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君が大人になってしまう前に 16

”デルタよりHQ、こちらで負傷者が二名出ました。ユリシーズとエリスです。至急応援を頼む!”

 デルタのキャプテン補佐であるダドリーの張り詰めた声が無線に入る。

「ウィル! デルタに負傷者はいないか!」

「いません!」

 ウィルの直属の上司となったヴィンスが叫んだ。それにウィルも答える。

 ウィルがチャーリーのキャプテン補佐として配属されて、およそ一年。ヴィンスの優しい性格と、ウィルの的確な判断力でチャーリーはまとまったチームとなった。

 ウィルはレイフから、チャーリーの新人ザカリーの教育を引き継ぎ、今ではザカリーのチャーリー入隊から一年半、ようやく自立してきたと言えるだろう。

 その間にウィルは多くのことを学んだ。アルファは部隊メンバーの中心となり、攻撃の要とも言えるチームだが、チャーリーはアルファの補佐的側面があり、索敵の役割を担うことが多い。アルファでは攻撃力が一番に重視されたが、チャーリーでは敵の動向を読み取り、作戦やフローを確実に実行していく能力が重視された。

”レイフよりチャーリー。そちらからデルタへ応援を出せないか? ヴィンスが行ってくれるとありがたいんだが”

 今回の現場は観光地のホテルだった。閑散期だったこともありそれほど甚大な被害にはなっていないが、クリーチャーの数が多く多く予想以上に手こずる結果となった。

「行って下さい、ヴィンスさん」

 近くで無線を聞いていたウィルが、ヴィンスに声をかける。他のメンバーもヴィンスに頷いて見せた。

「……わかった、ありがとう。ヴィンスよりレイフ隊長、俺がいきます。HQに伝えてもらえますか?」

”わかった。こちらからもサムを向かわせる予定だ。ヘリでピックアップする。サムと直接連絡を取ってくれ。ヴィンス以外のチャーリーは一旦アルファと合流することにしよう”

「わかりました」

 ヴィンスはそういうと近くでヘリが降りられそうなところを端末で探りはじめた。サムを誘導するつもりなのだろう。

"レイフよりウィル。残りのデルタを連れてアルファに合流してくれ、こっちも多勢に無勢だ”

「わかりました。よし、移動を開始しましょう。ヴィンスさん、無理はしないで」

「わかってるさ。チャーリーを頼んだぞ」

 ウィルはヴィンスと拳をぶつけ合うとすぐさま近くの軍用車両に乗り込んだ。ウィルが助手席に座ると同時にまた無線が入る。

”ウィルよりレイフ、あとどれくらいで合流できそうだ? 15分もあれば着くか?”

 エンジンをかけながら、ウィルが答えた。

「10分で行きますよ!」

”あまり飛ばすなよ、待ってる”

 レイフの言葉を聞くと、そのまま思い切りアクセルを踏んだ。チャーリーはみなウィルの運転に慣れている。

「ザカリー! 現在のアルファの様子、詳しくわかるか?」

「はい。アルファ1の方に敵が集中しているのがわかります。アルファ2は救護を行っているのか侵攻が見られません」

 ウィルの代わりにザカリーが端末を見ながら答える。1人救護中のチームに置いて、あとはレイフの補佐に回るのが適切だろう。

「わかった。アルファ2の近くに軍事車両はあるか?」

「あります」

「よし、ありがとう。クィンシーさん、アルファ2の援助に回ってくださいますか?」

「わかった」

「ザカリーとマイルズさんは俺と一緒にベックフォード隊長の補佐に回ります。ザカリー、救護道具をクィンシーさんへ」

「はい」

 運転をしながら後ろに呼びかける。ヴィンスにチャーリーを託されたからには自分が指揮を取らねばならない。ウィルの表情は張り詰めている。

「先にクィンシーさんを下ろします。クィンシーさんは救護が終わり次第連絡を下さい。その後の動きをお伝えします」

「ああ」

 車は徐々にレイフたちのいる現場の方へ近づく。手前の道を曲がるとアルファ2がいるのが見えた。

「クィンシーさん!」

 車を止めてクィンシーが降りた。その後ろに運転席から叫ぶ。

「絶対に無茶はしないで下さいね。何かあったらすぐに撤退を!」

「わかってるさ! ありがとな!」

 クィンシーはそういって背を向けて走って行ってしまった。ウィルはそれを見送ると再度思い切りアクセルを踏んだ。


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