表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/94

ep.8『妙薬』⑧

 ヴォルガーが密猟者(ハンター)を取り押さえているその一方、空中ではリッケと不死鳥(フェニックス)達による戦いが続いていた。

 ヴォルガーの戦いにもいえることだが、相手をなるべく傷つけないように対抗するというのは非常に重いハンデであった。

 相手の密猟者(ハンター)達は、こちらが死んでも構わないというつもりで挑んでいるのだから。


「ハハハハハ!!! 避けてばっかりじゃ終わらないわよぉ!!!」


 怪鳥に乗った女密猟者(ハンター)が、肩に抱えた大砲から雷弾を撃ち出して不死鳥(フェニックス)達を狙う。

 昼間、カップルのふりをして現場の下見に来ていた女だ。

 その攻撃は当たりこそしないが、不死鳥(フェニックス)達に反撃の隙も与えなかった。


「そらぁッッ!!」


 リーダーと思われる男密猟者(ハンター)が、ピーちゃんに向けて長い鎖を放つ。

 矢のように鋭く飛来する鎖は、不死鳥(フェニックス)に絡めて捕縛するためのものというのは明白であった。

 ピーちゃんは鎖を翼で受け止める。

 戦いの為に燃やす炎はマグマのように熱く、鎖を瞬く間に溶かしていく。

 しかし……高熱で溶けた鎖は、地面に広がる雪解け水のように、ピーちゃんの体表を覆っていった。


「クワッッ!!??」

「ピーちゃんっっ!!?」

「ハハハハハ!!! 溶かされるのは想定済みに決まってんだろォ!!」


 溶けた鎖は再び固まり、密猟者(ハンター)の狙い通りに捕縛されたピーちゃん。

 鎖から逃れる間もなく、密猟者(ハンター)による次の一手が放たれる。


「これで仕上げッッ!!」


 女密猟者(ハンター)は大砲を頭上に向ける。

 ターゲットである不死鳥(フェニックス)達のいない頭上に向けられた大砲、その砲口から徐々に光が漏れてくる。

 只ならぬものを感じたリッケが叫ぶ。


「――ッッ!! みんな逃げてっ!!!」

「遅い!!」


 砲口から放たれた光は天に昇らず……拡散した。

 そして、拡散した光に周囲は包まれ……呼応するように、電流が走った。


「グアアアァァァァァァァァァッッッッ!!!!」

「ああああああああああッッッッッ!!!!」


 乱発していた雷弾は、直接不死鳥(フェニックス)達を狙うだけのものではなかった。

 残留していた魔力を呼び起こし、電流で一帯の空間を包み込む……この二段構えを前提とした攻撃であった。

 不死鳥(フェニックス)達とリッケが苦痛に叫ぶ中、事前に絶縁の準備していた密猟者(ハンター)と怪鳥達だけが平然と笑っていた。


「ハハハハハ!! 不死鳥(フェニックス)も案外ちょろかったわね!!」

「おいちょっと待てよ!! あの女の耳!! まさかエルフじゃないか!!?」

「うそっ!! こんな幸運ってあるのぉ!?」


 勝利を確信して皮算用を始める密猟者(ハンター)達。

 やがて電流が収まると、リッケは静かに、しかし力強く呟いた。


「……あんたらの実力はよくわかったわ。うん、心配して損した」

「あ?」


 言葉の意味は分からないが、密猟者(ハンター)の耳には負け惜しみにしか聞こえなかった。


「みんな、この人達は簡単には死なないから大丈夫。『お仕置き』」


 リッケの言葉に反応して、彼女を乗せた不死鳥(フェニックス)はゆっくりと降下していく。

 そして残った四羽の不死鳥(フェニックス)は、その全身から朱い炎を放つ。

 夜の闇に突然黎明が訪れたかと思うほどの、眩しく、激しく、熱い光。


「お、おい、なんだこれ……」

「嘘でしょ……」


 ピーちゃんの体表を覆っていた鉄もすっかりと溶け落ち、不死鳥(フェニックス)達を縛るものは最早何も無かった。


「この子達はね、沢山の人を助けるために痛みや苦しみに耐えてるの。貴方達みたいな救いようのない人間も含めてね。その身で実感するといいわ」

「にっ、逃げ――」


 密猟者(ハンター)達に逃げ場は無かった。

 四羽の不死鳥(フェニックス)は高速で旋回し、そのたぎる炎で密猟者(ハンター)達を包み込む。


「……っっっ!!!!」


 外から見ればその光景は、地上に浮かぶ太陽であった。

 その中に包まれた者達は、最早叫び声をあげることすらできない。

 一瞬にして酸素を奪われ、肺の奥から焼かれたような痛みに、ただただ狂い悶えた。

 生命力に溢れたこの美しい光は、逃げ場のない煉獄そのものだ。

 この恒星が輝いた時間は僅かだが、愚かな罪人達から戦う力を奪うには長すぎる程であった。


「――こんなダメージを治すために薬を作ってるわけじゃないんだけどね」


 太陽の輝きが収まると、中で焼かれた密猟者(ハンター)と怪鳥は墜落していく。

 四羽の不死鳥(フェニックス)達はそれぞれ、彼らが落ちないように優しく受け止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ