ep.9『同窓』後半 ①
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(前回までのあらすじ)
開天流道場で修行した同期の格闘家・オグニと再会し、旧交を温めるヴォルガー。そこで、かつては同期の中でも真面目だったソスランが堕落していたことを知る。
強さの高みを志した自分たちは、果たして内なる弱さに目を向けていたのだろうか……。
苦悩を心に抱えながらも二人は、乳首を開発する。どんなに時が経っても、立場が変わっても、これだけはやめられない。
乳首を発端として全身に駆け抜ける電流のような快楽……そこには善も悪も正も邪も存在しなかった。ただ、血の煮えたぎるような『熱』だけがそこにあった。
そして襲い来る謎のモグラ型魔族・モグラス……。
音を辿り、地下から暗殺しようという卑怯極まりない戦法。しかし、悪には悪なりの決意がある。覚悟がある。
爪の一撃に己の矜持と魂を込め、ついに地上へ飛び出したモグラス!! 彼を迎え撃ったのは……二人の荘厳なる喘ぎ声であった!!
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なんという皮肉か。人類を遙かに超えたモグラスの聴力は二人の喘ぎ声、その衝撃と威力を膨大に増幅させて受け止めた!!
破れる鼓膜、かき乱される脳髄、砕け散る頭蓋骨!!
哀れ、モグラスは一瞬のうちに絶命した!!
そして飛び起きる二人の闘士!! 例え乳首開発に勤しんでおろうと、戦いで磨き上げた感覚は魔族の襲来を敏感に捉えた!!
しかし、そこに待ち受けていたのは息も立てず地に伏した哀れな亡骸……。
「し、死んでる……!!」
敵の絶命を確認したヴォルガーは思う。
「こいつは一体何がしたかったんだ……?」
考えても答えの出ない問い。
夜も遅いので、とりあえず魔族は出てきた穴に突っ込んどいて乳首開発を再開する!!!
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(前回のあらすじ終わり)
カランカランカラン、とドアベルが激しく揺れる音に目を覚ますヴォルガーとオグニ。
窓の外を見てみれば空はまだ薄暗く、起床には早い時間だ。
「何かあったのか……」
不安そうに呟いて立ち上がるオグニ、それに続くヴォルガー。
覚醒したヴォルガーの目に飛び込んできたものは……床の穴に突っ込まれたモグラ型魔族の亡骸であった!!!
「うおっっ!!! なんだこれは!!!」
「落ち着けヴォルガー!! そりゃお前が突っ込んだ魔族だ!!」
「えっ!!? あっ、ああ、そうか。そうだったな」
落ち着きを取り戻したヴォルガーは、オグニとともに玄関に向かう。
杞憂であることを願う二人だったが、ドアを開けた先にいた村人は緊急事態を告げてきた。
「大変だオグニっ!! 森の神殿に侵入者が現れたぞ!!」
「なんだって!?」
詳しい事情を知らぬヴォルガーにも、即時の対応が必要であることは明白だった。
同じくドアベルの音に目を覚ましたラピアも含め、三人で神殿に向かう。
その道中で、オグニから事情を聞いた。
「実は最近、この村の付近を怪しい連中がうろついててよ……」
ヴォルガーと再会したときも、オグニはパトロールの途中だったらしい。
仮にその怪しい連中が盗賊だったとして、狙いが村か神殿の二択であることは明らかであった。
そのため、村はもちろん神殿の警備も手厚くしていたのだが……こうもあっさり破られたことを考えると、相手はなかなかの手練れらしい。
三人が神殿に到着すると、五人いる警備員は全員縛られていた。
両手、両足に加えて口も塞がれていたが、パッと見の外傷は大したことはものではなさそうであった。
ラピアの見立てでもやはり、ダメージそのものは大きくない。
しかし、考えようによってはそれがむしろ恐ろしかった。
大陸最大の農耕地、それを支える神殿……その警備に選ばれるほどの実力者五人を、あっさりと無力化したということなのだ。
「傷跡から読みとれる攻撃の癖が同じ……皆さんと戦ったのは一人だけじゃありませんか?」
ラピアが意識のある警備員に尋ねると、やはり読み通りであった。
「あ、ああ……そうなんだ。盗賊は複数人のグループなんだが、その中の一人にやたらと強いやつがいて……俺達全員あっさりやられて、あっという間に縛られたんだ……」
ラピアは負傷した警備員達の治療のため一旦この場に残り、神殿内部へはヴォルガーとオグニが向かうことになった。
この神殿は地上からは入り口しか見えない造りになっており、内部へ行くには地下深くまで潜る必要があった。




