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愛の形を探しに行こう。 2



「あ、レイフ帰ってくるよ」

レイフの車が車庫に入ってくる音がしてウィルはノアを抱いたまま窓に寄った。

車庫から歩いてくるレイフをノアと見つめる。それにレイフが気付いたのかこちらを見上げて手を振ってくれた。

「ノア、手振ってごらん」

そういってウィルが手を振って見せるとノアも拙く手を振った。もうそろそろノアが来てから4日経つ。ノアもすっかりウィルとレイフに懐き、ウィルには抱っこをせがむほどになった。ウィルは素直にそれが嬉しいと思うし、愛着も湧いた。正直ヴィンスに戻すのが惜しく思うときすらある程に。

ノアを床に立たせてやるとよちよちと歩きながら玄関に向かおうとする。いつもウィルがレイフを迎えるために行くのを真似しているのだろう。

「ノア、歩くの上手になったね。それでレイフを迎えに行こうか。きっと褒めてくれるよ」

そういいながらノアの後ろを付けて玄関に向かう。廊下に出たところでレイフが玄関扉を開けた。

「ノア、ウィルただいま」

「おかえりなさい。見てて下さいほら、ノアが迎えに行きますから」

「ノア~!もう少しだ、頑張れ」

レイフがマフラーを外してから手を広げた。ノアはそれを見て声をあげて喜び、歩くペースを上げた。そして待ち構えるレイフになだれかかるようにして抱きついた。

「Good Job!よく出来たなノア!いい子だ」

レイフはノアを高く抱き上げてから胸に抱いた。それを見てウィルの心も幸せに染まる。

レイフが廊下へ上がったところでウィルはマフラーを受け取り、並んでリビングへ向かった。

「最近よく歩くようになったんです。歩き方も拙さが抜けてきて」

「そうか。ノア、うちの子になるか?」

レイフがノアと額をくっつけて冗談を言う。ノアはきゃっきゃと喜んでいて、レイフもつられて破顔した。

「ご飯出来てますよ。先にシャワー行って来たらどうです?寒かったでしょう」

「ああ、そうするよ」

ノアをウィルに預けてコートを脱いだ。最初はおっかなびっくり抱いていたレイフも、いまでは父親のように慣れた手つきになった。ウィルはノアをソファに座らせ、おもちゃを与える。レイフがシャワーから上がってきたときに温かいご飯を食べられるように準備を始めよう。





「寝たのか?」

「ええ」

22時過ぎ。ノアを寝室で寝かせてからリビングに戻ってきたウィルにレイフが尋ねた。

「お疲れさま」

「あなたこそ」

レイフはウィルが入れたホットミルクティーを飲んでいる。

「…子どもはいいですね」

「そうだな。癒される」

「……欲しいですね」

「…そうだな」

二人の間に沈黙が落ちる。レイフがホットミルクティーをすする音がするだけだ。

「…本当は、あなたとの子どもが欲しいです」

ウィルが沈黙を破った。レイフは黙って聞いている。

「…なんで、男同士じゃ子どもは生まれないんですか?俺たちのこの感情は、…自然の理に反してるとでも?」

「ウィル、落ち着け」

「…嫌だ、俺はあなたとの子どもが欲しい…ねえ、作りましょう?」

ウィルのただならぬ様子に、レイフは戸惑った。普段はこんな風に取り乱す前に自制するのに、どうしてか今日か勝手が効かないようなのだ。

ウィルはレイフに強引に口付ける。舌が口の中に侵入して、それは濃厚にレイフの舌と絡みつく。レイフはその流れに抗えない。

するりとパジャマの中に手が忍び込んできて、それはレイフの性感帯に触れる。

「…、ウィル…!」

レイフの抵抗も虚しく、散々胸元を弄んだその手はズボンの中へ進んだ。

「…俺は、あなたが好きです。だから、…こう思うのは、普通なんじゃないでしょうか」

ウィルの慣れた手つきに、レイフ自身は大きく膨張する。それをウィルの指は楽しむかのようにゆっくりさすってみたり、きつく握ってみたりするのだ。刺激が幾重にも重なって、レイフはいよいよウィルの勢いに抗うことが出来なくなってきた。

そのままウィルに、押し倒される。

「だ、ダメだ、…ウィル、つけるんだ…」

ウィルは自身のそれを、そのままレイフに押し込もうとする。もはやウィル自身からの感染の疑いはないとクレイグに確認を取っていても、逆に感染症などになる恐れがあることから必ず装着してからするというのがルールだった。互いのために一度も破ったことはない。それなのにいまのウィルは、まったくレイフの言うことを聞くような目をしていなかった。

「ウィル、…俺もお前が好きだ。…だからこそ、こんなことは…許さない…」

「…どうして…」

「…お前が好きだからだよ。大事にしたいんだ」

レイフはウィルの瞳を真っ直ぐ見た。これでうまく伝わらなかったら、仕方ないとさえ思った。レイフの上空にいるウィルの動きが止まる。

そしてぼたぼたと、大粒の涙が降り注いだ。

「…あなたが女だったらなんて、一度も思ったことはなかったのに…!」

ウィルの涙を見ると、胸が苦しくなる。

レイフはウィルの腕を折らせてそのまま自分の身体に乗せた。だいぶ体重は落ちただろう。軽く薄いその身体をぎゅっときつく抱きしめる。

「俺は、子どもがいなくても、お前と添い遂げたいと思う。子どもがまったく欲しくないといえば嘘になるが、…お前と離れるよりずっと我慢できる」

「…レイフ…すいません…」

ウィルはレイフの胸に顔をうずめた。レイフはウィルの背中を優しくさする。

「取り乱してすいません…。…俺も、あなたと離れる方がずっと嫌だ…!…ずっとそばにいて下さい…お願いだから」

「ああ、約束するよ」

レイフの声も鼻声になっている。つられて涙ぐんでいるのだろう。

「俺たちは俺たちのやり方で、愛し合うことが出来てるんだ。逆にすごいじゃないか」

ウィルは黙って何度も頷いた。その度に涙がぽろぽろとこぼれる。

レイフはウィルの唇にキスを落としてその瞳を見つめた。ウィルもそれに答えるように少しだけ微笑んだ。

「そうですね。この気持ちだけで、人間としての生殖本能にすら逆らえるんだから」

ウィルの言葉にレイフが頷く。開いたままのドアからは初秋の涼しい風が吹き込んできていた。


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