表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女チート!大和時代で村長になったら文明開化が始まった件  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

第10話 教育制度、数字から文字へ

防衛の板が広場に立てられてから数日、村の子供たちはその前に集まるようになった。堀の深さ一・三メートル、柵一二〇本、槍三五本、盾一〇枚、焚き火三基、交代二時間。数字が並ぶ板は、恐怖を減らす証であると同時に、子供たちにとっては新しい遊び場になった。


「一・三って何?」小さな子が板を指差す。

「堀の深さだよ。」美弥が膝をついて答える。

「じゃあ一・四になったら?」

「もっと深くなるってこと。数字が増えると守りが強くなるんだ。」


子供たちは声を揃えて数字を読み上げた。

「一、二、三!」

「一二〇!」

「三五!」

声は広場に響き、数字は祈りの言葉のように繰り返された。


母たちは焚き火の番をしながら微笑んだ。「数字を覚えれば、守りを覚える。火を守るのと同じだね。」

老人は石を磨きながら頷いた。「数字は力だ。槍の数を数えられれば、恐怖を測れる。」

若者は槍を磨きながら笑った。「数字が増えるほど心が軽くなるんだ。」


美弥は板の横に新しい板を立てた。そこには簡単な算術が描かれていた。

「槍が三五本あります。五人で持ったら、一人何本?」

子供たちは指を折りながら答えを探した。

「七!」

「そう、七本ずつ。数字を分ければ、力も分けられる。」


昼の光が板を照らし、数字の影が地面に伸びた。夕刻には焚き火の赤が板を染め、夜には星が堀の水面に映り、数字が星のように輝いた。雨の日には板の数字が滲み、翌日炭で濃く書き直された。風の日には煙が数字を覆い、子供たちが笑いながら手で払いのけた。夏には蝉の声が数字を包み、冬には霜が板を白く縁取った。


失敗もあった。子供が「一二〇」を「一二」と読み間違えた。母が笑いながら訂正した。「ゼロも大事なんだよ。」

別の子は「三五」を「三六」と書き直してしまった。老人が「間違えてもいい。直せば強くなる」と励ました。

子供同士の競い合いも始まった。「一二〇って大きいね」「じゃあ一二一はもっと大きい?」と声を掛け合い、母が「ゼロも力になるんだよ」と補足すると、子供が首を傾げて「ゼロって何もないのに力なの?」と尋ねた。老人は笑って答えた。「何もないことを記せるのが文明だ。」


数字は遊びになり、遊びは学びになった。子供たちは板に棒で数字を書き、砂に足で数字を描いた。焚き火の灰に指で数字を刻み、夜には星を数えた。縄を伸ばして長さを測り、石を秤代わりにして重さを比べる遊びも始まった。


やがて子供の一人が数字の横に自分の名前を刻んだ。炭の線は震えていたが、確かに「人の名」が板に残った。美弥はその瞬間を見届けて言った。

「槍は折れるけれど、文字は残る。数字は守りを数える。文字は人を未来に残す。」


母は焚き火のそばで歌を口ずさみ、子供たちが真似して声を合わせた。

「一、二、三、堀が深い。四、五、六、槍が強い。」

数字は歌になり、歌は教育になった。


老人は水桶を持ち上げて言った。「この桶は十。二つで二十。数字を覚えれば水も測れる。」子供たちは笑いながら水を数え、灌漑の知識が芽吹いた。


若者は板を指差して言った。「昨日は胸の重さが十だった。今日は半分の五になった。」

子供が叫んだ。「僕の名前が残る!未来に残るんだ!」

母は焚き火を見つめて言った。「火と数字を守れば眠れる。」

老人は静かに言った。「この記録は百年後も読まれるだろう。」

美弥は頷いた。「数字と文字は村を未来へ導く。」


その後、美弥は板に新しい記録を刻んだ。

「十日目、斥候が来た。十五日目、堀を深くした。」

子供たちはそれを声に出して読み上げた。数字と文字が並び、村の歴史が初めて記録された瞬間だった。


防衛の仕組みは教育へと繋がった。数字を学ぶことは守りを学ぶこと。文字を学ぶことは人を残すこと。歌を学ぶことは心を繋ぐこと。技術を学ぶことは生活を強くすること。倫理を学ぶことは共同体を守ること。


村は鉄の守りを得ただけでなく、数字と文字の文明を芽吹かせていた。堀の水抜き技術は灌漑に応用され、余った木材は交易品となり、板の数字と文字は子供の学びになった。教育は村の未来を照らす灯火となり、文明の歩みを次の段階へと導いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ