ep.8『妙薬』③
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「へーっ、色んな不死鳥土産が売ってるッスね~」
ふれあい不死鳥牧場、その入り口にある売店に来た一同。ルカは物珍しげに色んな商品をキョロキョロと見回した。
「ヴォルガーくんはここ、来たことあるんですか?」
「いや、ここで買うのは初めてだな」
「あっ、お目当ての薬があるッスよ!!」
レジ横に展示された不死鳥の涙を見つけ、ルカは二人を手招きした。
不死鳥の涙は高価なので、客が気軽に手にとってレジに持って行くような商品ではないようだ。
レジ横に置いてあるのはガラスケースに飾られたサンプルで、買いたいときは店員に在庫を持ってきてもらうシステムらしい。
「えーっと、値段は……うえぇぇぇっっ!!?」
貼られた値札を見て、ルカは目を丸くした。
「この小さな瓶でこんな……えっ、ええっっ!!?」
「はっはっは、どうだい嬢ちゃん! 一つ買っていくかい!」
レジに立っている店員が、にこやかにルカに話しかけてきた。
「いやいやいや、遠慮するッス!! っていうか買う人いるんスか!?」
「見たことないねぇ。欲しい人はこんな土産屋じゃなくて薬局を通して取り寄せるし、この展示を見て『珍しいもんが見れたなぁ』で満足する人ばっかりだよ」
「はぁ~、なるほどッス」
「大抵の人は不死鳥饅頭や不死鳥煎餅を買って帰るよ。嬢ちゃんもどうだい? 不死鳥の肉が練り込まれてて旨いぞ!!」
ルカは店員の指し示す値札を見る。
「おっ、こっちは意外と庶民的なお値段……せっかくだし、会社のお土産にいただくッス!!」
「まいどっ!!」
店員が不死鳥饅頭と不死鳥煎餅を包んでいるところに、ヴォルガーとラピアが連れ立ってやってくる。
「すまない、不死鳥の涙を一ついただけないだろうか」
「はいはい、不死鳥の涙ね……うえぇぇっ!!?」
予想外の注文に、店員はぎょっとした目でヴォルガーを見る。
「お客さん本気かい? 珍しいねぇ」
「俺も普段は薬局で取り寄せることが多いのだが、たまたまこの牧場が近かったものでな」
「へぇ……んっ!? あんたよく見たら、勇者の仲間だったヴォルガーさんかい!? お隣はアスクラピアさんで!?」
「ああ。この薬には日頃からお世話になっている」
これを聞いた店員は嬉しげに、ヴォルガーに一つ提案をした。
「ヴォルガーさん、せっかくなら牧場主のリッケさんに挨拶していかないかい! あんまり人前には出ない方だが、あんたならきっと大歓迎だよ!!」
予想外の提案に驚いたが、ヴォルガーがいつも快適に乳首を開発できているのはその牧場主のおかげといっていい。
面識が無いとはいえお世話になっている相手だ。挨拶できるのはヴォルガーにとっても嬉しいことだった。
それに、師匠が『リッケ』という名前の調剤師から薬を直接卸してもらっているという話は聞いていた。
まさか、牧場主と同一人物とは思っていなかったが。
「そうか、リッケさんが! そちらが歓迎してくれるなら、是非会わせてほしい」
「了解!! とりあえず薬を取ってくっから待っててくれ!!」
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「牧場っていうから若草の生えたのどかな場所を想像していたんですが、結構意外な光景ですね~」
ゴツゴツとした殺風景な岩山を登りながら、ラピアは素朴な感想を述べた。
「この環境が不死鳥には快適ということなのだろうな」
「ここ、活火山らしいッスよ。もう少し涼しい格好してくればよかったッス」
胸元をパタパタ仰いで涼を取りながらルカは呟く。
二人に比べて体力の無い彼女は、このまま頂上まで登る羽目になったらどうしよう、お土産を買うのは帰りにすればよかったな……と不安に思っていたが、目的の牧場には意外とすぐに到着した。
流石に、一般人向けの観光地をそこまで過酷な場所に開くことはないらしい。
『ようこそ!! ふれあい不死鳥牧場へ!!!』と記された大看板が目に入った。
そしてその先には、広々とした土地が切り開かれていた。
そこに佇む、朱い炎を風になびかせた巨鳥……間違いなく、あれこそが不死鳥であった。




