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ep.9『同窓』後半 ②

「この神殿、造りも由来もダンジョンと同じタイプか」


 階段を猛スピードで駆け下りながら、ヴォルガーは頭の中の知識を引っ張り出してオグニに問う。


「ああ、昔は実際ダンジョンとして冒険者がよく挑んでたらしいぜ。神殿として祀られるようになったのは、攻略して神の力を解放したやつが現れたからだ」

「それが村で信仰されている豊穣の神、というわけか……」


 侵入を防ぐために複数地点で結界により封鎖されているこの神殿だが、盗賊が結界に阻まれて諦める展開は望み薄だという。

 そもそも侵入の報が飛んできたのは、最初の結界が破られたためだ。

 予期せぬ結界の解除があれば、村から確認できるシステムとなっていた。

 そしてこの神殿は、祭などの際には一般開放される。

 そのため一般人でも参拝できるよう一本道に整備されており、結界さえ超えられるのであれば最奥への侵入も容易だ。

 結界に頼れない以上、ヴォルガー達が力ずくで止める他ない。


 盗賊の狙いは恐らく、神殿の最奥に祀られている御神体だ。

 それさえ手に入れば空間魔法で脱出……というケースを想定しておくべきだろう。

 ヴォルガーとオグニは、盗賊達が目的を果たす前に追いつく必要があった。

 後から出発した二人が盗賊達に追いつける可能性があるとすれば二つ。

 一つはシンプルに、二人の方が盗賊達より速い可能性だ。

 SSS級格闘家である二人の脚力であれば……とは思うが、向こうにもかなりの実力者がいることが確定している以上、油断はできない。

 もう一つは、結界の突破に時間がかかるパターンだ。

 こればかりは、とにかく遅いことを願うしかない。

 いずれにせよ、二人にできる対応は追いついて倒すことのみ。

 全力疾走で神殿を駆け抜け、一つめの結界に辿り着いた。

 盗賊によって破られた結界……その跡を見て、二人は驚いた。


「こりゃ、想像してた破り方とはちょっと違うな……」


 光の壁のような結界は、ガラスを粉砕するように砕かれていた。


「まさか……力ずくとは」


 想像していたのは魔法による結界の解析と分解だ。それが二人の知る、一般的な犯行方法だ。

 もちろん、物理的に干渉できる以上、結界を腕力で粉砕することは不可能ではない。

 不可能ではないが、現実的でもない。

 第一、そこらの金持ちが防犯のためにつけるようなものではなく、神の力を借りながら張った結界なのだ。


「もしもこれを一人でやったなら、俺達と互角でもおかしくねぇな……」


 ヴォルガーとオグニは改めて覚悟を決める。

 ……その一方で、嫌な予感も頭を過ぎった。

 これだけの実力を持った人間というのは限られる。

 その正体は果たして……二人の知らない人間なのだろうか。


***


 二枚目の結界も同じように破られていた。

 一枚目の結界が破られて(それを村で確認して)からこれまでに経過した時間を考えると、敵の結界突破にかける時間は相当短い。

 解析・分解によって突破するのにかかる一般的な時間と比べると、その短さは脅威であった。

 ヴォルガーとオグニも、想定以上のスピードで駆ける必要に迫られた。

 御神体を直接覆っているものを除けば、この神殿を守る結界は合計三枚。

 残りの一枚を今まさに突破している可能性は否定できない……そう考えると猶予は無かった。


 猛ダッシュで駆け抜けた二人は、大広間へと出た。

 かつてこの神殿がまだダンジョンだった頃、この広い空間には冒険者を試すように巨大なゴーレムが立ち塞がっていたという。

 更に昔、神々の時代(ゴールデンエイジ)に神がこのダンジョンを建立したとき、何を目的としてこの大広間を作ったのかは定かではない。

 そしてこの大広間の向こうにこそ、御神体の祀られる最奥の部屋は存在した。


 ガシャァァァァァンッッッッ!!!!!


 大広間に出た二人を待ち受けていたのは、ガラスが割られるような激しい破壊音。

 そして、今まさに結界を破壊したばかりの盗賊団であった。

 破壊役と見られる男は右腕に装着していた無骨なガントレットを外し、ヒーラーからの治療を受けているところだ。

 やはり、結界を腕力で破壊するとなると無傷ではいられないのだろう。

 しかし、そのようなことは二人にとってどうでもよかった。

 二人にとって何より重要なのは……結界を破壊した、その男であった。


「……なっ、なんで君達がここに」


 先に口を開いたのは、結界を破壊した男の方だった。


「……そりゃあ、こっちの台詞だぜ、ソスラン」

「結界を力ずくで破壊できる人間……ただ者ではないと思っていたが」


 赤毛と楕円形の眼鏡が特徴の、隆々とした筋肉を誇る巨漢。

 ヴォルガーとオグニが睨む先に立つのは……修行をともにしたかつての盟友(とも)、ソスランであった。

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