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ep.5 『公転』⑧

「あっ!!!! ヴォルガーくん!!!」


 地上で彼を待っていたラピアは、再び時計塔に手を突いた。

 このままヴォルガーを打ち上げるわけにはいかない……先ほどの失敗を踏まえ、ラピアは魔力による操作方法を変える。

 次はあえて、時計塔を崩れるがままにすると決めた。

 墜落するヴォルガー、その衝撃を吸収するクッションになってもらうのだ。

 時計塔を破壊してしまうのは忍びないが、これ以上の方法は思いつかない。

 ラピアはただ、ヴォルガーの体を時計塔に誘引すること、そして崩壊によって時計塔の瓦礫が飛び散らないようまとめることに集中していた。

 そして彼女の考えていた通り……ヴォルガーは時計塔に墜ちてくる!!!


ズギャァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!!


 崩れる時計塔はやはり、けたたましい音を発した。

 しかし、今度はヴォルガーが飛び立つこともなく、かといって瓦礫で怪我人が出ることもなく……ようやく、隕石の落下による騒動は決着を迎えた。

 そしてラピアは、瓦礫を踏み越えゆっくりと、気を失ったヴォルガーの元へ行く。

 その体に触れると、ただちに処置が必要な大怪我は無いことが確認できた。


「よかったぁ……」


 そう呟くと彼女は、ヴォルガーに身を委ねるように倒れ込んだ。


***


「……ん」


 目を覚ましたヴォルガーはまだぼんやりとしたままで、自分がどこにいるのかさえわからなかった。


「あっ、起きました!!」


 傍らに座っていたラピアが、笑顔で彼の顔をのぞき込む。


「ここは……」

「宿屋です!! あれから三日も眠っていたんですよ!!!」

「そうか、そんなに……」


 ぼんやりとしていたヴォルガーが、はっと重要な懸念に気がつく!!


「隕石!! 俺が投げ飛ばした隕石はどうなった!!?」


 ヴォルガーは、隕石が大気圏を突破したことなど知る由もない。

 結局自分のせいで別の被害を生んだのではないか……と思うと気が気ではなかった。


「大丈夫です!! どこかに墜ちたという話はありません!!」

「そ、そうか……本能的に投げ飛ばしてしまったが、なんとかなったようだな」

「急に動くのもよくありません。ご飯を用意してくるので待っていてください」


 そういってラピアは立ち上がり、部屋を出ていく。

 残されたヴォルガーは、枕に頭を委ねて天井を見上げる。

 急に動くのもよくない、というのはその通りだろうが、三日も寝っぱなしでまた横になるだけというのも気分が落ち着かなかった。


「久しぶりに乳首開発でもするか……」


 ヴォルガーは黒いタンクトップを脱ぎ捨てると、テーブルの上の袋から小さな軟膏を取り出す。

 フェニックスの心臓から作られた最高級の塗り薬『不死鳥フェニックスの涙』である。

 それを少し指先に取り、そっと乳輪に触れる。


「……んっ!?」


 そこで気がついた。思い出した。

 触れている……キルデイルの催眠術で乳首開発はできなくなっていたはずなのに。

 魔法ピッチングマシーンによる剛速球を乳首で受け止め、隕石を全身で受け止め、落下して、また飛び上がって、気を失って……一体何がきっかけだったのか具体的なところはわからないが、一連のショックがヴォルガーを催眠術から解放していたのだ!!!

 乳輪から攻めてじわじわ感度を高めていく……といったまどろっこしい手順は最早踏む余裕がなかった。

 ヴォルガーは思うがままに、一気に乳首をつねりあげていく!!!


「お゛っ♡ お゛っ♡♡ お゛お゛んっっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛んっっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛お゛んっっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っ♡♡」


 高らかな喘ぎ声が窓を震わす!!! 宿屋を揺らす!!! 町中に響き渡る!!!

 英雄ヴォルガー・フィルヴォルグ、その完全復活を告げる祝福のファンファーレである!!!

 この号砲は当然ラピアの耳にも入り、超特急で部屋へと引き返す!!!


「ヴォルガーくんっ!!! 乳首開発を再開できたんですね!!!!」

「お゛っ♡ お゛お゛っっ♡♡♡ お゛んっっ♡♡♡ お゛っ♡♡ お゛お゛んっっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛っっ♡♡♡ お゛お゛お゛お゛お゛っっ♡♡♡」


 どんな言葉よりも気持ちの伝わる喘ぎ声返事……ラピアは思わず、喜びの涙を流した。


「ヴォルガーくん……本当によかったです……」


 ヴォルガーの投げ飛ばした隕石は、今もこの惑星(ほし)公転(まわ)り続けている……。


≪続く≫

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