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ep.9『同窓』後半 ⑥

***


 留置所の床は、固く冷たい。

 厳密にいえば、留置所に入れられた人間はその時点ではまだ罪人と確定したわけではない。

 その知識はソスランの中にあったが、現実にはどの職員も被疑者を犯罪者としてぞんざいに扱った。

 あるいはソスランは、ほぼ100%有罪の人間だけが集まるグループに入れられたのかもしれない。

 いずれにせよ、ソスランは自分の待遇に異議を唱えるつもりは一切無かった。


「……なぁあんたよぉ、開天流の高弟だったって本当なのかい?」


 やせ細った老人が、げびた笑いを浮かべながらソスランに話しかけてくる。

 すると、周囲の人間もニヤニヤとソスランを嘲り始める。


「開天流ってこたぁ、あの伝説の英雄・開天盤古が最後に残したお弟子さんってことかぁ」

「弟子がこんなに立派になって……あの世のお師匠さんも、さぞかし誇らしいことだろうよ」


 ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!


 留置所の一室は、冷たく辛辣な笑いに包まれた。

 しかし、ソスランはそれに一切不満はない。

 自分は、嘲笑われるだけのことをした。

 ただ……開天流の名前を汚してしまったことは、師匠に対しても、同門の仲間達に対しても、支えてくれていた人達に対しても申し訳なかった。


「黙りやがれクズども!! 消灯の時間だ!!!」


 職員がガラガラと音を立てながら鉄格子を開け、乱暴に毛布を放り投げていく。

 職員から渡された薄い毛布をソスランも受け取る……が、それは突然横からひったくられた。


「あっしはご覧の通り貴方と違ってペラッペラの細い身体をしているもんでね……毛布の一枚くらい恵んでくださいよぉ……げへへ……」


 ソスランの毛布を奪った痩せぎすの老人は、下卑げびた笑いを浮かべて二枚分の毛布にくるまる。

 周囲の被疑者達も同様にニヤニヤとソスランを嘲り、職員もこのトラブルを無視して踵を返した。

 このような理不尽に対しても、ソスランは憤る気にはなれなかった。

 冷たい夜の空気に身を晒しながら、ソスランは今日の出来事を振り返った。


 オグニとヴォルガーが自分の犯行現場に居合わせたことは、凄まじい偶然であった。

 そして、今にして思えば……とてつもない幸運でもあった。

 二人のおかげで、自分は本当に取り返しのつかない罪を犯す前に裁かれることになったのだから。

 できることなら、今すぐ留置所を出て二人を……特に、魔王との戦いに挑むヴォルガーを助けたい気持ちがあった。

 しかし……その気持ちは、本当であればここまで堕落する前に抱くべきものに違いない。

 今の自分が、改心した、助けたいなどと口にすることはあまりにも烏滸おこがましい。

 これから先自分は、裁判に出廷し、有罪判決を受け、刑務所に入獄することになる。

 苦しい。悔しい。しかしそれでも、人々を救う戦いに身を投じるのはその後でなければならない。

 今の自分がやるべきことは、きちんと裁きを受けることだ。

 そのためにできる目先の行動は、しっかりと睡眠を取ること以外になかった。


「日課の乳首開発を終わらせて今日はもう寝よう……」


 ソスランが黒いタンクトップを脱ぎ捨てると、女性的に肥大化した艶やかな桃色の乳首が露わとなった。

 暗く冷たい留置所の空気に晒され、双の乳首は刺激を受けるまでもなく隆々と勃ち上がっている。

 道場にいた頃から愛用していた最高級の軟膏、不死鳥(フェニックス)の涙――そんな上等なものは、ソスランの手元には存在しなかった。

 ソスランは素手で、何にも守られないありのままの自分で、乳首と向き合うこととなった。

 考えてみれば……こんなことは初めてかもしれない。


 いくらでも遊べるような遺産とともに道場を出たソスランは、多種多様な方法で乳首を開発することを覚えてしまった。

 高圧電流、ソフト毒針、ヒートウィップ、ケセランパセラン……

 高額のオプションに惜しみなく金をつぎ込み続け、あっという間に多額の借金を背負うこととなった。

 そんな自分が今、なんの道具も使わず、軟膏すら塗らず、正真正銘ありのままで乳首と向き合っている……。


 既にはちきれん程固くなっている乳首、その先端の先端に、ソスランはそっと指で触れる。


「んっ♡」


 甘い声が漏れるとともに、冷たい留置所が少しだけ暖かくなったような気がした。


 そうか、これは自分自身を、乳首自身を取り戻すために必要な儀式だったのだ!!

 道具に頼らず自分の力で乳首を刺激するという、本来の形を思い出すための時間なのだ!!

 ソスランは雷に打たれるように唐突に気がつき、そして確信した。


 そんな確信のままに指先で、ゆっくりと円を描くように乳首を回していく……。


「んっ♡ んぉ……っ♡♡」


 徐々に高まっていく感度と、上昇していくソスランの体温。

 乳首を発端として全身に、隅々に、じわじわと快楽の根を伸ばしていき……指の先まで届くほど伸びきったところで……一気にいじり回していく!!!


「お゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ お゛お゛っ♡♡♡ んお゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛っっっっ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ お゛お゛っっっっ♡♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛っっっっ♡♡♡♡♡♡」


 留置所の静寂を突き破りソスランの喘ぎ声が鉄格子を揺らす!!!!

 冷たかったはずの体が、心が、急激にその核から熱を帯びていく!!!!

 高額オプションによる乳首開発では得られなかった何かが、表面的な快楽よりも遙かに重要な何かが、ソスランの精神を満たしていく!!!

 悦楽にとろける脳髄は改めて確信した!!!

 ソスランが裁きを受け、罪を改め、再び正義の戦いに身を投じるために必要なものは……乳首開発を置いて他には無いと!!!!


「おっ、おい!! 頼むからやめてくれぇぇ!!!」

「悪かった!!! あっしが悪かったから!!! 謝るから!!!」

「お゛っ♡♡ お゛っ♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛っ♡♡♡♡♡ んお゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛っっっっ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛お゛っっ♡♡ お゛っ♡♡ んお゛っ♡♡♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛っっっっ♡♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡ んお゛っっっっ♡♡♡♡♡」


 この喘ぎ声が回答だ!!!

 下卑た罪人達にも伝わるだろう、この乳首開発を止める術などどこにも無いということが!!!!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ何やってんだ黙れ黙れこのクズめがっっ!!!!」


 屈強な職員が数人、ソスランの乳首開発を阻むべく鉄格子を超えてやってきた!!!

 その手に携えていたのは……高圧電流を誇る警棒であった!!!


「大人しくしやがれ変態野郎がぁぁッッッッ!!!!」


 狂乱の宴を止めるべく、次から次へと肉厚な乳首に電流を浴びせる職員達!!!


「んお゛お゛お゛お゛お゛っっっっっっ♡♡♡♡♡」


 しかし、奮戦も虚しく彼らの攻撃は乳首に更なる刺激を与えるばかりであった!!!

 それにしても、ソスランが着のみ着のまま以前の状態で乳首と向き合っている時間に無断で高額オプションを押しつけてくるとは、なんと無粋な輩であろうか!!???


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! やめろっっ!!! やめてくれぇぇぇぇぇ!!!!」


 職員達がどうあがこうと、ソスランによる盛大な乳首開発を止めることはできない!!!

 何故なら、脱走者に対しては二重三重の対策を施した留置所であっても、乳首開発者に対してのマニュアルは一切持ち合わせていないからだ!!!!!

 何者にも止められず、乳首開発は本能のまま高らかに続いていく!!!!


「お゛っ♡♡ お゛っ♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛っ♡♡♡♡♡ んお゛っ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛っっっっ♡♡♡ お゛っ♡♡♡ んお゛お゛っっ♡♡ お゛っ♡♡ んお゛っ♡♡♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛っっっっ♡♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛お゛っ♡♡ んっっ♡♡♡ んお゛っっ♡♡♡ んお゛お゛お゛っっっっ♡♡♡♡♡」


 ソスランは更正した。



≪続く≫

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