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裏探偵トウヤ  作者: KS
正義の三人
7/16

第7話 準備

「ハァ、ハァ、これで最後か?」

「これが終わったら次は魔法の訓練だ」

「まだあるのかよ〜」

あの夜の後、俺たちは特訓をしていた。いや、させていた。


「リューニーさん、後何分ですか?」

「あと20分」

「そんなに!?」


リューニーには筋力トレーニングと魔法の訓練。カンレには魔法の持久力のトレーニングをさせている。二人とも、かなりの実力者だが、五大官と戦うのにはまだ足りない。そうやって散って行った戦士をおれは何人と見てきた。この二人にそうなってほしくはない。俺のエゴだ。


「よく頑張った、二人とも」

そう言いながらタオルを手渡した

「ありがとう」

リューニーは笑いながら言った。


ここのところリューニーは、少し笑う回数が増えた。それが強がりなのか、単純に俺といるのが慣れただけなのかはわからないが。


「そういえばトウヤって俺と会った時、なんで裏探偵と名乗ったんだ?」

「そうなんですか?」

「ああ」

言う必要はないと思っていたが、話してみるか。


「俺は昔、多分1000年以上前に人間からアンデットになったんだと思う。そこから自我のない状態が続き、今のような状態になったのは700年くらい前だったと思う。魔王に恨みを持ち、倒そうと誓った。そして、人間の世界に入り込み、魔王軍と敵対する日々を送った。仲間と共闘し始めたのは500年ほど前。その頃に、職がない状態で仲間を集めようとしても、相手にされなかった。だから俺は、探偵という職業に縋り付いた。だが、多すぎる依頼が来ても困るから、裏で起こっている問題だけを取り扱う裏探偵という名前で仕事を始めた。ただそれだけだ」

「700年も戦っているのか?」

「そういうことになるな」


考えてもみなかったが、もう700年か。700年も経ってできたことは侵攻を防ぐことだけ。根本の対処には何も至っていない。


「700年経っても俺には小さな事しかできなかったんだ」

「違う。あなたがいなければ失っていた命があった。魔王軍と戦うことに意味がある。その先の結果を求めるのは酷だと思う」

「カンレ…」


戦うことに意味がある、か。俺の700年は無駄にはなっていないということか。そう信じたいな……。


「暗い話になってしまったな。もう帰ろう」

「そうだな〜。今日はドリアにしようぜ!」

「作れるのか?」

「いや、カンレに任せるけど」

「ふっ。人任せだな」

「仲間だからな」

「……」


仲間とはどういう関係なのだろう。友達を超えた何かなのだろうか。俺に仲間と呼べる奴らはいたのだろうか…。


「カンレ〜材料ある?」

「ありそうですー」

あれから俺たちは家へ帰ってカンレのドリアを待っていた。そして数十分して…


「できたよー」

「「おおー!」」

俺たちは机に置かれたドリアを見て心を躍らせた。

「凄いなカンレ、こんな美味しそうなものを作れるなんて」

「カンレは料理上手いからなぁ」

なんでリューニーが誇らしげなんだよと突っ込みたくなったが堪えた。


「「「いただきまーす」」」


美味い。久しぶりにドリアを食べた気がするが今まで食べたドリアの中では一番美味い(記憶にあるのは2、3回だけだが)


「美味いなぁカンレ」

「ありがとうリューニー。いっぱい食べてね」

俺たちは20分ほどしてドリアをたいらげて、ゆっくりとしていた。


「いやー美味かったなー」

「食べ過ぎじゃないか?リューニー。明日も特訓するぞ」

「えーー、きついなぁ」

「時間がないんだよ。そもそもこんなにゆっくりしていていいのか」

「いいんじゃないですか」

そう言ったのは意外にもカンレだった。


「最後まで戦うのに不安を抱えていた私が言うのもなんですけど、戦いの前に焦りは禁物だと思うんです。いつも通りの日常を送り、精神を安定させる。それが必要だと思います」


精神の安定か。また面白いことを言う。そんなことを言ったやつは今まで見たこともない。だが。


「そうだな。焦りは成功を生まない。もう少しゆっくりと過ごしていいかもしれない」


それが正解かは分からない。でも、この二人の生活を見ると不思議とそうしたくなってくる。それが魅力的に感じてしまう日常を見てきた。


「そうだなトウヤ。もう少し、日常に浸っていいんだぞ」

ふっと気が緩み俺は気づかないうちに笑っていた。

「そうだな。日常を楽しもう」

月明かりがリビングを照らす良い夜だった。




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