ep.5 『公転』⑥
「なんということだ……!! よりにもよって乳首を開発できていないこの時に……!!」
「……いえ、偶然ではないかもしれません」
そう言うとラピアは集中力を高め、魔力を高めて……一つの結論に辿り着く。
「あの隕石……天然のものではありません!! この距離でも探知できるような魔力があります!!」
「なっ、なんだって……!!」
「きっとあれは七沌将……キルデイルによる策略!!」
二人は思いだしていた、七沌将キルデイルの言葉を。
『これは虚像なんだよ。残念ながら、君達を光線や炎で一方的に攻撃することは不可能なんだ』
確かに、あの虚像を介してこちらを攻撃することは不可能だった。
しかし、遠距離からの攻撃手段が無いとは一言も言っていない。それはキルデイルの説明を聞いた二人が、無意識のうちに抱えていた思いこみに過ぎなかった。
催眠術だけではない。二人は思考も、まんまとキルデイルに誘導されていたのだ。
乳首開発を封じられたヴォルガーがこの攻撃に対応できるのか、キルデイルは実験をしようとしているのだ。
そして、対応できなければそこまで。負けて死んだというデータを取って終わりという腹積もりだ。
「くそっ、まさかこんな作戦があったとは……!!」
ラピアは周囲を見回して、一つの場所に目をつける。
「ヴォルガーくん!! あの時計塔!! あそこがこの町で一番高い場所です!!」
不幸中の幸いか、その時計塔は公園のすぐ傍に建っていた。
「私があそこに隕石を誘引するので、ヴォルガーくんは登って受け止めてください!!」
「わかった!!」
ヴォルガーはラピアを抱え、パニックで駆け回る民衆の隙間を縫いながら猛スピードで時計塔に辿り着いた!!
そしてラピアを置いて、塔のてっぺんまで一直線に登っていく……はずだった。
塔の凹凸や窓枠に手足をひっかけて登る。とっかかりが無ければ指で穴を空けてでも登る。
その動作は、本来のヴォルガーであれば容易くこなせるものだった。
実際、登り始めのスピードは凄まじいものであった。
しかしこの時のヴォルガーは、塔を登る途中で……指が窓枠から抜けて、そのまま墜落してしまった。
「ぐあぁぁっっ!!!」
ズドォォォォンという大きな音を立て、地面にクレーターを作りながら落ちたヴォルガー。
「ヴォルガーくんっ!!!」
普段ならばあり得ないミスに、ラピアも不安を露わにして駆け寄る。
「だっ、ダメだ……!! 乳首がもどかしくて力が出ない……!!」
「そんな……!!」
頭を抱えて苦悩するヴォルガーに、ラピアは改めて決意を告げる。
「ヴォルガーくん!! 乳首を出してください!! 私が開発!! 開発してあげますから!!」
「お゛ぉぉん……お゛おぉぉぉん……」
「あぁ……いけません、声が届かない……!!」
切なそうに悶えるヴォルガーを前に考えあぐねるラピア。
万事休すか……と思われたその時、公園から溌剌とした声が響いた。
パニックに陥る民衆の中にあっても、異様に響く高らかな声が!!
「おらっ!! そんな調子じゃ甲子園(※)には行けねぇぞ!!」
「うおーーっっっ!!! 隕石が怖くて野球ができるか!!!」
見てみれば、何やらスポーツの特訓をしている二人組がいた!!!
カァン!! カァン!! カァン!!!
耳良い音を響かせながら訓練は続く!!!
片方が檄を飛ばしながら機械を操作し、その機械から猛スピードで放たれた白球をもう片方がバットで叩き、飛ばすシンプルながらも激しい訓練を!!!
「すみません!! その機械はなんですか!!??」
「魔法ピッチングマシーンです!!!」
「お借り致します!!!」
「いいでしょう!!!」
快諾を得たラピアは魔法ピッチングマシーンを携えてヴォルガーの元に駆ける!!
そして――
「ヴォルガーくん!!!!」
「!!!!????」
ヴォルガーの乳首めがけて剛速球を放つ!!!!
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ右乳首!!! 左乳首!!! 右乳首!!! 左乳首!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ラピアの魔力によって加速した白球は時速1000kmはあろうというスピードでヴォルガーの厚い胸板に突撃し、そしてパァァァンと音を立ててて弾ける!!!!
乳首にぶつかり弾け飛ぶ剛球、その刺激はヴォルガーの乳首を未知のステージへと誘う!!!!
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
溜め込んだフラストレーションの分だけ覚醒するヴォルガーの乳首と意識!!!!
ヴォルガーは獲物を追う荒野の獣が如く、時計塔を一直線に駆け上がる!!!
「ヴォルガーくん!!!!」
彼の覚醒を確認したラピアは、時計塔に駆け寄ってそこに両手を突く!!!
これによって町めがけて落下していた隕石は誘引され軌道を修正、ラピアの誘引する時計塔へと落ちてくる!!!
「うお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
ヴォルガーは天高く跳躍し、見事に隕石をキャッチ!!!
ズドォォォォォォォォォォン!!!!
地上に墜落し、町を粉砕し、砂塵を起こすはずだった隕石のエネルギーは轟音とともにヴォルガーの胸板に受け止められる!!!
(※)この世界には、そういう名前の施設があります。




