかったという話であったが、組み立てはあっという間に終わった。


「わーっ!! ついに完成しました~!!!」


 ラピアは大喜びで黒いベルトを高々と掲げた。


「ハハハ、また鳥にさらわれないようにしないとな」

「ふふっ、それじゃあ取られる前につけちゃいましょう!! ヴォルガーくん、しゃがんでください!!」

「……んっ? 俺にくれるのか?」

「当たり前じゃないですか!!」

「そ、そうか……ありがとう」


 ラピアの作った防具であれば信頼できる。それを貰えるのは非常に心強い……それは間違いなかった。

 しかし……十年。

 十年以上かけて作ったものをこうあっさりと貰うというのは、なんだか気が引けるものだった。


「なんといっても私が十年以上かけて作り上げたものですからね!! 効果覿面ですよ!!」

「う、うむ……その点はもちろん信頼している……」


 ヴォルガーがしゃがむと、ラピアはその首に手を伸ばす。ベルトを近づけていく。

 なるほど、このサイズは首に巻く用だったのか……というのは納得がいく。

 その納得とは別に……巻かれていく程に、ヴォルガーは肩に感じる重みが増していくようだった。

 それは小さなベルトに込められたラピア十数年分の魔力を感じてのことだろうか。

 あるいは……ラピアが十数年で込めた別のものを感じ取ったせいだろうか。

 その判断もつかないうちに、黒いベルトはヴォルガーの首に巻き付き、絡みついていく。

 それはただ、皮膚に何かがくっついているというだけではなく……ピッタリと、体と一体化したような奇妙な感覚を覚えるものだった。

 それ故、素肌に巻かれているにも関わらず異物感や不快感といったものは一切無い。

 しかし、それよりも遙かに……何か重要な違和感をヴォルガーに覚えさせるものであった。


「はい、つけ終わりましたよ!!」


 やっぱり断る……という意思をヴォルガーが示す間もなく、装備は完了した。

 完了した……その瞬間

 ラピアが突然首に抱きついてきた!!!


「おわぁぁっっ!!?」


 驚いて尻餅をつくヴォルガー!!

 しかし、改めて前を見ればラピアは抱きついているということもなく、ベルトを装備したときのままの姿勢であった。


「ラ、ラピアさん……? 今、俺に抱きついて……」

「もっ、もうヴォルガーくんったら!! 私にそんな大胆なことできるわけないじゃないですか!!」


 ラピアは赤面して照れながら、しかしどこか嬉しそうに否定する。


「いや……だがさっき、確かにそんな感覚が……」

「ふふっ、それはそのベルトの影響ですね!!」

「え゛っっ!!??」


 頼れる装備に違いないと思っていただけで、そんな影響は全くの予想外であった。


「なんといっても十数年分のアスクラピア・パイエルオンが込められていますからね!! これからは常に私が傍にいるような気持ちが味わえますよ!!」


 ラピアは親指をグっと立てて『どうです嬉しいでしょう』というような顔で笑いかけてくる。


「な、なるほど……そうか、そうなるのか」


 受け入れがたいが納得はした……せざるを得なかった。

 ヴォルガーはベルトに手をかけ、一旦外そうとする。

 すると……ヴォルガーの視界を大量のラピアが埋め尽くした!!


「うお゛わっっ!!!??」

「大丈夫ですかヴォルガーくん!!」「外そうとしなくても大丈夫ですよ!!」「痒かったですか?」「身体と一体化してるので大丈夫なはずですが……」


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!!! ラピアさんが増殖した!!!」

「ヴォルガーくんが間違えて外そうとするから、心配で溢れちゃったんでしょうね!!」

「あ、溢れる!!?」


 何か知らないが怖い響きだ!!

 しかしヴォルガーは改めて、ベルトを外そうと手をかける……その最中に、ふと思い至る。

 先ほどの増殖したラピア、何か恐ろしいことを言っていたような……?


「ちなみにそのベルト、私の魔力が詰まってるおかげでよっぽど離れない限りヴォルガーくんの居場所を探知できます!!」

「そ、そんな……しかしこれ、どうやって外せばいいんだ……ラピアさん」

「安心してください!! 死ぬまで外れませんよ!! それに――」

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 ヴォルガーは駆け出した!!!


「あっ、ちょっ、そんなに照れないでください――」


 ラピアの声は瞬く間に遠ざかっていく!!!

 間違いなく離れている、離れているはずだが、しかし……


「ヴォルガーくん」

「ひぃっ!!」


 時折ラピアの声が聞こえてくるのだ!!!

 ラピアの追いつけない爆速で猛ダッシュしているのに、まるですぐ傍に寄り添っているかのようなその声!!

 だから、本人から離れても意味はない……意味はないが、離れたかった!!

 いや、意味はある!!

 改めてラピアの言葉を思い返してみれば『よっぽど離れない限り居場所を探知できる』と言っていた!!

 よっぽど離れなければ!!!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

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― 新着の感想 ―
ラピアの存在が普通にホラー過ぎる……
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