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ep.4 『臀部』④

『なッ、なんとぉぉぉぉ!!! バラバラにケッ壊した丸太の中から魔王軍の刺客がケツ然と現れたァァァァッッッ!!!』

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!!!」」」」」

「盛り上がってないで逃げてくれ!!!」


 会場の盛り上がりとは対照的に、突如現れた黒い忍者はそよ風のように音も無くステージへと降り立った。


「ククク……よいではないか、ヴォルガー・フィルヴォルグよ。貴様がなすすべもなく敗北する様を愚かな人間どもにも見て貰おう」


 嘲笑するような態度で佇む病嵐に、ヴォルガーはスっと拳を構える。


「……戦う時と場所は選べない、か」


 それは、格闘家を志した時から覚悟していたことだった。

 とはいえ、丸太をケツで叩いたら忍者が飛び出して来るのは流石に想定外であった。


「キルデイル様は何やら貴様の流派を警戒しているようだったが、それが杞憂であることを拙者が証明してやろう」

「……開天流は武術における人類の頂点だ。身を持って味わうがいい」

「ふっ」


『「世紀の対ケツ!! 第108回 HYPER尻相撲フェスティバル!!!」に魔王軍のケツ物がまさかの飛び入り参戦だぁぁぁッッッ!!! 波乱の展開となったこの大会、果たしてどのようなケッ着を迎えるのかぁぁぁぁぁッッッ!!!!』

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」


「いやいやいや避難してくれ!!! この魔族は別に尻相撲をしに来たわけではない!!!」

「ククク……拙者はどのような勝負でも構わぬ!! キルデイル様の腹心たる拙者とたかが人間の貴様、どれだけの差があるのか思い知らせてくれよう!!!」


 そう宣った忍者・病嵐は黒いズボンを脱ぎ捨てて下は白いふんどし一丁の出で立ちとなった!!!


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」


 ヴォルガーと比べればどうしても細いように見えてしまうが、やはりそこは忍者という肉体派の強者!!!

 引き締まりながらも雄々しく逞しくしなやかな脚であり、ケツである!!!!


「……え゛っ!!? 本当に尻相撲をするのか!!??」

「ククク……どうした、怖じ気づいたか!!?」

「い、いや……そちらがその気なら……」


 お前はそれでいいのか……? と聞きたくなったヴォルガーだが、下手なことを言って考えを変えられたら観客が襲われる可能性もある。そう思うと勝負を飲まざるを得なかった。


「ククク……さぁ、来い!!!」


 そう言って病嵐は、ステージ中央で堂々と尻を突き出してヴォルガーを待ち構えた。


「あ、ああ……」


 こんなに思いっきり敵に背中を見せていいのかこの魔族は……? とも思ったが、ヴォルガーとしても流石にこの状況で不意打ちをする気も起きない。

 ヴォルガーも病嵐に尻を向けて、腰を低く落とした。


『見合って見合って……はっけよーい……のこった!!!』


 実況のかけ声とともに、戦いの火蓋は切って落とされた!!!


「ククク……ヴォルガー・フィルヴォルグ!!! 貴様にこの動きが読めるか!!!」

「うぉぉぉぉぉすげぇ!!! ケツが何重にも見えるぞ!!」「どのケツが本物かわからないわ!!!」「分尻の術だ!!!」

(背後で何が起こってるんだ……)


 何かしら凄い技をつかっているらしいが、尻を向けたヴォルガーには全く見えない!!!


「今だッッ!! 喰らえぇぇッッ!!」

(何が『今だ』なんだ……!?)


 素朴な疑問を浮かべたヴォルガーの尻に、病嵐の尻がとうとうぶつかる!!!

 引き締まりながらも確かな力強さを秘めた尻がヴォルガーの巨大な尻へと強かに打ち付けられる!!!

 激突の衝撃を下半身に感じるヴォルガー……しかし、その体幹は大樹のように動かない!!!

 むしろその激突に合わせ……自らの尻を思いっきり突き出す!!!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」


 病嵐は場外まで吹き飛ばされた!!!!


『ケッ着ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!! 人類の誇る英ケツ、ヴォルガー・フィルヴォルグがケッ河の勢いでこのケッ闘に勝利した!!!!』

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!! ヴォルガー!!! ヴォルガ-!!! ヴォルガー!!!!」」」」」 


 ヴォルガーを讃えるシュプレヒコールが会場に響き渡る!!!

 このまま祭もお開きになりそうな宴のたけなわ具合だが、ヴォルガーは決して気を緩めなかった。

 振り返って眼差しを向ければ、場外まで吹き飛ばした病嵐の姿がそこには無かった!!


「!!」


 突如、ヴォルガーの腕に走る痛み。

 尻相撲に敗北した病嵐が、第二ラウンド開始とばかりに攻撃をしかけてきたのだ。

 そのしなやかな脚力による蹴撃……ヴォルガーは咄嗟に受け、そして威力の高さを実感した。

 このまま敗北を受け入れて帰ってくれればよかったが、そう都合よくはいかないらしい。


「ヴォルガー・フィルヴォルグ、尻相撲では貴様に敗北を喫したが……それは関係ない!!!」

「……あ、ああ!! それはそうだな!!?」


 じゃあなんで勝負を受けたんだ……という気持ちはあるが、わざわざ言うことでもないので飲み込んだ。

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