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ep.4 『臀部』⑧

***


『「世紀の対ケツ!! 第108回 HYPER尻相撲フェスティバル!!!」は、安全の確認が取れ次第の再開となります』


 アナウンスが流れる中、ヴォルガーは観客席のラピアの元に戻っていく。


「ヴォルガー君!! お疲れさまでした!!」

「ああ……まさかこんなことになるとは……」

「背中の傷、治すので見せてください」

「かたじけない、頼む」


 ヴォルガーは法被を脱いで、ラピアに背中を向ける。

 その様子をラピアの横で見ていたルカが、ふと気づく。


「あれ? 身体に沢山ついてた傷、塞がってないッスか?」

「ん……?」


 ヴォルガーは自分の腕を確認する。確かにルカの言うとおり、病嵐につけられた細かい傷はいつの間にか癒えていた。

 ヴォルガーの背中にぴっとりと掌をつけて回復させながら、ラピアは疑問に答える。


「向こうにちょっと隙ができたので、自動回復魔法をこっそりかけておきました! 毒は解析しないと治せませんが、傷は浅くてよかったです!」

「そ、そうか! つまり、俺のふんどしが斬られるとか言って騒いだのは隙をつくるためだったんだな!!」


 ヴォルガーはラピアの深慮に感動した。

 そして、私利私欲ではしゃいでいると勘違いしていた自分を恥じた。


「いえ、あれは純粋にふんどしを斬るつもりなのかと勘違いして……あの魔族、空気の読めない忍者でしたね……」

「そ、そうか……」


 ヴォルガーは感動して損をした。


「はい、背中の傷も毒も治りましたよ!!」


 ラピアは傷のあった箇所を撫で回している。


「なんにせよ、あの魔族に勝てたのはお二人のコンビネーションがあったからこそ、というわけっスね!」

「……いえ、私の助けが無くてもヴォルガー君は勝っていましたよ」


 ヴォルガーとしてもそれは同意見だった。

 ただ、戦いを第三者として見ていたラピアの意見は自分の意見よりも信頼がおける……と彼は考えていた。


「確かに、魔王軍幹部直属の部下というだけあって実力は確かなものでした。でも、単独でヴォルガー君を倒せるほどではありません」

「ラピアさんと二人がかりで戦えば尚更だ」


 ヴォルガーは、戦いの中で病嵐が発した言葉を思い出す。


「病嵐を差し向けた七沌将は、確かキルデイルという名前だったか……」


 そのキルデイルは、何を目的としてヴォルガーを襲撃させたのか。

 殺すこと自体が目的ではなかったのかもしれない。

 そもそも、わざわざその名前を出したこと自体がきな臭かった。

 魔族は魔界から突然現れた侵略者だ。名前を知ったところでその素性や弱点を調査できるわけではない。

 そういう点では、向こうとしても出して問題のない情報ではあった。だからといって、わざわざ出すメリットもわからない。


「……宣戦布告、か」

「今の段階では、そう捉える他ありませんね」


 人類を守ると決めた以上、いずれ戦わねばならない相手だ。

 向こうの考えがわからないのは今までと変わらない。

 ヴォルガーはただ、立ち向かうだけだ。


「……ところでラピアさん」

「どうしましたか?」

「いつまで背中を撫で回してるんだ……?」

「お尻を叩いた方がよかったですか!!??」

「そうではなく……」


 その後、ヴォルガーは『世紀の対ケツ!! 第108回 HYPER尻相撲フェスティバル!!!』で見事優勝。

 圧倒的な記録で殿堂入りを果たし、賞品として純金製のふんどしが贈られた。


≪続く≫

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