第9話 激突
「うおおお」
戦いの火蓋はリューニーの風遠撃から始まった。
スパァン
シャラクの左腕が真っ二つに切断される。
「凄いな。こうも簡単に切られるとは」
シャラクは笑いながらそう言い、10秒も経たないうちに再生した。正攻法では埒が明かないのかもしれない。
「カンレ、リューニーに支援魔法を」
「はい!」
キュィィ
「支援魔法か?オーラでわかるぞ。姑息な戦い方をするもんだ」
「それでお前を倒せるんなら、戦い方なんざに俺はこだわらねぇ」
リューニーはそう言い放ち、何度も何度も斬撃を繰り返す。俺はその後ろから支援魔法を送ったり、隙を見て電撃の魔法をシャラクに喰らわせた。しかし。
「軽いな。ダメージになっていない」
その全てを軽く再生して見せるシャラク。その言葉通り、ダメージにすらなっていない様子だ。
支援魔法で火力の上がったリューニーの斬撃も、魔法を纏っていないものはダメージが入っていない。そうなれば。
「リューニー!魔法剣術を使いまくれ!」
「そんな事したら魔法エネルギーが尽きるぞ!」
「俺がいるだろ!尽きたら注ぎまくるだけだ!」
リューニーは渋々承知し、風遠撃と近円斬を何度もシャラクに喰らわせる。
「いいねぇ!ダメージが上がった。面白くなってきたじゃねぇかよ!」
シャラクは興奮しながら叫び、リューニーに左腕を振った。それと同時に衝撃波が起こり、リューニーは強く吹き飛ばされた。
「リューニー!」
「ここからが、本当の戦いだぁ!ハハハハハ!」
リューニーは再び近円斬を放ち、距離をとられれば風遠撃を放つ。しかし、効かない。いや、効いているが異次元の速度で再生され、ダメージを喰らわせられていない。
「うりゃああ!」
「その程度か?お前の剣術は!」
「くそ!舐めやがって!」
しかし、ダメージは変わらず入らない。
「もう飽きたな。単純な攻撃で、面白味がない。終わりにしよう」
なんだ?何が来る?
「晴天の輝き」
その途端、辺りは光に包まれ、超高温な熱線が襲った。
「大丈夫か!リューニー」
「ああ、大丈夫だ」
結界が間に合ったか。だが、カンレは喰らってしまった。
「カンレ!下がっておけ」
「すいません。トウヤさん」
「気にするな!自分のことを最優先にしろ」
カンレは高度ではないが一応治癒魔法を使える。時間をかければ動ける程度には回復できるはずだ。今考えるべきは…
「結界か!そんなに素早く張れるとは、お前相当な手慣れだろ?裏探偵」
今の魔法、恐らくは炎魔法の中の光線魔法。それも超高度な光線魔法だ。恐らくはあのレベルの魔法を複数所持している。次喰らえば恐らく結界は割られる。そうすればしばらく張ることができない。こうなったら…
「リューニー。荒技に耐えられるか?」
「ああ。こいつを殺すためなら俺は命を捧げる。俺はこいつを殺すためにお前について来たんだ」
「分かった。今から俺の電撃魔法をその剣にほぼ限界まで注ぎ込む。そしてお前にも支援魔法を限界まで注ぎ込む。耐えて、シャラクに致命傷を与えろ」
「耐えられなければどうなる?」
「四肢が弾け飛ぶ」
「そうか…。よし、やろう」
その言葉を聞き、俺は作戦を実行した。
「そう来るか!裏探偵!」
リューニーは常軌を逸した速度でシャラクへと近づき、近円斬で胸を深く斬りつけた。
「グハッ」
電撃魔法を纏った剣はシャラクに大ダメージを与えた。
「何だ?この威力は」
「電撃魔法だ」
「やってくれるなぁ裏探偵!お前の仕業か!」
リューニーは再び近付き、さらに一撃を入れようとする。
「そう簡単にやられるかよ!」
シャラクはその一撃を受け、首が落ちた。しかし。
「晴天の恵み」
その瞬間シャラクに光が降り注ぎ、首は再生し、胸の傷は一瞬で治癒された。
「は?何だ…今の」
リューニーは意味がわからず立ち尽くした。荒技をした影響で、動けない様子だった。しかし、シャラクも魔法エネルギーが不足し、消耗していた。
「ここでお前らを殺したかったが、どうやら至らないようだ」
「待て!シャラク!」
俺はシャラクと戦おうと体を動かそうとしたが、動けない。
「裏探偵。お前には拘束魔法をかけた。俺の残りの魔法エネルギーのほとんどを使ってな」
最高レベルに近い拘束魔法だ。時間制限をつける代わりに、より強く拘束の効果が付与されている。
「次は殺してやる。裏探偵。副団長」
そう吐き捨て、シャラクは消えていった。