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記憶と夢の珈琲店〈Cafe Luminous〉  作者: 寶井かもめ
第九話 「ビター・スウィート・カフェ ― オーロラ・ブレンド」
29/43

「ビター・スウィート・カフェ ― オーロラ・ブレンド」 ep.4-4


 ◇


 数日後。晴れた午後のこと。春樹は並んで歩く彼女に向かって、明るく声をかけた。


「ねえ、美味しいコーヒーのお店、見つけたんだ。行ってみない?」


 彼女は少し驚いたように立ち止まり、春樹の横顔を見つめる。


「えっ? コーヒーって、お豆屋さん?」


「違う違う、カフェだよ」


 春樹が苦笑しながら言い直すと、彼女は小首を傾げた。


「でも春樹くん、コーヒー苦手だったんじゃ……ごめんね、私、気づかなくって」


「ううん、もう大丈夫さ」


 春樹は、ふと空を見上げた。


 高く澄んだ空に、白い雲がぽっかりと浮かんでいる。肩を並べて歩く足取りは、どこか軽やかで、春風のように心地よかった。


 二人の会話は、やわらかな風に乗って、午後の街へと溶けていく。


 春樹は、彼女の手をやさしく引いた。


 胸にはほのかな希望を秘めて、あの小さな喫茶店へと駆け出していた。


 ふたりで、同じ味を分かち合うために。


 今度こそ、君の隣で、同じ温度のカップを――。



【本日の一杯】


◆オーロラ・ブレンド


産地:月影の谷――夜と朝が溶け合う高原の地で育つ、光を宿した実り


焙煎:蒼明の焰焙煎――淡い光でやさしく炙る、特別な浅煎り製法


香り:果実のようなやさしい甘酸っぱさと、白い花を思わせる清涼感


味わい:心にやさしい朝日が射すような味わい。苦味はほのかに、軽やかな酸味と柔らかな甘みが心に寄り添う


ひとこと:「“苦手”という記憶に、そっと新しい意味を灯してくれる一杯です。少し勇気を出して向き合えば、心もまた、やわらかく変わっていくのかもしれません」

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