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ep.7『豊満』⑥

***


「いやぁ、ステージはこれ以上ない大成功でしたね!!!」


 満月の照らす深い山。

 祠へと向かうデカパイ神輿の中で、ラピアはヴォルガーの労をねぎらった。


「まぁ……みんなが喜んでくれたからな……」


 胸元の大胆に破けた巫女服を着たままのヴォルガーは、肉体よりも精神が疲労困憊していた。

 ふと、ヴォルガーはラピアの服装が気になった。


「ラピアさん、その巫女服はどうしたんだ?」


 ラピアはいつの間にか、ヴォルガーとお揃いの巫女服に身を包んでいた。


「一応この土地の神様にお会いしに行くわけなので、いつもの修道服よりこちらの方がドレスコードに合っているかなぁ、と思いまして」

「ふむ……そういうものなのか?」


 ラピアのような修道女が他教に接する際のマナーというのは、ヴォルガーにとってはよくわからない領域であった。


「まぁ半分は言い訳で、たまには他の服を着たかったというのが正直なところですね! この服、なかなか可愛いし……マザーロネウスが見たらどう言うかわかりませんけど」


 白い振り袖を楽しげに揺らしながら、ラピアはヴォルガーに尋ねる。


「ところでこの服……どうでしょう? 似合っていますか?」

「ん? ああ、似合ってるんじゃないか?」

(照れてますね……ふふっ、かわいい)


 デカパイ神輿の上から山中の景色を眺め、ヴォルガーは呟く。


「しかし……神が直々に姿を現すなんて、そんなことがあるものなのか」

「例が無いわけではありません。ありませんが、う~ん……」

「何か気になるのか?」

「単純に、今まで平穏にこの土地を豊かにしていた神様がいきなり本当の生け贄を求める時点で不思議ではありますが……『神の国に連れて行く』って言ってたらしいじゃないですか」

「ああ、そう話してたな」

「『神の国』っていう呼び名は、人類が便宜上つけた名前なんですよ。実際のところ、神様が具体的にどこへ隠れたのかはわかりません。大体、神様の隠れた場所に人間を気軽に運べるのかも甚だ疑問です」

「……では、神は偽物ということか?」

「――そう考えると今度は、神の祠を偽物が乗っ取るなんて罰当たりなことをして何故平気なのか、という疑問が浮かびます」

「結局……直接見てみなければわからないということか」

「そうですね……」


 話しているうちに、目的地へと辿り着いた。

 奥がすぐに見えるような浅い洞窟、そこに奉られているのが豊乳神龍(デカパイドラゴン)の祠であった。


「本来、我々はここでデカパイ巫女の祈りを待つのですが……」


 デカパイ神輿を担いできた村の若い衆が、どう動けばいいか悩んでヴォルガーに声をかける。


「俺もラピアさんも、いざとなれば自力で下山できる。祭の手順を崩すようで申し訳ないが、安全のため村へ帰ってくれないか」

「すみません……。それともう一つ、祠の前に行くのはなるべく、デカパイ巫女のヴォルガーさんだけにしていただければ、と」

「わかった。何事も無ければしきたりに従おう」


 本当に何事もなく、穏便に終わることを祈りながらヴォルガーとラピアは村の若い衆を見送った。

 そして彼らが離れたところで、ヴォルガーは一人で祠に祈りを捧げる。

 ステージに立った時とは異なり、今度は教わった正式な振り付けで奉納舞を踊る。

 スイカの花を編んで作られた採り物を手に、ヴォルガーは神への祈りを捧げた。


豊乳神龍(デカパイドラゴン)様……我が身に宿りし力に依りて、この地に恵みをもたらしくださいませ……」


 ヴォルガーの祈りに呼応するように、祠が光り始めた。

 祠が光ること自体は毎年のことだと聞いた。デカパイ巫女の声が豊乳神龍(デカパイドラゴン)様に届いた証拠だ。

 問題は、その後どうなるか、だ。

 姿を現さないはずの豊乳神龍(デカパイドラゴン)様が、突然現れて言葉を告げたというその話……。

 村長の語ったその話と同様に、大きなシルエットが姿を現した。

 流れる河のように長く伸びたその影、闇のように黒く、しかし光に照らされて輝く鱗に覆われたその姿、そして何よりも胸にぶら下がった二房の大きなデカパイ……!!!

 間違いない、この龍こそが豊乳神龍(デカパイドラゴン)であった。

 豊乳神龍(デカパイドラゴン)赤く光る二つの眼でヴォルガーをじろりと……睨むと、女性的なハスキーボイスで叫んだ。


「男ではないか!!!!!!」

「あっ……やっぱりダメだったのか!!!???」


 ここに来て、驚愕の事実が発覚した……。

 なんとデカパイ巫女は――女性でなければならなかったのだ!!!


「デカパイっていうけど貴様……貴様のそれはなんか違うであろう!!! 貴様のそれはデカパイではなくて筋肉!!! 我をコケにしおって!!!」

「いや!! それは俺もそう思ったんだが村の人達が――」

「待ってください!!!」


 後ろに控えていたラピアが突然飛び出してきた。

 そして彼女は、豊乳神龍(デカパイドラゴン)に対して突きつける。


「貴方は豊乳神龍(デカパイドラゴン)様ではありません!!!」

「なっ……それは確かなのか、ラピアさん!!」


 ラピアの指摘に対し、豊乳神龍(デカパイドラゴン)――と思われていた黒い龍は睨み返す。


「貴様!! 何を根拠に我を疑うか!! この土地の守り神であるこの豊乳神龍(デカパイドラゴン)を!!!」

「土着の守り神だというのに貴方から漂う魔力がこの土地のものと違いすぎます!! 貴方は豊乳神龍(デカパイドラゴン)様を騙る魔族に違いありません!!!」

「……くっ、くくくく」


 ラピアに看破された黒い龍は、不敵な笑いをこぼす。


「バレてしまっては仕方がない!! 我こそは魔王軍七沌将(しちてんしょう)キルデイル様の忠実なるしもべ、ダーク・デカパイ・ドラゴン!!! この作戦が見破られた以上、貴様らを生きて帰すわけにはいかん!!!」

「なっ、なにィィ!!!??」


 戦いの始まりだ!!!!

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