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ep.9『同窓』前半 ③

 ひとしきり笑った後で、オグニは二人に向けて尋ねる。


「んで、二人はいつ結婚するんだ? やっぱり魔王を倒した後になるのか?」

「ん゛っ」


 思いも寄らない方向からの問いかけに、ヴォルガーはいきなり頭を小突かれたような気分になった。


「そっ、そういう具体的なところはやっぱりこう、ヴォルガーくんの方から……ね?」

「違う違う!! オグニ、婚約がどうとかはラピアさんが勝手に言ってるだけなんだ!!」

「ハハハッ、照れてる!!」

「照れてますね!!」

「照れてるという概念は万能じゃない!! 大体オグニ、俺が恋だのなんだのとは無縁なのはお前だってよく知ってるだろう!!」

「おいおい、そりゃあ嘘だぜ! 聞かせてくれたことがあったじゃねぇか、道場に来る前の初恋の話をさぁ!」


 ヴォルガーはうんざりした気持ちを長いため息とともに吐き出して反論する。


「あれは小さい子供の頃の話だ!! 何回いじれば気が済むんだお前は!!」


 この話に及ぶと、ラピアがスン……と表情を止めた。


「ヴォルガーくんの初恋……」


 そして、しばし逡巡すると……


「私ですか!?」

「どうしてそうなるんだ! 時系列を考えてくれ!!」


 激論はヒートアップする一方に思えたが、ここでキッチンから呼び声が聞こえてきた。


「あーん、あなたー! ミートパイが重くて持てないわー!」

「やれやれ、言わんこっちゃない」


 オグニはキッチンへと赴き、しばらくすると山積みのミートパイとフレーダを連れて戻ってきた。


「まったく、焼き上がりくらい俺に任せてくれりゃいいのに」

「ふふふふ、ごめんなさぁい♡」


 言葉では謝っているが、フレーダはオグニの太い腕にしがみついて非常に幸せそうであった。

 それにしても、ヴォルガー同様に大食漢のオグニがいるためミートパイは大量であり、持ち運びが大変なのは自明であった。

 それでは何故、フレーダは最初からオグニに任せず後からキッチンに呼び出すような真似をしたのか……


(つまり、フレーダさんは妊娠による身体への負担を自分でも把握しきれていなかったのだな……。うぅむ、やはり子供を産むというのは大変なことなのだな)


 オグニの腕にしがみつく……というより、抱きついているフレーダを見ながら、ヴォルガーはしみじみと思った。


***


「この村の近くには豊穣の神様が祀られててよぉ、そこらの野菜とは味も瑞々しさも段違いなんだよ!! このミートパイだって真の主役はトマトとオニオンだぜ!!」


 そう誇らしげに語るオグニにとって、この村はすっかり故郷になっているようだった。

 そして、オグニの語ったとおりミートパイは野菜の旨味が溢れて絶品であった。

 しかし、ここで一つ問題が発生した。

 量が圧倒的に足りないのだ。

 フレーダとオグニ、二人の食卓であれば問題はなかったが、突然のゲスト二人もかなりの大食いであった。

 普段と同じ量の晩ご飯しか用意してないのにゲストに振る舞えばこうなる……とはいえ、フレーダの計算違いを責めることはできまい。

 彼女は夫と違って常人なのだ。

 イカれた量のミートパイがあるのだから突然二人増えても大丈夫、とうっかり勘違いしても仕方ない。

 ただでさえバカみたいな量のミートパイを作ったフレーダさんに追加で何か用意してもらうのも忍びない。どこかに食べに行こうか……と話していたその時、来客を告げる鐘が玄関から鳴った。

 玄関で対応していたオグニが、ニコニコと笑いながら戻ってきたかと思うと、いきなりヴォルガーの首をガシっと腕でホールドした。


「よし、行くぞ!」

「どこへだ!? 引っ張るな!!」


 ヴォルガーの首をぐいぐいと引っ張りながらオグニは話す。


「村のみんながお前らの歓迎会を開いてくれるんだとよ!」

「えっ!?」


 村に来て、少しばかり挨拶をしただけなのにもうそんな話が進んでいるとは思わなかった。

 凄まじい情報伝達速度である。


「しかし、急にそんなもてなしてもらうのは――」

「みんなお前の武勇伝が聞きたいんだよ!! これも有名税だ、きっちり納めてもらうぜ!!」

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